この列の中程に座っている、そうその女性。まず氏名と所属学科をおっしゃってください。
大阪大学工学部電気系四学科に対しての導入教育の講義で、学生への質問を出すために、偶然指名した女学生へのことばである。何せ電気系四学科まとめての講義だから、出席者数は160名という大教室での講義、学生諸君の集中力を切らさないための工夫が必要で、私なりに知恵を絞ったのが、聴講している学生諸君との問答である。さらに当時かなり一般的になっていた電子メールでの学生諸君とのやり取りも加えて、結構評判が良かったと自負している。
さて女子学生とのやり取りである。
私の問いかけに、ともかく立ち上がったけれど何やらもじもじして、答えに窮している風。一方その生徒の回りの学生達が笑いだし、その笑いが教室中に万延してしまった。
「なんや君他学科の学生さんなん。受けるのは自由やけど、単位は貰おもえへんと思うよ!」
と私。するとその女子学生
「他学科と違って、立命館大学、他大学なんです。友達が『面白い講義があるから、受けに行こう。』と誘うのでやってきました。」
と述懐。教室中が大爆笑となった。止むを得ず私は
「この講義は電気系の教官の持ち回りで、私の担当はあと一回。だからあなたはもう一回受講しに来るよう。学生諸君に課している電子メールでのレポートも提出するように。」
という具合に収めた。
ちなみにその女子生徒とのやり取りは、彼女の就職が決まるまでおおよそ三年間続いた。記憶に間違いが無ければ、大阪にある一流ホテルに就職が決まったと、報告を受けた筈である。

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