うかつなことながら、昨日の話題の浦島伝説、実は本所浜の浦島が日本最古だと、ネットサーフィンで判った。
さて今日の話題である。
1980年代後半に、名古屋大学空電研究所の一員として、三方郡美浜町で実施した、複数台のビデオカメラによる観測である。
何度かこれまでにも書いているように、あの頃は我々にとってGPSはまだまだ先の技術で、技官の二人が一番腐心したのはすべてのビデオカメラの時間同期であった。二人は時分秒に加え、10分の1秒毎のカウンターを製作して、ビデオ画面への重ね書きを実現したうえ、全てのカメラの画面の走査開始が同時となるよう設計してくれた。ビデオカメラは、一秒間60コマだから走査の開始が同時出ないと、本当の意味の同時性が確認できなくなるからである。確かに今日の技術と比較すれば、まだまだ十分でないことは事実であるが、あの時点で実現できる精一杯の観測であった。そしてその努力もあって、複数の送電鉄塔から上向きに放電の開始する光景を、何例も記録できたのである。残念なことにあの時点では現象論的な解釈はできても、放電物理の立場からはきちんとした解釈はできなかった。先輩のNMさんは国内の電気学会や、ICOLSEの国際会議で観測事実として発表したけれど、あまり評価されなかった。ところが最近になって、1秒10万コマという高速ビデオカメラが利用可能となり、100マイクロ秒といった短時間の間に、複数の上向き放電が観測されたという論文が関連雑誌に掲載されるなどしており、高構造物から「同時に上向き放電が開始する」現象への注目度が高くなっている。気障なようだが、私達の観測は時代を先取りしすぎていたということになる。

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