2020年02月25日

思い出話 33

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
この歳になってしみじみ考えることがある。
私のあの時の恋愛感情は、いったい何だったんだろう?
年上の女性の掌で、右往左往していただけだろうという人もいようが、初心な高校生の私が、弄ばれたわけではなかったと信じている。
一方あの頃、年長のその人に夢中になっていたことで、「得」(というと不謹慎ながら)をしたことがある。それは岸高で、やけにもてるようになったことである。留年して全員が私より、年少となったこととも関係があったのかもしれないが、放課後帰ろうとすると、下級生の女子が教室に入って来て、化学やら数学やらを教えろとせがんだものである。ただ私は一向に、そういう下級生達に興味を持てなかったのは事実で、結果的には「得」をしたわけではないのである。
「年長の彼女に夢中で、周りの女の子たちに無関心だった、少なくとも無関心だと皆には思えたからだったんだろう。」
とは、後になっての自己分析である。
年が明けての朝の出会いは、三学期の始業式の日であった。例によって南海貝塚駅までの短い間ながら、
「今年は大学の入学試験やね。まさか東大ちゃうやろうね。」
と尋ねられ、
「地元の国立大学を受験するつもり。」
「合格するといいね。」
「箕面に親類、亡くなった母親の従姉の家があるので、受験の日には泊めて貰う予定なんやけど。試験は二日間やから、前の日から行って三泊するのかなぁ?」
「ふうんそうなん!通うんやったら途中まで一緒かなぁなんて考えてたのに。」
と話が進んだときは、少し気分が高揚し
「通えないこともないし、そんなら毎日通ってみようかな。」
といった考えが、頭をよぎった。
「となると、水鉄電車始発やなぁ。」
と思案していたら、
「私と一緒やったら、集中でけへんやろうから、やはり泊めてもらいなさい。」
の一言で、この件は沙汰止みとなった。
南海貝塚駅のホームを急いで歩きながら、その人は本当にさらりと
「入学試験の前に、もう一度デートしよう。」
といったので、私は驚いて彼女の顔をまじまじと見つめた。
「難波に出て来れる日を作ってよ!」
と言い残して、その人は急行に乗り込んだ。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月24日

思い出話 32

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
コーヒーとホットケーキが目の前に運ばれてきた。
ホットケーキには、フォークとナイフがついていたけれど、正直私はその時まで、フォークとナイフで食事をしたことがなかった。スプーンで食べるカレーライスが、私の経験したことのある唯一の洋食であった。私は正直にそのことをその人に告げると
「そんなことは気にしなくてもいいのよ。」
と言い、慣れた手つきで二枚のうち上にあるホットケーキにバターを塗り、はちみつをかけ、器用に八等分して見せた。そしてその皿を私に差し出し、
「二枚目は自分でやってみるのよ。」
と言って、私の前の皿と取り換えた。その人の言葉に勇気づけられというと大仰ながら、ともかくやってみると二枚目は思いのほかうまくいったので、一安堵であった。小一時間ほどその喫茶店にいたろうか、その人は
「私は午後から仕事に出るから、善一郎君は帰りなさい。」
と、ほとんど命令口調、有無を言わさぬ雰囲気があり、私達は地下鉄に乗った。そしてその人は本町で地下鉄を降り、私は難波、貝塚と乗り継いで自宅に帰った。
とまぁこれが私の初デート、失恋が約束済みの初デートながら、それでもその人への思いは断ち難いと信じていた。私は相変わらず、夜は自宅で独り寝で、その人の来訪を密かに期待していたけれど、再び現れることはなかった。ただ9月4日は、約束通り早い時刻の電車での「デート」があり、その後も月初めの出会いは年末になっても続いていた。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 01:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月23日

