2022年09月30日

東南アジアに雷観測装置を 3

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「こんなに簡単に、将来を決めてええんやろか?」
と、自分自身で訝しく思えたほどであったが、ともかく走り出した。そしてその晩は久しぶりに友人のY君とも会い、ご無沙汰を詫び旧交を温め、翌朝大阪に戻った。それから三月の末日の定年退職までは、あわただしく過ぎたのであった。余談ながら、親友のY君とはこの日以降10年以上も会う機会がなく、今日に至っている。
再就職の先が決まっているとはいえ、退職の日の空虚感は、どう表現してよいかわからなかったというのが、正直なところであった。属していた研究室には、准教授のU君が在職していたとはいえ、意図的に顔を出さないよう、訪ねていかないよう心掛けた。とはいえ大会社の事業部長の命を受けた実務担当者が、月に一二度打ち合わせに来阪されるので、その際は工学研究科長室を利用させてもらった。
「いつから赴任?」
という、一番肝心な議論は
「今しばらく待ってほしい!」
と、二,三か月先延ばしとなり、それでも六月の声を聴くころには、
「九月から赴任してください。」
と指示が出た。さらに実務担当の部長さんから
「雷観測装置を販売する会社を立ち上げましょう。本社も億単位の出資ができますので。」
と夢のような話まで出てきて、シンガポール行きの夢が膨らむばかりであった。私がシンガポール行きを決意したのは、研究室で若者達と作り上げたVHF干渉計と、若者達だけで作り上げたLF帯の観測装置を、東南アジア一帯に敷設、稼働したいというところにあったからである。
私はこれらを
「Ultimate Lightning channel imager!」
と呼んだのだが、仲のいい筈のHughさんはこの命名にえらく不機嫌で退官記念祝賀会に参加してくれた折
「Sophisticated かもしれないがUltimateではない!」
と、コメントを忘れなかった。
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2022年09月29日

東南アジアに雷観測装置を 2

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うなぎ屋に行ったのは、総勢五、六名だったろうか。
食事もあらかた終わった頃、事業部長はいきなりこう切り出した。
「先生は来年春定年ですよね?四月以降はどうされるのですか?」
私は正直に

「放送大学で非常勤講師をしたり、二三の私立大学には、声をかけて貰っていますが、いずれも俗にいう日雇いで、定職になるとすれば、9月まで滞在したエジプトの科学技術大学くらいでしょうか?これも確定はしていませんが・・・。」
と応えたら、
「それなら弊社に来られて、雷関係の事業のお手伝い願えませんか?フルタイムでお願いしたいんです。」
とえらくストレートな答えが返って来た。
「フルタイムとのことでやったら、私がいま今声をかけている二三の大学にも断りを入れなあかんし。お誘いは真剣なんでしょうね?」
の問いかけには、もちろんの強い返事であった。そして
「先生の研究室から、博士課程の学生の、Tさんでしたっけ、も来ていただきますし、二人でこのアンドリューさんの会社を手伝って欲しいんです。」
と続けられた。
私にしてみれば予期していなかった申し出で、ちょっとは考えたものの、走ってから考えるタイプの性格だけに
「それなら、シンガポールで働くというのは可能かなぁ。あこやったら雷も多いしねぇ。」
と返したら、二つ返事で了解と仰しゃり、私は
「それなら本当に、全て断って来年度からは御社でお世話になる準備をさせてもらいます。」
と念を押した。
「フルタイムちゅうんやったら、お給料はいくらもらえんやろう?」
の私の問いには、
「アンドリューさんと話しておきますから、ともかくシンガポールに赴任ということで、今日のところは・・。」
と、話を打ち切られた。
それにしても、かくも簡単に定年後の就職が決まるとはと驚きの、上京であったのである。
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2022年09月28日

東南アジアに雷観測装置を

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シンガポールに戻っている。
昨日午前には、JICA, UTeM そしてUNITENによる合意文書の調印が行われたので、SATREPSのこのプロジェクトは、もう後戻りすることはないだろう。
これまでにも何回か書いているように、弟子の恩で、東南アジアに阪大のグループが開発してきた、VHF Lightning Channel ImagerやLF Lightning Channel Imagerを敷設、稼働するという長年の夢が、一歩近づいたことは紛れもない事実であろう。いやはや嬉しい限りである。私が大阪大学を定年退職して、このシンガポールに来たのが2013年の9月だから、坪井栄さんの「二十四の瞳」の掻き出しを真似るなら、
「十年を一昔というなら、この話はまさにその一昔前にさかのぼる。」
ということにでもなろうか。
まさにその一昔前、2012年の秋の事である。
日本有数の重電機器メーカーの事業部長から
「国際会議で河崎先生に出会ったという、シンガポールの雷害対策関連の会社社長が来日しており、先生に会いたいというので、池袋の事務所に来ていただけませんか?」
と連絡があった。定年退職を半年後に控え、エジプトの二年間の滞在から帰国した直後でもあり、私なりには多忙だったけれど、
「まぁ、請われるなら出かけて行こう!」
と、急ぎ上京する旨の返事をした。
大阪大学の吹田キャンパスは伊丹空港まで車で20分足らず、私は午後二時の便で東に向かた。池袋の事務所に着いた頃は、もはや黄昏時だったろうか。
そして事務所に到着した直後
「シンガポールのお客様が、鰻を食べたいというので、夕食は鰻にしましょう!」
と、池袋界隈のうなぎ屋に出向くことになった。
そしてウナギを食べながら、私の進路が大きく舵を切って代わることに事になるのであった。
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2022年09月27日

