身内を褒めるのは、ある意味格好悪いけど、福島の原発事故に対しての意見で、弟子のM君を見直したことがある。東日本大震災の直後やったか、あるいは半年ほどたっていたか、何かの議論の最中、M君はえらく憤慨して
「原発は安全だと主張していた専門家が、地震以降皆評論家になってしまった。技術者としての責任をどう考えているんだ!」
というのである。
日頃M君は調整役として振舞うことが多く自己主張しない性格、大阪大学の同僚教員から
「彼良い性格やなぁ。」
と、高い評価を受けていた。その彼がえらくはっきりと意見を言ったのには驚かされたし、改めて彼を見直すことにもつながった。
一方二日前に紹介した電力会社に職を得ていた一人、帰京してあたった任務が福島原発と電力会社本店や官邸との通信の中継。緘口令が引かれていたという。
「墓場まで持って行くことなんてできませんよ。」
と、ある意味精神的に参ってしまい、引きこもりとまでは言わないが、重圧は大変なものだったのだろう。彼の名誉のために書き添えるが、一切彼は秘密を漏らすことがなかった。結局職を辞し、関西在の電線メーカーに転職してしまった。これなども前途あった筈の若者を、大いに傷つけることとなったと、私は理解している。

クリックして投票を!