生まれ故郷は、日本一高いといわれる水間電車の終点から、徒歩なら20〜30分程度の里山にある。そして今日の話題は、その里山の故郷ではなく、水間電車に関してなのである。実は前回の帰郷時にもほとんど同様の経験をしているのだが、敢えてもう一度取り上げたい。
貝塚駅で、南海電車から乗り継いでいたら、女子高校生らしい四人組が、券売機で大笑いしながら、買い求めていた。私は例によって声をかける
「君達女子高校生だよねぇ。なんでこんな田舎電車に乗って、まさかこんな時間に水間に行くんじゃないよねぇ。」
「水間って終点?そこまでは行きませんよ。」
「誰かの家に行くのかな?」
「全員岸和田の住民で、おいしークレープ屋さんがあるらしいから、食べようという事になって。」
「まさか、おいしいクレープ屋さんなんて、どこにあるんやろ?」
「清児です!」
と話が弾んでいたら、水間行きが入ってきた。
経営の合理化とやらで、運航はワンマンカーの体制。だから降り口は、進行方向の先頭車両なのである。
くだんの女子高校生達は、最後部に席を取り、おしゃべりに興じている。よっぽど
「先頭車輛に乗っていないと、降りるとき困りますよ。」
と、声をかけてあげようかとも考えたけれど、
「これも経験、放っておこう。」
と考え直し、天邪鬼爺は市役所前で降りた。
だから清児についてのドタバタを見てはいないけれど、これが不思議なことに三時間ほど後の帰り、四人組の高校生達が下り電車に乗っていた。うちの一人が目ざとく私をに気づいて
「クレープ、おいしかったですよ。」
と声をかけてきた。私は、
「三時間ほどだから、たくさん食べたんか。でも食べ過ぎると太るでぇ。」
とからかいながら、
「それより清児で、降りるとき慌てたやろ。」
とただしたら、四人声を合わせて
「知ってたのに、言ってくれないなんてひどい!」
と、口を尖らせたのである。天邪鬼爺の私は
「これも経験だからね。」
と、応えるとさらに一オクターブ上がって
「ひどーい!」
と言って、大笑いしていた。

クリックして投票を!