VHF装置2台分はもはや発注済みで、納期は近い。
占めて二千万円、納品されれば製造業者に払わねばならない。
「今更、あの話は流れたなんて、そんな阿呆な!」
と言いたいところだが、如何に楽天家の私でも冗談を言ってる余裕は消し飛んだ。
まずは、前社長の後を取り仕切っている,新社長のところに駆けつけた。
「マレーシアのプロジェクト、受注されなかったそうですね?」
「原油価格の下落で、あのプロジェクトはなくなったからねぇ。」
「何故それを言ってくれなかったんですか?」
「あれ誰も言ってなかった。担当者だった若い社員には聞いてないの?」
「私VHF装置二台分用意しているんですけど。」
「わが社は未だ発注していなかったよねぇ!?」
「あの若い担当者、毎月初めには『11月1日運転開始をして欲しい!』と言ってましたし、納期は受注後三か月はかかりますから、前倒しで作り始めたんです。」
「それは、河崎さんあなたの責任でしょう。そうそうあの担当者近日中に退社するよ。」
といった具合で、取り付く島もない。夢の実現が遠のくどころか、逆に抱えなくてもいい負債を抱えることになってしまったのである。
なお原油価格の下落でなくなったプロジェクトと聞かされていたけれど、プロジェクトそのものがなくなったのではなく、会社が受注できなかったというのが本当の所であったとは、後日知るところとなった。

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