修学旅行二日目の宿は東京都内であった。ただ今となっては,どこだったかを考える術もない。ただなんとなく,浅草界隈でなかったろうかと考えたりする事もあるけれど,根拠はない。それでも夜の自由時間に,後楽園球場に野球のナイター見に行けないだろうかと考えた事を,思い出したりする。最近の中学校の修学旅行などでは,管理がきちんと行き届いているとはいえ,子供達が野球ナイター見学と決めたら行かせるという話も聞く,とはいえ,私達の場合には,子供達が勝手に夢想するだけで,野球見物なんてとてもとてもであった。それどころか夕食などの後,飲み物を買うという行為自体も禁止されていた。
今日なら,自動販売機が至る所にあるのだから,禁止という行為が成り立つ筈もない。私達が子供の頃,自動販売機なんぞという代物はなく,非常に珍しかった。だから教師が子供達に購買禁止をと考えるなら
「禁止や,買うたら行かん!」
とお触れをまわすだけで十分であったろう。
ところが,その自動販売機が旅館にあった。
私は何人かの悪餓鬼仲間と一緒になって
「先生に見つからへん様に行こか?」
と,抜き足,差し足で買いに行った。風呂から出た辺りに自動販売機があり,先生方が風呂に入るのを見極めて,強行突破した。
ジュースやサイダーを買ってたら誰かが
「この茶色いのんなんや?」
と言いだした。
「ビールちゃうか?」
「阿呆か,ビールなんか売ってる訳無いやろ!」
「買うて飲んでみたら判る,買え買え!」
といった調子で,取り敢えず見た事もない茶色い液体の入った飲み物を三本買って,部屋に戻った。
ついでといっては何だが,その頃には缶やペットボトルではなく,飲み物はすべからく瓶に入っていたのである。
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