大晦日
雷放電の観測と言えば、もう一つ忘れてならないのは宇宙からの観測。宇宙といても地上400q程度で、宇宙ステーションの高度と同程度であるが。そんな宇宙からの観測に関わるようになったのは、1996年大阪で開催して国際大気電気学会(ICAE)の場で、アラバマのHughさんから
「来年末にTRMM(熱帯降雨観測衛星)という人工衛星を上げる。主たる目的は赤道帯の降水を衛星搭載のレーダーで観測するのだが、我々大気電気コミュニティーのLIS(Lightning Imaging Sensor)も搭載される。TRMM衛星は日米の共同、NASAとNASDA(今日のJAXA)の共同なんだから、河崎は日本側のLIS担当として協力しないか?」
と誘われた。
私は早速NASDAに交渉したが、新参者にはハードルが高く、なかなか参加できそうな雰囲気ではなかった。例えばNASDAの担当者からは、
「気象学コミュニティの賛同がないと、我々としては認める権利がないから。」
とのつれない返事であった。
雷放電は気象の一要素ながら(少なくとも私はそう理解していたけれど)、気象学コミュニティでは、研究対象としては重要視していなかったのかも知れない。ただ私は1990年代の初め頃から気象学会で発表したり、IAMAS(International Association of Meteorology and Atmospheric Sciences)に参加したりしており、どれかの会議で親しくして頂いた東京大学気候システム研究センターの新田勍教授(故人)を存じ上げていた。それで駒場の研究室に押しかけて直訴申し上げたら
「工学部の方がねぇ!わかりましたNASDAのTRMM担当者に声をかけておきましょう!」
と、えらくウエルカムであった。そして次のTRMMの国内の準備会議には参加するようにと、NASDAから連絡を頂いた。早い話押しかけながら、TRMM/LISの日本側PIとして関わるようになったのである。
なおTRMMは種子島から1987年11月28日に打ち上げられ、その十日ほど後の12月8日に新田教授は不帰の客となられ、TRMMに参加させて頂いたのに成果をお見せすることが出来なかったのは、四半世紀を経た今日でも、口惜しい思いである。
(この稿続く)

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