霜月晦日
昨日の日曜日、クリスマスセールを求めてタングリンモールに出かけた。
その帰路の事である。
タクシーで移動しようと、タクシースタンドを目指して歩いていたら、背後から追突された。若い頃ならそんな追突は問題にもならないのだろうが、悲しいかな71歳の爺は、オットットといった感じで、転んでしまった。緩やかな下り坂だったことも関係してだろうが、左に曲がろうとした矢先の追突で、加害者は中年のおばさん風。身長もこの爺よりは随分と低いし、体重も大してあるようには見えない。そんなおばさんに追突されて、転がるなんぞとは、ある意味恥ずかしい鍵である。そのおばさん、よっこらしょと立ち上がるこの爺を手伝ってくれながら、とりあえず
「大丈夫ですか?」
と気遣ってくれている。私自身スローモーションを地で行くような転がり方だったので、地面をたたきつけて身をかばった左手の掌が痛い程度で
「大丈夫ですよ!」
と答えた。家人はそのおばさんい
「なぜついとつしたの!」
と詰問したら、そのおばさん言い訳気味に
「この方急に左に曲がるから!」
と、仰るではないか。
「後ろから追突してきて、それは無かろう!」
といいたくもあったが、大した怪我もない様子だからもう一度
「大丈夫ですよ!」
といって見送った。
ただ私はその時13年程昔の経験を思い出していた。それは種子島でJAXAのロケット打ち上げの手伝いを兼ねての見学の折、責任者の一人から
「河崎さん、風が強いと打ち上げを延期する理由御存じですか?」
と尋ねられ、返答を躊躇していたら
「ロケットの浮き上がった瞬間に強風が吹くと、不安定になるからです!」
と、教えて貰ったのである。
浮き上がる前なら、何トンもある機体故びくともしないのだが、地面と離れる瞬間に強風が吹こうものなら、昨日の私のようにスッテンコロリンとなりかねないということなのである。
そんなことを思い出しながら、大した怪我で無かった幸運を感じていたのである。

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