自宅におばぁさんと二人で寝るようになったことと関係して、私の早寝早起きの習慣は、この頃から始まった。朝四時起床、夜九時就寝という習慣で、体調の悪いときを除いて、私が63歳で大阪大学を退職するまで続いた。
おばぁさんはそんなはやおきの私に、
「毎朝起きたら、土間を掃いてきれいにするように。」
と言って日々の役割を命じた。
私の場合、自宅で四時頃起きだして、しばらく本を読んでゴロゴロするのがつねであったが、6時となるとおばぁさんも起きだしてくるので、それから歩いて五分足らずのおばぁさんの家に行くのである。そして私はといえば、まず朝刊に目を通す癖があったのだが、そんな気儘な振る舞いは禁じられたに等しかった。
後になって私は、世話になっている家族を差し置いて、いの一番に新聞に目を通すという習慣は、居候の身にとってまことに「厚かましい」振舞であったことを認識するようになるのだが、あの当時はよく言えば天真爛漫でったというべきだろう。そしておばぁさんに感謝するのは、
「世話になっているのだから、遠慮をせよ。」
といった、ある意味卑屈な言葉を一つもかけることなく、日々の行動を通じて矯正してくれたことである。

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