話しがついつい前後することになるけれど、私が空電研究所の助手の職を得た次の年、同じ部門の助手の仲野さんが、一年間のニューメキシコ鉱工科大学への長期出張に出かけられた。それまでにも海外での研究生活に憧れを持っていた私は、現実にそんな可能性がある環境に自分が居ることを認識するようになった。さらにその気持ちを強くしたのは、ノルウェー西海岸の寒村・セリア村での冬季雷観測では無かったろうか。この出張は、11月末から年の代わった1月中頃までの2カ月弱で、帰路にはマンチェスターのUMISTを訪ねたりして、大気電気コミュニテーの一員としての自覚を持つことが出来るようになっていった。まだまだ駆け出しであった私に、訪問先のUMISTのアンソニーさんが
「ノルウェーでどんな観測をやって来たのか、みんなの前で話して欲しい!」
と、非公式セミナーの要求をされたときには、大いに困った。とはいえこの時の講演は後々海外の学会で講演するときの心構えに強く影響を及ぼしたし、75歳になる今でも役に立っている。生涯で初めての海外出張、外国人の前での初めての英語での講演(非公式とはいえ)が、大きな糧になったのであある。

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