ずいぶん前置きが長くなっている。
ただもうしばらく、これを続ける。
1989年6月、私は大阪大学工学部電気工学科電力工学研究室(松浦研)に、席を得た。空電研究所の助手となって10年間の「雑巾がけ」の末、ようやく昇進の機会を得たのであった。それを機に気象学の教科書も読み漁り、
「どうせ雷放電の研究やるんやったら、気象学会にも発表して批判を聴かなあかんのちやうか?」
と、考えた。ただ名古屋の国際会議場で開催された気象学会での反応は、雷放電開始の詳細な議論には冷ややかというよりは、何やらお門違いといった感じで、発表している私にすれば砂を噛む思いであった。ところがレーダー画像と雷放電の分布との比較の内容を話し始めた途端、食いつきが180度変わったように感じられ、
「わざわざ名古屋まで発表に来た甲斐があった!」
と、胸をなでおろす気持であったことを覚えている。そしてこれ以降は、国内会議にあっては、電気学会と気象学会の両面作戦、国際会議にあっては、AGUとICAEが主な発表・討論の場となっていった。
その甲斐あってというべきだろうか、私はTRMM(熱帯降雨観測衛星)に搭載されるLIS(Lightning Imaging Sensor)の、日本側PI(Principal Investigator)となる機会を得た。
とここまでが前置きで、ここからが本題である。
TRMMの国内会議で、
「熱帯地方の降雨が、増加傾向にあるらしい。」
という話題を提供なさったNさんに、懇親会の立ち話で
「増加傾向と言っても、地球上の水の量は決まっているのですから、最大値以上には増えないんちゃいますか?」
と尋ねた。Nさんはにっこりと笑いながら
「降水は気化して水蒸気となり、次の降水となるんですよ!」
と優しく教えてくださった。
いかに電気系の学問が私のバックグラウンドとはいえ、実に恥ずかしい質問をしたと、自身の浅学を改めて認識した。(この稿続く)

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