私の特技はナンパです。
(I am good at hunting human beings!)。
私は、レストランや喫茶店などで、近くのテーブルの客に声をかけることが多い。それも国の内外は問わない。とはいえ、決してのべつ幕無しというわけではない。まず私が一人の場合が多い。そして「ナンパ」の相手は、何人であってもかまわないし、老若男女を区別しない。さらに先方が、沈んだ雰囲気であろうが、盛り上がっていようが、それはそれで臨機応変。とはいえ、場を読む観察力も肝要で、一声、二声あたりで、先方に引いていく気配があれば、続けないことにしている。逆に良い雰囲気が出来そうなときには、このことばを申し上げる。さすがにこのことばに、相手は一瞬強張るものの、私が目で笑って見せると、一気に打ち解けて心の垣根が壊れて、大いに話が弾むのである。このあたりの極意は、愛弟子のY君に伝授したけれど、果たして彼はこんな芸当を身に付けてくれただろうか。
そんな私の武勇伝の中でも、40年程昔1月3日の英国ヨークのホテルでの「ナンパ」はなぜか心に残っている。ノルウェーでの観測の帰りに、立ち寄ったのだが、朝食を取ろうとダイニングルームにおりていったら、ほとんど満席で老婦人が一人で食事しているのが眼に入った。だから一緒に座って食事して良いかと聞き、そして
I am good at hunting the nice lady.
と申し上げたら、
I haven’t experienced being hunting for these 30 years.
と返され、お互い大笑いして小一時間の朝食を楽しむことができたのである。
朝食の後は、楽しく食事をできたとお互いに例を言い合って別れたけれど、お互いの名前を名乗り合うことはなかったと記憶している。

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