2020年02月18日

思い出話 27

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次の日、私とその人は水間観音の踊り場で会って輪の中に入り、日の代わるころまで踊っていた。もちろん踊りながら、あれこれ話した。彼女は私が考えていた以上に、母親や私のことを知っているようだったのは驚きだった。親友のY 君は気を聞かして、宵のうちからどこかに行ってしまっていた。
踊り手の数も、踊りの輪を見ている人の数も、まったく減る気配はなかったけれど、どちらからともなく帰ろうということになり、私達は下駄の音を響かせながら、自宅に向かった。私の家のまだ先にその人の家があり、別れ際に
「これから夜這いに来る?」
と誘うと、
「意気地なしのくせに・・・。でもお盆に帰ってらっしゃった河崎先生はもうあちらに行っただろうけど、挨拶だけはしときたいなぁ。」
と、私についてきた。
彼女は仏壇の前でしばらく手を合わせていて、
「それじゃぁ、これで帰るわ。」
と言ってから、
「そうそう、もう一つ言うことあるの・・・。私、一昨日お見合いしたの。来年五月結婚式。」
とさらっと言ってから、
「さぁ、天才どうする。大ピンチだよ。」
と他人事のように、そして私をけしかけるように尋ねて私を見た。あまりのことに、私はどう反応していいのか、何と言っていいのか分からず、それこそ茫然自失であった。それでも
「どうしてもお嫁に行かなあかんの?」
とだけ尋ね返し、彼女の目を見つめた。何秒か沈黙が続いたろうか、彼女は
「どうしても!」
とだけ答えて私に背を向けた。
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posted by zen at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白