「仰げば尊し」歌わせて下さい。
半世紀以上も昔のことである。
岸和田高校の卒業式、その予行演習の際、私が手を挙げていきなり主張したことばである。
岸和田高校は、その校風はある意味若干左翼かかっていたのかもしれない。伝統的に、卒業式では仰げば尊しを歌わないことになっていたようだ。ただ同級生、とりわけ女子生徒の多くは、卒業式では定番のこの歌を歌いたものだと話しているのを私は知っていた。ただだからと言って、生徒の誰もそのことを主張するわけではなく、予行演習は淡々と過ぎて行った。
若者の特権は、年長者の有り方に異を唱えるところにあるのかもしれない。私自身そこまで深く考えたわけではないが、不意にその主張をしてみたくなり、手を挙げて主張したのであった。そして私の発言に同級生達の多数は、拍手で応え、その年つまり私達の卒業式には、仰げば尊しを歌うことになったのである。今考えても、若気の至りだったなんぞと、月並みな自己批判なんぞしたくはない。私の若き日の武勇伝であることは、間違いのないところである。

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