思い出話 31

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
「暑いなぁ思ったら、いつの間にか日陰じゃなくなってるのねぇ。座っていても暑いだけだから、デートらしく少し歩こうよ。」
とのその人の言葉で、私達は立ち上がった。
歩きながらその人は、話を続けた。
「私の結婚の話は、最初は黙っておこうかと考えてたの。でも黙って消えちゃぁ、こんなに思ってくれているのに善一郎君に悪いかなぁと考えたの。」
といわれて、もはや私には言うべき言葉がなかった。
私達は川べりまで歩いたり、図書館の日陰に行ったりしながら、その後の話題は私の家のことや私自身のことが多くなった。
「家のお手伝いもして、いつ勉強するの?」
の問いに、
「朝4時に起きて、2時間半が僕の時間です。中学生時代から続けてます。」
と答えたときには、えらく感心していた。その人は腕時計に目を落とし、
「どこかで簡単な昼ご馳走しようかな。ホットケーキでも良い?おいしい喫茶店知っているの。」
といって、私をビルの一階にある喫茶店へ連れて行った。
恥ずかし話ながら、喫茶店に入るのはそれで三度目で、一度目は先輩と岸高祭の衣装を仮に下寺町まで来たとき、二度目は岸高祭にやってきた堺の女子高生に誘われてといった具合、まぁ私は奥手だったということになる。実際、ホットケーキをご馳走するといわれてもイメージがわかず、本当のところはおどおどしていたのかも知れない。ただ好きな人と喫茶店に入ったというだけで、自分が随分成長したようで、少し誇らしかった。
「コーヒーとホットケーキ二つずつ。」
とその人は注文、私達は向かい合わせに座った。
「私達まるで姉と弟ね。誰も恋人どうしなんて考えないんじゃない。」
と、その人は屈託がなかった。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 00:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月22日

思い出話 30

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
九時台の急行はあまり混雑もなく、それでも私達は互いに黙りこくっていた。
急行が難波駅に着くと彼女は、
「ついてきなさい!」
とだけ私に告げて改札口に向かって歩いた。
改札口を出てすぐの売店の赤電話でどこかに電話をし、
「午前中だけつきあってあげるから・・・。」
と私に言って地下鉄の乗り場に進んだ。階段の下で彼女はもぎりのおばちゃんから切符を買い、一枚を私にくれた。
「中之島の公園に行くのよ。夕方ならデートしてるカップルが多いけど、この時間はねぇ。」
とつぶやき、
「でも善一郎君と初デートだ。」
と続けた。私達は地下鉄を淀屋橋駅で降り、中之島公園を目指した。
彼女が言っていたように、公園にはあまり人はいなかった。
下旬とはいえ8月の太陽は、まだまだ容赦なかった。
私達は木の陰になっているベンチに二人並んで座った。
「『お嫁に行かんといてや!』って善一郎君は言うけど、だからどうしたいん。17夜にも言ったけど、私をお嫁にしたいなんて考えてないよね。本当のこと言うとね、河崎先生が亡くなった頃から、私は君のことが気になってたの。河崎先生に可愛がってもらったからかな。それがあの日偶然会って、話したでしょ。善一郎君はすっかり大きくなってたし、私も自分の歳を忘れて君が好きになったのかな。君の私を見る目から、私を好いてくれていることは良くわかるは。でもそれって、高校生がボーイフレンドやガールフレンド欲しいっていう感じの気持ちじゃない。まさか私と結婚しようなんて思ってないよね。年齢差は良いの。でもねそれなら、善一郎君は大学に行けなくなるわよ。私には妹も弟もいるし、それにほかにも色々あって、善一郎君が大学を終わるまでなんて待てないわよ。だから、私のお嫁入りの日までは私は善一郎君の恋人・ガールフレンド、それではいけないの?」
と諭すように言ってから、
「ところで君は岸高では、ガールフレンドいないの?」
と尋ねて、私を覗き込んだ。
「高校のガールフレンドの話は、良いです。でも僕は、Mさんをどうしたいんかなぁ?好きなんは間違いないし、でも結婚なんて考えることはできないし。」
「あら、私の名前初めて読んでくれたわね。うれしいな。そうね高校生では、結婚なんて考えることできないのは当たりまえよ。だから私の友達、お盆の夜に連れて行った子達は、また駆け落ちしたらなんて、そそのかしてるけど・・・。でも大学に進学するんでしょ。私達の中学校では、私の同級生で東大に行ったB君以来の、秀才だって聞いているわよ。そうそう君は秀才じゃなかった、君は天才だったわね。」
「同級生で、大学行くのやめて働いてるのいます。せやから僕も働くから言うたら、結婚してくれるん?」
という私の問いかけには
「無理やと思うよ。本当に子供なんやねぇ、君は・・・。まぁ、あの子が言うみたいに駆け落ちしかないわね。」
と言ってから、自分の言葉を打ち消すように
「進学しなさい。博士になって鉄腕アトム作るって夢捨てたら、河崎先生が悲しむから。お嫁に行くまでは、ガールフレンドと考えて付き合ってよ。」
と、さらりといった。

lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 00:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月21日

