何日か前、「坂の上の雲」の話をした。
それは、司馬遼太郎さんの著作「坂の上の雲」の書き出しにある、坂の上の「一朶の雲」を目指す若者が日本には少なくなったのではないかと、天邪鬼爺の私が危惧しているからである。それにこの時期、10年ほど前に放送されたTV ドラマ「坂の上の雲」が、NHKで再放送されており、たまたま観る機会に恵まれたこととも関係している。
私の弟子の一人に、韓国気象庁に勤務していた韓国人の弟子が居る。年齢は10歳位程度の差で、私が大阪大学の教授になる二三年前だったろうか、どういうきっかけだったか全く忘れてしまったけれど、「雷放電の研究をして、博士の学位を取りたい。」
と申し出があった。言葉の問題で、いささか意思の疎通に難があったけれど、もとより断る理由でもなく、博士課程学生として受け入れた。そしてそれから三年余り、主として国内の野外の実験(福井県美浜町のレーザ誘雷実験)に参加してもらって、めでたく工学博士の誕生となった。
彼の帰国後何年かして、ソウルで会うことになったのだが、
「おかげさまで副台長になりました。」
という彼が、私のおめでとうの言葉に続いて
「先生は私が出世すると嬉しいですか。それなら頑張って気象台長をめざします。」
と真顔で言ったので大いに感心し、
「韓国にはまだ坂の上の雲を目指す若者がいるんだ!」
と大いに感激した。弟子の彼が若者だったかどうかはともかくとして・・・。

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