クアラルンプール 2

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9月18日からのあしかけ十日間にわたるマレーシア出張も、いよいよ今日で終わる。日本からやって来て同行のM 君、Kさん他4名は深夜便で成田に向かい、天邪鬼爺の私は少し早い便でシンガポールに向かう。今回の調査、日本からの調査団は、押しなべて満足気な雰囲気で、このプロジェクトの現時点での先行きに肯定的なんだろう。
まぁ良かったと一安堵しておこう。
ちなみにこの更新は日が代わった直後故、ある意味安心のできない部分もあるが、土壇場になっての先方のちゃぶ台返しのない限り、午前中には調印の儀式も終わるのだろう。UNITENの代表のAzuanさんからは、
「明日の再開を楽しみにしている。」
とWhatsAppでメッセージが来ていた。
そして午後にはUNITENからクアラルンプールに戻り、JICA事務所への報告に加え、在マレーシアの日本大使館への表敬訪問の後空港に向かう予定と聞いている。クアラルンプールと空港は、大凡一時間程度のドライブだから、余裕で間に合うのだろうなぁ。

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2022年09月26日

クアラルンプール 1

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クアラルンプールに戻っている。
それにしても、昨日のマラッカのホテルのチェックアウトは恐れ入った。
滞在していたホテル、40階建てで私達は15階。12時のチェックアウトにと部屋を出たのが11時30分に少し前。エレベーターホールでは、T女史がいらっしゃって
「もう十分近く待っているんですが、降りていけないんです。」
と仰る。聞けば降りてくるエレベータは、上の階からの乗客でほぼ満員なのだという。エレベーターホールには、マレーシア人の四人家族もいて、彼らの方が先に待っていたのだという。このホテルのチェックアウトが12時となっており、泊り客が集中するからなんだろう。そう分かってはいても、エレベーターの動き方もう少し配慮があってもいいのにと、恨めしい。余談ながらエレベーターは、「房客電梯」とあらわすらしい。
余談はさておき、T女史曰く
「時間に間に合うには一度上行きに乗って、そのまま最上階から降りてくるしか方法がありませんねぇ。」
ルール違反ながら、背に腹は代えられぬと、上の階に行くエレベータを止めて、最上階から降りることにした。とりあえず最年長の私が、上に向かうエレベータを止め乗り込んだ。ところががこれが各駅停車に近い。それでも最上階では、一緒に上ったもう一方も同じ戦略で、下の階に向かった。ところがこれまた各駅停車、上りと違うところは、止まるたびに新たな客が乗り込んでくる。それでも三、四階も下がればそのエレベータが満杯となったて、やはり各駅停車が続き、止まるたびに
「Sorry, No space any more!」
繰り返しつつ、一階に着いたときにはほぼ12時となっていた。
話は変わるが、ついてみれば一緒に待っていた仲間がもはや到着しており、次に来たのでやはり上に向かって最上階から降りるという戦略という。ここで思い出したのが、寺田虎彦の
「市電が遅れているときには、最初に来たのではなく、その次か、さらにその次に乗るのが早く着く。」
という待ち行列理論で、その通りの結果となっていた。
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2022年09月25日

マラッカ 5

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マラッカも、今回の出張では最終日を迎えている。
正午には滞在中のホテルShoreをチェックアウトして、クアラルンプールに移動する。
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滞在したほてるShore
それにしても、母国語ではない英語での会議、意思の疎通の難しさを感じる。マレーシアの参加者も英語は堪能だし、もちろん日本側の出席者もそれなりの会話力である。ただ悲しいかなお互いの語彙力、会話力の積集合は必ずしも豊かではない。言い換えれば、和集合としては十分広いのだが・・・。こういった会合では、和集合の広さは問題ではなく、積集合の豊かさが一番要求されていると、この爺は信じて疑わない。だから自戒も含めて、ある種の苛立ちを禁じ得ないというのが本音であろう。
さて昨日、忙中閑ありとマラッカの旧市街を散策。
散策は世界文化遺産に登録されている、旧市街である。ウイキペディアによれば、もともとマレー人の王国があったらしいのだが、1511年ポルトガルの植民地となったという。その際の古い教会の門が当時のものという。
220924 Melaka1511.jpg
これが世界文化遺産に登録されている1511年当時の教会の門
その後オランダが統治し、さらには英国が統治し、第二次大戦を経てその後マレー連邦として独立、今日に至っている。
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とはいえ英国は、貿易港をシンガポールに移したとかで、その後は貿易拠点としては寂れてしまったらしい。そしてシンガポールはマレー連邦を離れ独立国となっているのである。

