2020年06月17日

思い出話 81

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それでも私は次の朝、いつも通りに研究室に出かけた。
午前8時過ぎの研究室には、いつものようにまだ誰も来ていなかった。
通信方式の教科書を開けてはみたが、まったく手には付かなかった。あれこれ考えてもどうしてよいのかの結論は浮かばず、9時過ぎになったので思い切って電話をかけてみた。あの当時は携帯電話の無い時代で、研究室に黒電話があり、大阪市内の06地域には、自由にかけてよい不文律があったのである。
三度か四度呼び出し音があり
「はい、MKです。」
という懐かしい声が」耳に飛び込んできた。おおよそ四年半ぶりに聞く声だったが、歳月の経たことを感じさせない響きがあった。一瞬返事に詰まっていたら、
「もしもし、こちらはMKですが、どちら様ですか!」
と、ややきつい口調に代わった。
私は覚悟を決めて
「ご無沙汰してます。河崎の善一郎です。」
と返したら、
「あら、手紙届いたのね。それにしても懐かしいわねぇ。あれから元気だった?」
と、屈託のない応答である。
「今いいんですか?ご主人はいらっしゃらない?」
という私に、
「人妻に電話をかけてくるんだから、善一郎君も随分成長したのねぇ。」
と言ってから、
「もう出かけてるから・・。子供は幼稚園だし、私独りだから。それにしてもお互いにえらく近くに住んでいたのぇね。」
という。そして
「手紙にも書いたけど、お盆明けの8月20日の日曜日に北海道に引っ越すの。」
と続けてから、
「しばらく会う機会もないだろうから引っ越し前に、一度会っておきたいと思って、手紙書いたの・・。」
と、私を驚かせた。
そして返事に困って黙っている私に
「昼間に堂々と会うんだから、人の目なんか気にしなくてもいいのよ。」
とえらく強気な態度である。さらには
「17日か18日の午前中、北千里の時計台で会おうよ」
と、一人で話を進めだした。
結局私達は、17日の午前10時の再開を約束して、私は受話器を置いた。

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posted by zen at 15:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白