思い出話 29

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
「お嫁に行かんといてや!」
と叫ぶ私に、私の答えることのできない質問を返して
「昼間にまた話しましょう。暗い時にする話違うから。9月4日の月曜日朝の電車でね!」
と言い残して、その人は帰って行った。
彼女の下駄の音はすぐに聞こえなくなって、私は横になった。ふと気が付くとコオロギの鳴き声が耳に入って、夜の遅い時刻には、季節はもう秋を迎える準備を始めているのだなぁと脈絡のないことを考えた。そして虫の鳴き声を聞きながら、この恋愛というよりも憧れに近い、現実の問題をどう決着させるのか考えあぐねていた。
「Y君は進学やめて働いてるけど、わいはそういうわけにはいかんなぁ。」
と思案を巡らせていたら、Y 君がやって来て
「そこでH君の姉ちゃんに会うたでぇ。なんか沈んではったけど、まさか喧嘩はせぇへんはなぁ?」
と、間の抜けた問いかけをした。
「見合いして、来年お嫁に行くんやて。」
と答えると、少し驚いた風ながら
「姉ちゃんいい歳やしな。善さんまた良い人見つからよ。」
と、ドライな慰め方をしてくれた。でも私は、とても9月4日までは待てないなぁと考えていた。
翌週はまだ夏休みで、私はその火曜日か水曜日に難波に行こうと考えた。
「その人の出勤は、確か九時ごろの電車ちゅうてたなぁ!」
と思い出し、私は早めに水間駅に行って難波までの切符を買っておいた。おばぁさんには
「今日は登校日やよって、昼過ぎに帰るから。」
と言い残しておいた。今ならさしずめストーカー行為と言われそうな、待ち伏せである。その人は予期していた時刻に現れ、私に気付いて少し怒ったような顔をしてにらんだ。そして水間電車に乗り込むと
「今日は登校日なん?」
と尋ねたけれど、私はあ!いまいに返事をしておいた。私達は並んで座ったけれど、その人はそれ以上は何も言わなかった。貝塚駅では例によってホームの中頃まで歩き、急行の来るのを待った。そして私は一緒に電車に乗り込み、車輛の中頃で並んで立った。
「なんでぇ?学校ちゃうの?」
というその人に、私は
「難波まで一緒に行くねん!明るいとき話しましょうっていうてたやん。」
といって切符をみせたら、あきれたような顔をして私をまじまじと見つめた。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月20日

10年前の今日

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
今日も小休止が続く。

「氷が融けると何になる?」
そんな話題を,朝日新聞天声人語氏が提供している。
答えは状況に依存するのは当然で,は科学的な問いかけの答,は抒情的な問いかけの答,そして意地悪なぞなぞなら,解答者の出さなかった答が,正解となる。天声人語氏の内容は些かまじめで,小学校の理科の試験で「春になる」と書いたら減点されたという話に類する古い答案が,北海道の読者から送られてきたというもの。ただし氷ではなく,雪が溶けたらという設問で,春になると答えて, 85点を頂いたという内容であったそうである。雪が解けたら何になる?にまつわる笑い話は,現実にも起こっているということらしい。
この天声人語氏を読んで20年以上昔の事を思い出した。ロケット誘雷実験にインドネシアに滞在したとき聞いた話である。あのプロジェクトを始めた当時は,日本企業の現地滞在の方々に本当にお世話になった。その中に最初家族全員で赴任されていて,滞在が2年を越したので先ずは家族だけ帰国させた方がいらっしゃった。
そのお子さんが帰国してからの社会のテストで
「環太平洋造山帯に位置する●◎は,火山,温泉,地震が多く・・」
●◎をインドネシアとしたら,不正解になったというのである。文脈を聞かなかったし確かなことは言えないけれど,出題者は我が国もしくは日本と答えさせたかったに違いなかろうが,インドネシア・ジャカルタに2年も滞在されたお子さんなら,当然のことながらインドネシアと答えるに違いない。ここ数年来インドネシアではかなり大きな地震が立て続けに起こっているので,今日ならすんなりとは罰点では無いかも知れない。
いずれにしても教育は難しいと,問題提起して稿を終えたい。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 10:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 時の話題