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2022年09月24日

マラッカ 4

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昨日の事。
あまり詳細なことは書けないけれど、朝一番の会議にマレーシアの二つの大学から弁護士か司法書士かが来て、合意文書の詳細を法律上の観点から議論。ただ最後の最後になってのちゃぶ台返しとまでは行かなかったけれど、知財権に関してかなり執拗に注文を付けてきた。大いに驚いたのは、ほぼ定型の文書を、自分達の提案の形で整えて欲しい旨の事を言い出した点で
「この方、このプロジェクトがODAの一環である事を理解されているのか?」
と、訝しく思った。まぁそれでも適当にガス抜きができたのか、最後は一応納得され、来週の調印式には、無事代表者が調印の運びとなりそうな具合である。とりあえずはめでたしといったところであろう。
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救命具をつけてボートで
そして午後、VHF波帯の広帯域干渉計の一機を設置する予定のPulau Besarを訪ねた。マラッカ海峡に浮かぶ島で、モーターボートで10分足らず。マラッカ州政府が、リゾート地にして観光客を呼び込もうとし始めた途端の、新型コロナ禍。島内にあるホテルも実質開店休業らしい。
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島内を歩く
さすがにマラッカ海峡は波もなく穏やかで、観測機を設置しる一つとしては、最適に近いというのが私の直観で、何やらハイになっている。
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この建屋の屋根に設置するらしい
そして今日土曜日は、休養日となっている。

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2022年09月23日

マラッカ 3

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マラッカ滞在も5日目を迎えている。
月並みな様ながら、「月日の経つのは早い。」
さて昨日、終日UTeMで会議。
SATREPSプロジェクトの実施手順に始まり、UTeM、UNITEM及び近大との合意文書の文言修正に至るまで、長丁場であった。昼ご飯は地元のレストランからのケイタリングで、時間の節約まで図る始末。夕方ふと見たら、JICAのT女史や、コンサルタントのK氏の二人は、疲労かなりありの顔つきで、思わず気の毒にと考えてしまった。
とはいえこの爺も、手分けの一環でDisaster Management (防災局とでもいうのかな)office との遠隔会議を任され、聞き取り調査をコンサルタントのS女史と担当した。即ち、プロジェクトの概要を説明し、プロジェクトの中頃から、観測データも出始めるので、是非ともユーザーになって頂きたいとお願い。防災局のお二人は、
「気象局からの情報では、洪水の発生情報を出しているが、避難する時間が無い。」
とこぼされ、この爺からは
「防災局のデーターに、このプロジェクトの成果である観測データを統合して、より精度の高い情報をより早く出せるようにすることが、このプロジェクトの目的の一つ。」
と答え、最後に
「可能なら11月に一度訪問し、対面で話したい。」
とお願いすれば、大いに歓迎との反応であった。
とまぁ、この爺も少しお役に立つことができた次第であった。
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2022年09月22日

マラッカ 2

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マラッカでは、Shoreというリゾートホテルに滞在している。
この時期多分オフシーズンなんだろう、ちょっと見た感じでは泊り客は少なさそう。それにこのホテルは、ホテル業務とマンション機能の両方を備えているらしい。ついでにいうと、隣がスイスホテルで、例えば朝食など、スイスホテルのレストなんで頂くことになっている、コロナ以降客総数の少なくなった状況では、経営側からいうと理想に近いのだろう。ちなみに
「晩御飯をスイスホテルのレストランで取っていいのか?」
の問いには、
「営業は朝だけ!」
ということだから、なるほどと納得させられた次第である。それに書き忘れているのは、スイスホテルとこのShoreはツインタワーになっていて、3階からなら建屋の外に出なくとも移動できる点である。
それにもう一つ、昨夕帰室して驚いたのは、ベッドが全く朝出たままで、清掃された風が無い。家族連れの長期滞在を目論でいるからだろう、出かけにベッドメイクをとフロントに告げないと、そういったサービスをしないのが建前らしいのである。
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2022年09月21日

マラッカ

昨日からマラッカに来ている。
今朝は寝坊したので、更新は後程。
マッラカの外れにある、UTeMと呼ばれる工科系の大学で打ち合わせ。
ともかく、毎日が緊張の連続といったところだが。
元気にだけはしている。

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何度か書いたように、マラッカにいる。
そして本日は、マラッカ工科大学(UTeM)を訪ね、終日プロジェクトに関しての議論。
会議は当然英語ながら、私の母国語で無いだけに大いに疲れる。このあたりが我々日の欠点ということになろうか。
それでもというか、それなりにというか、意思の疎通は大丈夫な風で、チームリーダーのM君の説明にも、あれこれ質問が出る。質問の出ている限り、M君の説明がマレーシア側に十分通じているということになるから、めでたしめでたしに違いない。
一方こういった議論が回りくどいきらいもあって、若干いらいらとする点もある。とはいえ回りくどいのは、アジア人の属性に近いから仕方が無かろうと思い、ここでは短気な私自身を抑えている。
UTeMでの議論は、一応及第点ということにしておこう。
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