帰還雷撃電流の速度を電光を記録して推定するのに、パルス状の信号波形が最大値をとる時間差によるのが普通だった。ただこの方法だと、電流パルスの形が進行とともに変わらなければ良いけれど、実際に記録されている波形は高さとともに変形しており、最大値が遅れ気味になっていることから、それでよいのかと疑問を抱いた。一方光パルス先端が到達する時間差を基にして推定するという考え方もあるだろうが、その方法だと受光装置の感度に依存するという問題もあり、私個人としてはあの時「速度の定義」に対し問題提起したつもりであった。
以後の帰還雷撃速度に関しての細かな説明は省略するが、その後10年余り経過して、VHF波帯広帯域干渉計の設計・製作に着手した時、
「伝搬とともにパルス信号は変形する」
という、かつての光学観測を思い出した。
確かに雷放電の進展に伴って放射されるパルス状の電磁波は、大気中を伝搬して受信するアンテナに届くのだから、空気による媒質的な分散をほとんど受けないとはいえ、受信信号の増幅に周波数依存があっては同様の問題が起こりうると思案して、広帯域の受信機を実現(VHF波帯で20MHz-80MHz)することに腐心した。これが我々の干渉計を広帯域と修飾語をつけて命名した理由である。その後の改良や最新に近い観測結果も含め、以下順に紹介させて頂くことにする。

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