2020年02月19日

思い出話 28

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
歩き始めたその人の背中に向かって、
「お嫁に行ったらあかんでぇ!」
と声をかけたけれど、立ち止まる気配はなかった。だから次には
「お嫁に行かんといてや!」
と、少し大きな声で呼びかけたら、ようやく立ち止まって
「善一郎君が、お嫁に貰ってくれるまでに、どれくらいかかるの?」
と、振り返りもせずに答え、
「それとも、高校やめる。残り半年やよって高校は卒業するとしても、卒業したら進学やめてすぐに働くの?」
と続けた。

私の半世紀以上も昔の、私の初恋の話はまだまだ続く。
ただここで小休止して、70過ぎの爺の目線で考えてみる。
実はこの初恋の話、少しは私なりの脚色をしてある。ただ私を知っている者が読めば、アルファベットで表してある登場人物の、何人かが特定できる程度の脚色である。70歳を過ぎた爺が、何やら青臭い話を続けていて、気恥ずかしさもゼロではないが、何名かがすでに鬼籍に入っているし、めったなことでは迷惑をかけることもないだろう。そういう思いから古い日記を参考にしたり、記憶を呼び起こしたりして思い出話を綴っているのである。
それにしてもその人と私の「恋愛」、私には何としても不思議であった。私は、彼女が言ったように、はしかにかかったようなものだったのかもしれないが、少なくともその人は私に好意を示してくれていた。6歳も下の高校生に好意を持ったのは、いかにも不思議である。今風に言えば「フェロモン」のなせる業、古風な言い方をすれば、ひかれあう赤い糸があったのだろうか。ともかくその人と私は、臨時バスでの偶然の出会いがきっかけで、「恋仲」になってしまったのである。その人から見た私は「はしかに」かかったようなもの、じゃぁその人は大人の女性として高校生の私に好意を持ったのだろうか。遊び心、若い燕として接していたのでないことは、その後年を経て何度か会う機会もあったので、確信に近いものがある。このように考えると、他人を好きになるのは、人知を超えたエアポケットのようのものがあって、二人を引き付け合わすとしかおもえないのである。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 01:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月18日

思い出話 27

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
次の日、私とその人は水間観音の踊り場で会って輪の中に入り、日の代わるころまで踊っていた。もちろん踊りながら、あれこれ話した。彼女は私が考えていた以上に、母親や私のことを知っているようだったのは驚きだった。親友のY 君は気を聞かして、宵のうちからどこかに行ってしまっていた。
踊り手の数も、踊りの輪を見ている人の数も、まったく減る気配はなかったけれど、どちらからともなく帰ろうということになり、私達は下駄の音を響かせながら、自宅に向かった。私の家のまだ先にその人の家があり、別れ際に
「これから夜這いに来る?」
と誘うと、
「意気地なしのくせに・・・。でもお盆に帰ってらっしゃった河崎先生はもうあちらに行っただろうけど、挨拶だけはしときたいなぁ。」
と、私についてきた。
彼女は仏壇の前でしばらく手を合わせていて、
「それじゃぁ、これで帰るわ。」
と言ってから、
「そうそう、もう一つ言うことあるの・・・。私、一昨日お見合いしたの。来年五月結婚式。」
とさらっと言ってから、
「さぁ、天才どうする。大ピンチだよ。」
と他人事のように、そして私をけしかけるように尋ねて私を見た。あまりのことに、私はどう反応していいのか、何と言っていいのか分からず、それこそ茫然自失であった。それでも
「どうしてもお嫁に行かなあかんの?」
とだけ尋ね返し、彼女の目を見つめた。何秒か沈黙が続いたろうか、彼女は
「どうしても!」
とだけ答えて私に背を向けた。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月17日

