Berger の研究以前にも、ニューヨークの摩天楼エンパイアステートビルディングへの落雷の研究もあったりして、高構造物への落雷は専門外の方々にも多く知られていた。とはいえ「上向き放電で開始する落雷」といった禅問答のような解釈は、少なかったのではないだろうか。それに「上向き放電で開始する落雷」が、高構造物に常について回るもののなら、パリのエッフェル塔や東京タワーがそのことでもっと注目を浴びることになったに違いない。実際パリのエッフェル塔や東京タワーに頻繁に落雷するといった報告は聞いたことがなかったような気がする。ただ近年というべきだろうか、モバイル通信の需要と関連して、多くの通信鉄塔が雷活動の活発な東南アジアの各国内に建設されるに及んで、落雷による被害が顕在化するようになってきたことも事実である。報告によれば、毎年のように落雷被害に遭うようなこともあるらしく、
「熱帯だからねぇ!」
と半ばあきらめ気味の言い訳を聞かされたりもしている。余談ながら、昨日述べた福井県の送電鉄塔も、似た事例である。
話は変わるが、そもそも落雷は雷雲内の電荷分布が引き起こすものであり、いかに高構造物といえども毎年のように落雷被害に遭うというのは、二年連続してならならいざ知らず、ほかに原因がきっとある筈なのである。そして私は「ほかの原因」は、「上向き放電で開始する落雷」に違いないと確信、そしてこの確信は私だけのものではきっとなく、冬季の雷活動を研究の対象にしている大気電気学者なら、たぶんお持ちだろうと信じているのである。

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