卒論のこの時期思い出すのは、
「科目等履修生」
という肩書で、一般企業から研修に来られていた、社会人の方々である。年間一人か二人程度だったろうか。電力関係者が多く、私が助教授をしていた講座が「電力工学」であったこととも関係して、ほとんどが私の所属している講座に籍を置かれた。彼らは当然社会人、工業高校を卒業して就職、数年目の研修というかインターンシップというか、であったろうと記憶している。座学に加え所属講座では卒業研究を、四年生と同じように課していた。私が直接指導したのは10年間の在籍中に数人はいたろうか。ただ卒業研究と言えども社会人の力作だけに、国内の学会の口頭発表には十分耐える内容のレベルまで達することが多かった。
その一人は、東京理科大であったかな(?)大気電気学会に同行した。前日は友人のY君宅に同宿し、馴染の焼き鳥屋で小宴を持った。発表内容は、針端コロナ電流の多地点観測で、雷雲の動きをモニターしようという内容、周波数分解が高くないだけに、パソコンの時刻で秒単位の同期さえあれば、充分であった。この種の研究は、名古屋大学のロケット誘雷グループが1980年代に実施し、電気学会の論文になっているけれど、私達の場合はレーザー誘雷の実施と併せての観測で、技術の新規性というよりは、内容の新規性に意味があったのである。ただ彼が研修を終えて会社に戻ってしまうと、後を継いでやってみようという学生もなく、あれっきりになってしまったのは、今となっては少し惜しい気がしている。高校時代は剣道をやっていたという礼儀正しい若者で、もうそろそろ定年を迎えていらっしゃるかもしれない。(この稿続く)

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