VHF広帯域ディジタル干渉計の観測には、一か所の観測点に三基の受信機がいる。
このことは昨日すでに述べた。
その受信機を広帯域とするために20MHz〜80MHz の帯域で利得が可能な限り一定となるよう腐心したことも述べた。FFTで周波数分解して数値処理するにあたって、周波数に依存して利得が異なるようだと、形式的には「周波数分散」の影響が出て、FFT周波数成分毎の位相差から、到来方向を推定することが非常に困難となる。理想的にはFFT周波数成分毎の位相遅れが、線形である必要があるのだが、このことをわかりやすく言うなら、各アンテナにより受信される電磁パルス波が、すべて同じ形状(少なくとも相似形)でなくてはならないという事になる。ただ現実的には、地形の影響や構造物の影響による多重反射の影響もあって、微妙に異なることが多く、FFT周波数成分を独立変数とする位相差の線形関係は、いつも担保されるわけではない。ここでは詳細には言及しないが、平均値、最頻値、中央値、標準偏差を活用しての最適化を謀っている。
我々大阪大学のグループが、この装置を国際会議で紹介し、同業者に批判を問うたところ、
「それは干渉計ではないだろう!時間差法に過ぎない。」
という酷評や、
「理想化された時間差法と呼ぶべき。」
という親派があった。
そして次の年の国際会議では、
「波形の相互相関係数の最大値を与える時間差を用いれば、数値処理も早い!」
といった装置を製作する海外のグループがいて、「広帯域干渉計」が、雷放電の研究分野で、広く知られるところとなったのである。

クリックして投票を!