2020年10月22日

なぜ広帯域干渉計?

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話は前後するが、その前年1985年私はパリの国際会議で、VHF波帯の干渉計による放電路の再現の様子を、フランスONERAの発表で知り、私も設計したいと考えるようになっていた。干渉計そのものは、当時勤務していた空電研究所の「太陽電波写真儀」で知ってはいたものの、同様の原理を雷放電の観測に適用していることに感激したのであった。とはいえ私自身が干渉計に取り組むまでには、まだ数年経なければならない。
昨日も書いたように、一口で「放電の進展」といっても、正極性の進展と負極性の進展の様相はすっかり異なる。これはロケット誘雷実験グループで、ストリークカメラの観測を担当していた中部大学のSSさんの成果として、光学的観測で明らかにされていた。そしてそれらに伴う電磁放射にも、放電の極性依存の有ることを、ぼんやりとではあるが昨日述べたように三方郡美浜町の観測で気付き、その後雷撃電流とVHF波を同時観測し、強度に20dBの差のあることを突き止めたのである。さらにVHF波帯の干渉計といえども狭帯域では不十分で、広帯域干渉計の必要性を結論するのに、おおよそ10年の歳月をかけたというのが本当のところなのである。
もう一点どうしても書いておきたいのは、放電進展の光学観測である。
NMさんは、フランスのイベールの論文を参考に、光学カメラのフィルムの位置に二本のフォトダイオードを置き、出力を二チャンネルのデータレコーダに記録することから始めた。その出力をAD変換して、あれこれ数値処理できることを示したのが博士課程学生だったTN君や私で、
「そんなことなら、最初から高速AD変換器を組み合わせてディジタル記録しよう!」
ということになった。さらに8個のフォトダイオードを並べ、より広い視野角を得るために円筒形レンズを利用した装置を製作した。この装置はNMさんの設計で、二人の技官NMさんNHさんが製作した。私はそれを中国やカナダに持って行って観測に供したのである。
いつの間にやら、私の研究者としての初期の頃の思い出話をしてしまったようだが、明日からは話題を変えることにしよう。
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2020年10月20日

同時落雷

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きのうの更新を読んだという知り合いが、早速メールをくれた。
「善さん、ぼけたんちゃう。こんな写真20年ほど前に雑誌で見たでぇ!」
と、ご丁寧にも、雑誌に掲載された『落雷のシャワー』と題する写真をスマホで接写し添付までしてあった。数えてはみなかったけれど、紙面一杯に100を下らない落雷が映っていた。
考えようによっては、友人とは有り難いもの、私の手慰みのブログを読んで、あれこれ考えてくれているのかと思うと、頭の下がる思いである。
「この写真、シャッターの開放時間判らへんけど、三脚で固定してレンズにはフィルターつけて、何分も、男十分もシャッターを解放したまま映したんや。僕の言うてんのは一秒の一万分の一10万分の一ちゅう短い時間に、雷放電の発生する現象なんや!」
と返事しておいた。
「ふぅーん、そうなん。何や判らへんけど!」
というのが、知り合いからの回答であったが・・・。201020 音羽電機.jpg
ちなみにここに揚げたのが、音羽電機ホームページの「雷の写真集」から拝借したもので、私の知り合いの言う「落雷のシャワー」である。音羽電機のホームページにも残念ながら開放時間の記述はなかった。
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2020年10月19日

多地点同時落雷

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うかつなことながら、昨日の話題の浦島伝説、実は本所浜の浦島が日本最古だと、ネットサーフィンで判った。
さて今日の話題である。
1980年代後半に、名古屋大学空電研究所の一員として、三方郡美浜町で実施した、複数台のビデオカメラによる観測である。
何度かこれまでにも書いているように、あの頃は我々にとってGPSはまだまだ先の技術で、技官の二人が一番腐心したのはすべてのビデオカメラの時間同期であった。二人は時分秒に加え、10分の1秒毎のカウンターを製作して、ビデオ画面への重ね書きを実現したうえ、全てのカメラの画面の走査開始が同時となるよう設計してくれた。ビデオカメラは、一秒間60コマだから走査の開始が同時出ないと、本当の意味の同時性が確認できなくなるからである。確かに今日の技術と比較すれば、まだまだ十分でないことは事実であるが、あの時点で実現できる精一杯の観測であった。そしてその努力もあって、複数の送電鉄塔から上向きに放電の開始する光景を、何例も記録できたのである。残念なことにあの時点では現象論的な解釈はできても、放電物理の立場からはきちんとした解釈はできなかった。先輩のNMさんは国内の電気学会や、ICOLSEの国際会議で観測事実として発表したけれど、あまり評価されなかった。ところが最近になって、1秒10万コマという高速ビデオカメラが利用可能となり、100マイクロ秒といった短時間の間に、複数の上向き放電が観測されたという論文が関連雑誌に掲載されるなどしており、高構造物から「同時に上向き放電が開始する」現象への注目度が高くなっている。気障なようだが、私達の観測は時代を先取りしすぎていたということになる。
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2019年10月13日

