最初に観測に用いた広帯域干渉計は、パルス毎にトリガをかけて記録していく方式だった。AD変換器のメーカーに特別注文で設計してもらった優れものの装置であった。トリガをかけパルス波形を記録してすぐに次の観測待機に入る方式で、俗にいうデッドタイムは100万分の1秒以下に抑えて貰った。実はこの装置科学研究費を当て込んで設計したのだが、正直なところ一年目は出来上がってくるのが考えていたより遅くて、秋の観測には間に合わなかったという、ちょっぴり苦い思い出がある。それでも二年目には完成して、豪州ダーウィンの11月12月の観測では活躍してくれた。
それでも正リーダは、可視化できなかった。理屈上は負リーダによるパルスも正リーダによるパルスも記録できている筈なのに、画像化されるのは負リーダだけであったのである。まぁそれでもというべきだろうか、究極の目的は達成できなくとも、広帯域干渉計の成果は我田引水ながら、同業者に誇れるものだったと信じている。
やがてトリガー方式がいけないのじゃないか、トリガーなど考えずに連続記録したらうまくいくのじゃないかと考えるようになっていた。確固たる確信があったわけではないが、ともかく連続記録をと考えたのだが、ディジタル信号に変換して時間の切れ目なしに連続記録なんぞというと、ある意味とんでもない発想ながら、やってみたのである。

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