2020年02月09日

思い出話 20

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次の日も私は、早めの電車に乗った。
さすがに彼女は、そのことについては何も言うことはなかった。
水間駅から貝塚駅までの15分足らずだが、私にはそれだけでも十分わくわくしていた。
確かに急行に飛び乗りたいという衝動も、自分自身の中に感じてはいたが、無茶をすることでその人から良く思われないかもという不安感が、私を思いとどまらせた。
自制心ということになろうか。
結局早朝の逢瀬は、週末の土曜日まで続いた。
その日彼女は貝塚駅での別れ際に
「善一郎君は土曜の午後は自由なの?」
と尋ねたけれど、私はかぶりを振って
「土曜の夕方は、ガスの配達忙しいんです。」
と答えた。
「あら残念、一週間のお礼に昼ご飯でもご馳走しようかと思ったのに。」
と、本当に残念そうな顔で、その人は私を見つめた。そして
「来週からは、また元通りの出勤時間。朝早く駅にきてもいないからね。」
と、私に告げた。
その日の夕方、Hちゃんがいきなりやってきた。大学に入ってからは、初めてではなかったろうか。そしていきなり
「善さん、最近H君とこのおばさんと、よう一緒におるんやて?」
と、詰問した。
「おばさんちゅうても、ワイらから見たらあ姉さんやでぇ」
と返事する私を無視して、
「恥かかんようにせぇよ。あのおばさん出戻りって知ってんのか?」
と続けた。
「お前も、本来やったら高校卒業してる筈やし、遊ぶんやったらええけど、気ぃ付けよ。」
といって、縁側に座って煙草に火をつけた。そして私にも煙草を出して
「お前ももう吸うんやろ。ええねんかくさんで!」
といって、あとは何も言わなかった。
静けさがまた戻ってきたが、ほどなくバイクの音が聞こえて、
「善さん、予備校の試験やねん。数Vの積分の問題教えて欲しいんやしょ。」
と、R 君がやってきた。それをきっしょにHちゃんは立ち上がり、もう一度私をじっと見つめて
「分かってるな!」
念を押した。R君はあっけにとられていた。
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posted by zen at 12:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白
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