思い出話 26

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
「困ったなぁって、何が困ったん?」
と私が尋ねると、
「鈍感ねぇ!」
と返ってきた。そして彼女は訥々と語りだした。
「私は半年ほど前に、ある男性と駆け落ちしたの。好きでも嫌いでもなかったけど、一緒に暮らしたいって迫られ、私も家を出たかったから。でも二三日して、お母さんという人がやってきたら、その男性さっさと帰っちゃったの。馬鹿みたいでしょ。それで私も帰ってきて、元のお勤め先に通いだした頃、バスで君に出会ったの。君は私の目をじっと見て話してくれたので、なんとなく惹かれたは。正直言うと、好きになったのかな?なぜ高校生の君なのか、理由は分からない。君が私を好いてくれているように、私も君が好きなの。といっても私は君より6歳も年上だし、人生経験も君より少しはあるから、善一郎君の気持ちはよく判るは。手に取るようにわかるわ。でもねぇ、現実に君は高校生。それに善一郎君は大学にも行きたいんでしょ。善一郎君が大学終わるの待つと、私30歳近くなるの。待つのはいいわよ。でもね、君は大学に行って、色々経験するだろうし、今の気持ちがどれくらい続くのかなぁ。今の君は、はしかにかっているようなものよ。はしかを治すために、私は夜這いに来たのよ。」
と言って、
「だから困っているの。」
と言ってから
「しばらく年上の恋人になってあげるわ。君は私の年下の恋人。明日は17夜10時に水間観音の踊り場で会うのよ。」
と言って、立ち上がった。私も一緒に立ち上がって彼女の手を握って、
「じゃぁ、明日夜。」
と告げたら、
「意気地なしねぇ!」
と言って、去って行った。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白

2020年02月16日

思い出話 25

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
私は、数人が話し合う小声で目が覚めた。
決断できずに座って考えているうちに、私は横になってしまったらしい。女性が四五人いるらしく、それでも彼女の声ははっきり認識できた。
「あんたどうしたいん?」
と誰かが尋ねた。別の一人が
「また駆け落ちしたら!」
と、物騒なことを言っている。
「何言うてん、相手は高校生やでぇ!出戻りのお姉さんでは世間は許さんやろ。」
という半ば冷やかしの言葉に
「本当は、高校卒業してるはずなんやけど、目の病気して一年遅れてるん。そいでも大学に行きたいみたいやしなぁ。本人は自分は天才や言うてるけどなぁ。」
と彼女が答え、どっと笑い声が聞こえた。その笑い声を待って私は
「誰かいるんかなぁ?」
と声を挙げたら、
「あら善一郎君起こしてしまった?悪かったねぇ。いつかいった葛城山に上った、同級生の女の子連れてきたん。君が寝てはったから、お話ししてたんよ。」
と返事が返ってきて、縁側の方に浴衣姿の女性が五人歩いてきた。
「この人があの子?すっかり大きうなったねぇ。」
と誰かが、声を上げた。
「目の病気で三か月寝ている間に、20センチ伸びたんです。」
と答えたら、
「そういう意味ちゃうけど、・・目の病気で三か月も寝ることあるの?」
と尋ねられ、
「網膜剥離ちゅう病気です。」
と答えた。
やがて話は母親のことに及び、
「河崎先生のお葬式には、みんなでやって来たのよ。みんなでワンワン泣いたの。」
の言葉が出て時には、一瞬シーンとなった。
「善一郎君は、それから一人なん?」
と誰かが尋ねると、別の誰かが
「私達みんな応援してるから。とくにこの子は、同じ町内やし善一郎君のファンやカラ、精いっぱい甘えなさい。」
とまぜっかえした。ふと気が付くと、まだ江州音頭が流れていて、
「今日は朝まで踊るんやろうねぇ。踊り場に行こか?」
と誰かが声を上げたが、私は
「もうこのまま寝ます。」
と言ったらそれを合図に、皆が帰って行った。そして私は、すぐに眠ってしまった。
どれくらい眠ったろうか、私は人の気配で目が覚めた。驚いたことに枕もとにはその人が座っていて
「あら、また起こしちゃった。夜這いに来ちゃった。」
と言ってからぺろりと舌を出し、
「困ったなぁ。」
とつぶやいた。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白