雷鳴と降水

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歩いて15分程度のモールまで、昼過ぎ買い物に出かけた。
プリンターのインクと用紙を買い求め、モールの外に出ると、空模様が何やら不気味である。来たときはカンカン照りで、雨なんてとても考えられなかったというのに。
「自宅に着くまでは、雨も降るまい!」
と、気楽に考えて歩き始めた途端、遠くから雷鳴が聞こえた。何せ買い物の一つは印刷用紙、雨に遭うとたまったものじゃぁない。
いきおい早足となる。
ところが5分ほど歩いたところで、ぽつりと来た。
速足で歩いたおかげで、ほぼ中間地点まで来ているが、このあたりの夕立は、ぽつりぽつりの後一気に来ることが多い。店で渡されたプラスチックバッグの口をしっかりと締め、ひたすら歩く。運のよいことにといおうか、ぽつりぽつりが続いている。そしてマンションのいる口まで10m余りとなったとき、ざざっと来た。丁度その時
「河崎さん、傘は持っていないの?」
と入り口のセキュリティガードが、後ろから傘を差しだしてくれた。大仰なようながら、地獄に仏とはこのことか。運のよいことに買い求めた印刷用紙は雨に遭うこともなく、無事に自宅に到着。それにしても雷鳴から10分弱で降水盛んとは、常日頃の主張と矛盾なく、めでたしめでたしといったところであろうか。
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2019年08月27日

双方向性リーダ7

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JICAがエジプトの大学院大学のために製作を認めてくれた優れものは、ロトフィー君という博士課程二年生の学生とほとんど一緒に日本にやってきた。ロトフィー君は二年間日本に滞在して、雷観測に参加しデータ解析して学術論文誌に投稿し、最後に博士論文としてまとめるのである。北陸の冬季雷に使おうということになったのは、アレキサンドリアのあたりもミゾレ交じりの冬の日に、雷活動が少し活発になることを知って、
「北陸の方が、機会もずっと多いから、きっと論文書けるで!」
と、ロトフィー君の背中を押したからであったろうか。ただ今から考えると、エジプト人のロトフィー君には、冬の北陸河北潟の野外観測は、少し過酷だったかなぁと考えたりしている。それでも、ロトフィー君は高専で教鞭をとっている、NY君と一緒に二冬を河北潟で過ごし、優れもののディジタル記録計で冬季雷の観測を成功した。
一方ニューメキシコに滞在したA君は、人工雑音の少ないという観測環境の良さを生かした観測結果をマイケル君という協力者を得て、大量に取得しこれまた大いに成果が上がっていた。A君の解析法が、ロトフィー君の研究を進めるに大いに役立ったことは言うまでもない。
つまり人間の眼を頼りにしなくとも、負リーダーの進展はもちろん、正リーダーの進展の様子も,可視化できたので私としては、定年ぎりぎりに当初目指した目標に到達できたと、大いに喜んだ次第である。
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2019年08月24日

双方向性リーダ6

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話が本題からずれることになるけれど、JICAは外務省の外郭団体で、開発途上国を援助する機関である。当然財布もおおらか、4チャネル200MHzサンプリングで15分近くも連続記録する装置をいとも簡単に認めてくれた。ちなみにこのとんでもない機械で、エジプト人のロトフィー君が博士の学位を取得することになったのだが、申請時には祖kまで考えてはいなかった。
期を同じくして、博士の学位を取得したA君が、ポスドクでニューメキシコで二年間過ごしたのだが、二年目には同じく連続記録するという考え方で、4チャネル200MHzサンプリング、1秒毎にハードディスクに記録するという装置を、ニューメキシコ鉱工科大学のマイケルと作り上げてくれた。おまけにシームレスとくるのだが、その部分はマーク・スタンレーが貢献、NDAを結んで使わせてもらうことになるのである。というのはシームレスに一秒毎に記録できるということは、実時間の解析も原理的に可能ということになるからである。実時間処理はさておき、連続記録して記録されている電磁パルスを全て処理できれば、原理的に正リーダも負リーダも可視化できることになる。実際記録されている波形を見てみると、比較的大きい振幅のパルスに付随するような形で、おおよそ10分の1の振幅のパルスがかすかに見え、
「こんなだから、振幅の大きなパルスでトリガしてたので、小さな振幅のパルスが記録できてなかったんだなぁ。」
と妙な納得をすることができた。
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2019年08月22日

