とまぁ、ここまでは概論と夢の話しですが、申請にあたっての現実的な話題を次に提供します。ただその前に、なぜシンガポールの研究者が共同研究の候補者にならないかと言いますと、シンガポールの電力供給はほぼ完全に地下ケーブルですので、大気電気学の権威者はいません。NUSでやっているのは高電圧工学ですが中心ですから、近隣のインドネシアやマレーシアに的を絞った次第です。
インドネシア及びマレーシアは、世界三大雷活動地域(三つの煙突)の一つに属し、一年当たりの雷雨日数はおおよそ200日弱です。ただ雷雨日数と一括りにして扱う事が多いですが、熱帯地域のモンスーンに伴う雷活動と、モンスーンとモンスーンの間の雷活動があるうえ、前者には北半球の夏季にあたるモンスーンと冬季にあたるモンスーンがあって、雷性状が果たして同じなのかどうかは明らかにされていません。さらにこの地域は気象学の分野では海洋性大陸(Maritime continent)に分類されており、大陸型の雷放電活動(あるいは積乱雲の成り立ち)との類似点及び相違点はCAPE(Convective Available Potential Energy)の観点からも観測を通して理解する必要があります。かかる意味でレーザー誘雷をより確度を高くするため、VHF波帯広帯域干渉計(VHF Broadband Lightning Channel Imager)を主たる観測手段、LF帯放電路可視化装置(Lightning Channel Imager: LCI)補助手段として、雷放電活動に寄与する雷雲内の電荷分布を明らかにすることを目指します。さらには、得られた知見をこれまでに知られている大陸型の積乱雲や、我が国の積乱雲(夏季及び冬季)と比較し、レーザー誘雷実現のための指標を示したいと考えております。まだまだあるかもしれませんが、とり急ぎ現時点での可能性です。
最後に先を見越しての内容です。
積乱雲内の電荷分離過程を高い時空間分解能で観測し、雷放電の開始を事前予測しようとするものです。着氷電荷分離の様相の解明のためには、高度方向の温度分布、水分量測定、粒子形状、粒子速度(落下もしくは上昇)の測定が肝要で、これはレーザーという武器で測れるのではないかと考えております。このあたりは、二三か月かけて調査し、秋の科学研究費申請に臨めればと考えております。

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