2020年02月22日

思い出話 30

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
九時台の急行はあまり混雑もなく、それでも私達は互いに黙りこくっていた。
急行が難波駅に着くと彼女は、
「ついてきなさい!」
とだけ私に告げて改札口に向かって歩いた。
改札口を出てすぐの売店の赤電話でどこかに電話をし、
「午前中だけつきあってあげるから・・・。」
と私に言って地下鉄の乗り場に進んだ。階段の下で彼女はもぎりのおばちゃんから切符を買い、一枚を私にくれた。
「中之島の公園に行くのよ。夕方ならデートしてるカップルが多いけど、この時間はねぇ。」
とつぶやき、
「でも善一郎君と初デートだ。」
と続けた。私達は地下鉄を淀屋橋駅で降り、中之島公園を目指した。
彼女が言っていたように、公園にはあまり人はいなかった。
下旬とはいえ8月の太陽は、まだまだ容赦なかった。
私達は木の陰になっているベンチに二人並んで座った。
「『お嫁に行かんといてや!』って善一郎君は言うけど、だからどうしたいん。17夜にも言ったけど、私をお嫁にしたいなんて考えてないよね。本当のこと言うとね、河崎先生が亡くなった頃から、私は君のことが気になってたの。河崎先生に可愛がってもらったからかな。それがあの日偶然会って、話したでしょ。善一郎君はすっかり大きくなってたし、私も自分の歳を忘れて君が好きになったのかな。君の私を見る目から、私を好いてくれていることは良くわかるは。でもそれって、高校生がボーイフレンドやガールフレンド欲しいっていう感じの気持ちじゃない。まさか私と結婚しようなんて思ってないよね。年齢差は良いの。でもねそれなら、善一郎君は大学に行けなくなるわよ。私には妹も弟もいるし、それにほかにも色々あって、善一郎君が大学を終わるまでなんて待てないわよ。だから、私のお嫁入りの日までは私は善一郎君の恋人・ガールフレンド、それではいけないの?」
と諭すように言ってから、
「ところで君は岸高では、ガールフレンドいないの?」
と尋ねて、私を覗き込んだ。
「高校のガールフレンドの話は、良いです。でも僕は、Mさんをどうしたいんかなぁ?好きなんは間違いないし、でも結婚なんて考えることはできないし。」
「あら、私の名前初めて読んでくれたわね。うれしいな。そうね高校生では、結婚なんて考えることできないのは当たりまえよ。だから私の友達、お盆の夜に連れて行った子達は、また駆け落ちしたらなんて、そそのかしてるけど・・・。でも大学に進学するんでしょ。私達の中学校では、私の同級生で東大に行ったB君以来の、秀才だって聞いているわよ。そうそう君は秀才じゃなかった、君は天才だったわね。」
「同級生で、大学行くのやめて働いてるのいます。せやから僕も働くから言うたら、結婚してくれるん?」
という私の問いかけには
「無理やと思うよ。本当に子供なんやねぇ、君は・・・。まぁ、あの子が言うみたいに駆け落ちしかないわね。」
と言ってから、自分の言葉を打ち消すように
「進学しなさい。博士になって鉄腕アトム作るって夢捨てたら、河崎先生が悲しむから。お嫁に行くまでは、ガールフレンドと考えて付き合ってよ。」
と、さらりといった。

lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 00:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白