2020年02月21日

思い出話 29

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「お嫁に行かんといてや!」
と叫ぶ私に、私の答えることのできない質問を返して
「昼間にまた話しましょう。暗い時にする話違うから。9月4日の月曜日朝の電車でね!」
と言い残して、その人は帰って行った。
彼女の下駄の音はすぐに聞こえなくなって、私は横になった。ふと気が付くとコオロギの鳴き声が耳に入って、夜の遅い時刻には、季節はもう秋を迎える準備を始めているのだなぁと脈絡のないことを考えた。そして虫の鳴き声を聞きながら、この恋愛というよりも憧れに近い、現実の問題をどう決着させるのか考えあぐねていた。
「Y君は進学やめて働いてるけど、わいはそういうわけにはいかんなぁ。」
と思案を巡らせていたら、Y 君がやって来て
「そこでH君の姉ちゃんに会うたでぇ。なんか沈んではったけど、まさか喧嘩はせぇへんはなぁ?」
と、間の抜けた問いかけをした。
「見合いして、来年お嫁に行くんやて。」
と答えると、少し驚いた風ながら
「姉ちゃんいい歳やしな。善さんまた良い人見つからよ。」
と、ドライな慰め方をしてくれた。でも私は、とても9月4日までは待てないなぁと考えていた。
翌週はまだ夏休みで、私はその火曜日か水曜日に難波に行こうと考えた。
「その人の出勤は、確か九時ごろの電車ちゅうてたなぁ!」
と思い出し、私は早めに水間駅に行って難波までの切符を買っておいた。おばぁさんには
「今日は登校日やよって、昼過ぎに帰るから。」
と言い残しておいた。今ならさしずめストーカー行為と言われそうな、待ち伏せである。その人は予期していた時刻に現れ、私に気付いて少し怒ったような顔をしてにらんだ。そして水間電車に乗り込むと
「今日は登校日なん?」
と尋ねたけれど、私はあ!いまいに返事をしておいた。私達は並んで座ったけれど、その人はそれ以上は何も言わなかった。貝塚駅では例によってホームの中頃まで歩き、急行の来るのを待った。そして私は一緒に電車に乗り込み、車輛の中頃で並んで立った。
「なんでぇ?学校ちゃうの?」
というその人に、私は
「難波まで一緒に行くねん!明るいとき話しましょうっていうてたやん。」
といって切符をみせたら、あきれたような顔をして私をまじまじと見つめた。
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posted by zen at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 雷人独白
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