S女史は30代前半の技術屋、大学を卒業して直ぐに、マレーシアにあるアメリカ系の半導体メーカーに勤めていたと聞かされた。その後、大学で同級生だったというL女史にヘッドハンティングされて、私の居るシンガポールの現地法人に移って来たということであった。昔風にいうならL女子は強電系の技術者、Sさんは弱電系の技術者であった。それにもう一人YさんというIT 含め電気一般に長けた男性社員が居たが、Sさんだけは
「将来は、研究者になりたい!」
という意思を持っている風で、自身の職務(マイクロコンピュータ制御のアレスター設計)の暇な時を割いて、LFの雷位置標定装置のセンサー部{受信系}の製作に関わった。受信系は簡単なだけに一か月もしないうちに完成、オシロスコープを記録計替わりにつないでみたら、面白いようにトリガーできて、雷放電に伴う電界変化波形が記録できた。
それならということで、社長に
「受信系が出来そうだから、取り敢えず記録計を一台買いたい。」
とお願いしたら、
「河崎の必要費用は、Eさんの決済になっているから彼に言ってくれ。」
との返事で、
「あんさん社長やろう。それくらい二つ返事で許可してくれよ!」
と言いたいというのが本音であった。それで隣の席のEさんに
「S女史に受信機をお教えして、LFシステムできそうですよ。試しに一機完成させたいので、AD変換器買ってください。これがその仕様書兼カタログです。」
とお願いしたら、
「二三日内に現地法人社長とも話して、返事します。」
との要領を得ない返事であった。

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