2020年02月24日

思い出話 32

⇒⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!
コーヒーとホットケーキが目の前に運ばれてきた。
ホットケーキには、フォークとナイフがついていたけれど、正直私はその時まで、フォークとナイフで食事をしたことがなかった。スプーンで食べるカレーライスが、私の経験したことのある唯一の洋食であった。私は正直にそのことをその人に告げると
「そんなことは気にしなくてもいいのよ。」
と言い、慣れた手つきで二枚のうち上にあるホットケーキにバターを塗り、はちみつをかけ、器用に八等分して見せた。そしてその皿を私に差し出し、
「二枚目は自分でやってみるのよ。」
と言って、私の前の皿と取り換えた。その人の言葉に勇気づけられというと大仰ながら、ともかくやってみると二枚目は思いのほかうまくいったので、一安堵であった。小一時間ほどその喫茶店にいたろうか、その人は
「私は午後から仕事に出るから、善一郎君は帰りなさい。」
と、ほとんど命令口調、有無を言わさぬ雰囲気があり、私達は地下鉄に乗った。そしてその人は本町で地下鉄を降り、私は難波、貝塚と乗り継いで自宅に帰った。
とまぁこれが私の初デート、失恋が約束済みの初デートながら、それでもその人への思いは断ち難いと信じていた。私は相変わらず、夜は自宅で独り寝で、その人の来訪を密かに期待していたけれど、再び現れることはなかった。ただ9月4日は、約束通り早い時刻の電車での「デート」があり、その後も月初めの出会いは年末になっても続いていた。
lanking.gif
クリックして投票を!


posted by zen at 01:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白