双方向性リーダ4

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最初に観測に用いた広帯域干渉計は、パルス毎にトリガをかけて記録していく方式だった。AD変換器のメーカーに特別注文で設計してもらった優れものの装置であった。トリガをかけパルス波形を記録してすぐに次の観測待機に入る方式で、俗にいうデッドタイムは100万分の1秒以下に抑えて貰った。実はこの装置科学研究費を当て込んで設計したのだが、正直なところ一年目は出来上がってくるのが考えていたより遅くて、秋の観測には間に合わなかったという、ちょっぴり苦い思い出がある。それでも二年目には完成して、豪州ダーウィンの11月12月の観測では活躍してくれた。
それでも正リーダは、可視化できなかった。理屈上は負リーダによるパルスも正リーダによるパルスも記録できている筈なのに、画像化されるのは負リーダだけであったのである。まぁそれでもというべきだろうか、究極の目的は達成できなくとも、広帯域干渉計の成果は我田引水ながら、同業者に誇れるものだったと信じている。
やがてトリガー方式がいけないのじゃないか、トリガーなど考えずに連続記録したらうまくいくのじゃないかと考えるようになっていた。確固たる確信があったわけではないが、ともかく連続記録をと考えたのだが、ディジタル信号に変換して時間の切れ目なしに連続記録なんぞというと、ある意味とんでもない発想ながら、やってみたのである。
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2019年08月21日

双方向性リーダ3

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いずれにいしても、状況証拠では科学にはならない。
なんとしても正のブレークダウンを可視化したい。ただ単極性のリーダ進展の観測から、放射されるVHF波の電波強度が、負の方が正より20dB強いことが明らかになった。早い話、負の方が正より10倍も強いのである。都合の悪いことに、これらがほとんど同時に放射されているので、負からの放射波が正からの放射波を完全にマスクしており
「これやったら見える筈ないやんか!」
と気付かされたのである。
「同時言うても、少しは差もあるやろうから、思い切って広帯域受信したらどうやろう!」
と考えた。広帯域受信なら、多分マイクロ秒程度の差程度なら見えるんちゃうか?」
と考えた。さらに1990年代も半ばとなってデジタル干渉計の実施がパソコンなどでも簡単にできる時代となっていたので、現実的だと考えた次第。それに広帯域受信だと、煩雑な受信機の設計は必要ない。設計が必要ないということは、メンテナンスも必要なしということで、装置としては随分と簡単になるのである。
ただ依然として、信号でトリガをかけて観測を実施するという、ディジタル信号処理の基本から抜け出せずにいたのが、とんだ考え違いだったと言ことになるのだが、それはまた明日にでも。
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2019年08月20日

双方向性リーダ2

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もう数日専門すぎる話を続けたい。
正リーダと負リーダに関してのわだいである。
まず光学的に観測したと申し上げた。それに双極性リーダ進展に関しても申し上げた。これは専門外の方にはいささかご理解頂き難い内容乍ら、
「空間の一点から放電が開始するとき、開始点の電荷を保存するという物理法則を認めるなら、正リーダと負リーダが同時に互いに逆方向に放電進展をかいしする。」
という仮説で、観測的に検証されない限り、仮説なのである。
ちなみに光学的に正負リーダを観測できていたのは、ロケット誘雷実験や福井県三国の地上高200mの煙突などから上向きに開始する放電を利用しての観測で、これらの場合金属(導体)から放電が開始するので、単極性のリーダ進展となるからである。ちなみに光学観測は、最初アナログ記録して、波形を再生しながらという古色蒼然なやり方であった。1980年代のことで、その頃からディジタル技術もかなり普及してきて、1980年代後半はディジタル記録に移行していった。
電波計測である。
まず取り組んだのは、VHF波帯の広帯域干渉計。これはフランスやニューメキシコグループの装置のデッドコピーに近かった。早い話丸写しだったのである。これはたん観測結果と併せての比較で、状況証拠乍ら
「この辺りに正のリーダ、正確には正のブレークダウンがある筈だ!」
という辺りまで研究を進めることができたものの、狭帯域の干渉計では正のブレークダウンを可視化することはできなかった。
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2019年08月19日

双方向性リーダ

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数日前の話題、雷放電の正負、正確には正リーダと負リーダの進展に関してである。
そしてれらはすでに1980年代に光学的に測定されていて、それぞれ10の5乗m/秒及び10の6乗m/秒と知られていた。さらにこれらの値は、室内実験による超ギャップ放電で確かめられている値と矛盾はしないのである。だから、何をいまさらという向きもあろうが、現実には大きな問題を含んでいて、光学観測では解決しえなかったのである。
室内実験と異なり、自然の雷放電は金属導体などないわけだから、どこで雷放電が開始するにせよ、その点の電荷が保存されねばならない。そのため自然の雷放電は、双極性リーダで開始する必然性があるのである。つまり、正のリーダと負のリーダが放電の開始点から、互いに逆方向に進展するということが起こっている筈であり、となると光学的観測では本当の意味で観測できないのである。すなわち放電の極性を考えるなら、電波観測以外にはあり得ないのである。
いやはや専門過ぎて、ご常連様にはご理解いただき難いかもしれない。(この稿続く)
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