2023年06月14日

Yさん御逝去

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APL初日の昨日、開会式に引き続いて、日本のこの分野の第一人者Yさんのご逝去が報告された。私が「フランケン」と呼んでいた御仁で、私より2歳年上とはいえ、ほとんど同世代人だけに、大いにショックである。
実はこのYさんとの出会いは、私が空電研究所で将来の研究方向を模索していた折、空電研究所を訪ねてこられたのが最初である。
その折り
「福井県の三国火力の煙突に、本当によく落雷します!」
と、故人となられた竹内先生や先輩のNMさんに話された。だからその年1981年の冬季は、観測バスを九頭竜川河口のらっきょう畑の一隅に止め、火力発電所の煙突への落雷を光学観測したのである。これが私の雷観測に関わった最初で、その後ノルウェーでの観測や、国内のロケット誘雷実験へと参加機会が増え、雷放電の観測的研究が、本職となっていったのであったろうか。
同じころ、後に私が席を得た大阪大学工学部の電力工学講座から、これまた数年前に個人となられたYKさんが空電研究所を訪ねて来られ、それがきっかけになった竹内先生の関西電力との共同研究が始まった。こちらは夏季の雷活動が対象で、滋賀県の南郷で、同じく観測バスを止めてのレーダー観測、その頃には私自身観測の戦力の一人になっていたろうと信じている。そして一緒に観測に参加した仲間は、当時の学生さんとあれこれ教えて頂いたNMさん以外は、ほとんど鬼籍に入られてしまっている。
私自身、爺になったという事である。
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2023年05月13日

Ultimate Interferometer 9

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「ディジタルデーターを連続記録」するとは、一見馬鹿げている、あるいは先祖返りしてアナログ記録なのかといった、疑問を抱かせるかもしれない。
しかし、パルスの振幅でトリガをかけると、振幅の小さいのは記録できなくなる可能性があるうえ、トリガレベルを小さくすると、雑音なのか必要な信号なのかの識別が、容易でなくなる。それに2010年前後からモバイルのストリーミング機能が格段に進歩してきたので
「この技術を使えば、デジタル信号を連続記録してデータを比較的容易にアップロード、ダウンロードできる?」
とも考えたりしたのである。話を少し戻すが2000年になった当初は、対数増幅も試したりもしたが、最終的に「ディジタルデータの連続記録」を選択した。これは科学目的
「双方向性リーダの進展を、観測的に確認する。」
のためで、実用的には、レベルトリガー方式で、一つの雷撃あたり数千パルスを記録しての実時間を目指している。言い換えれば、実用的には不完全な双方向性リーダ進展の確認、科学的には完全な確認を目指したという事になろうか。
余談ながら、同じころ批判的であったニューメキシコのグループも、我々の方式に興味を持ち連続記録を模索し始めた。私はSD社と共同して三チャネル200MHzのサンプリングで、15分間連続記録という、メモリーのお化け(一データーテラバイト)のようなAD変換器を開発、それを阪大に来て学位論文をまとめたロトフィー君の成果として、エジプトの大学に収めてある。
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2023年05月12日

Ultimate Interferometer 8

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今日は私達が取り組んできた「広帯域干渉計」の、ディジタル記録について述べたい。取り組み始めた頃は、多チャンネルディジタルオシロスコープに、メモリーを増設することから始めた。VHF波帯(20−80MHz)のアナログ信号をディジタル記録するには、少なく見積もっての200MHzでサンプリングする必要があり、それも少なくとも3チャネルとなると、専用のAD変換器を設計する必要がある。当時(1990年代後半)には、まだまだ高速サンプリングのAD変換器は高価だったし、特別に注文するための予備観測による確認も必要であった。それにディジタルオシロスコープだと、連続記録やパルス毎にトリガーしてのイベントトリガー記録のいずれもが可能で、予備観測には十分の代替え機であった。そしてこの予備観測は、国内はもとより中国の奥地やオーストラリアダーウィンで実施、期待以上の成果を上げ、最終的にはSD社に、イベントトリガ方式で、イベント間のデッドタイムは1マイクロ秒以下、記録可能総イベント数は2000パルスとして共同で開発した。上限を2000パルスとしたのは、デジタルオシロスコープを利用しての予備観測では、充分目的を果たせた、言い換えれば
「トリガーレベルをうまく調整すれば、一雷撃の記録には十分!」
と、考えたからである。
ただその後、
「これでは、双方向性リーダーの確認に不十分であろう。」
と気付き、連続記録方式に舵を切ることになるのだが、それはまた明日にでも。
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2023年05月11日

Ultimate Interferometer 7

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我々の「VHF波帯広帯域ディジタル干渉計」のほかに、VHF波帯の時間差法で電磁パルスの放射位置を推定するLMA(Lightning Mapping Array)がある。ニューメキシコのグループが開発した装置で、実に綺麗に放電路を可視化でき、残念ながら我々の装置は、きれいな放電路の再現という点において、明らかに見劣りをする。
ただVHFのこの分野の大先輩プロクターの報告によれば、
「雷放電に伴って放射されるVHF波パルスには、バースト状のパルスと、孤立したパルスがあり、バースト状パルス波の位置推定は、時間差法では不可能である。」
と結論している。
プロクターの結論をよりどころに、我々は干渉計に正確にはディジタル干渉計に拘った。
実際北陸の冬季の雷活動は、1970年代初頭名古屋大学空電研究所の観測報告以降、世界中の来本殿研究者達から注目されるようになったのだが、先に述べたバースト状のVHF放射が、北陸冬季の正極性落雷の際によく観測されることもあって、
「これをきちんと解明してこそ!」
の願いもあっての拘りなのであった。
昨日述べた「双方向性リーダー」の進展は、LMAやLF時間差法装置でもどうにか可視化できるけれど、完全な形でというには、程遠いというのが身びいきもあっての私の実感である。
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2023年05月10日

Ultimate Interferometer 6

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我々の長く開発してきた装置の名を正確にいうなら
「VHF波帯広帯域ディジタル干渉計」(Broad band VHFDITF)
と呼ぶべきで、似たような装置を稼働している「同業の研究者」の何割かは誤解をして、似て非なる装置を、広帯域干渉計と呼んでいらっしゃるのではないかと危惧している。(危惧などおせっかいかもしれないが・・・)
つまりVHFDITFは雷放電に伴って放射される電磁パルスをディジタル記録するので、確かに複数のアンテナで受信される信号には、見かけ上の時間差は存在するものの、解析にあたって時間差を陽に考慮に入れる必要が無く、あくまでも波形間FFT 成分毎の位相差が推定できれば良いという点を強調しておきたい。
私達がこの装置VHFDITFを開発したのには、いや開発しなければならなかったのには、もう一つ理由がある。それは「双方向性リーダー」という仮説を観測を通じて証明するという願いである。雷放電は、電気工学など起こる電極間の放電と異なり、雷雲内の言い換えれば大気中のどこかに端を発する。そのどこかは、例えば電荷を担っている霰であったとしても、その霰は電気的に繋がっているわけではないので、リーダーと呼ばれる放電の進展にあたっては、その「どこか」の電荷保存が担保されなくてはならない。早い話負のリーダー(負のブレークダウン)が進めば、進んだ分の負の電荷に同量の正の電荷も反対方向に正のリーダ(正のブレークダウン)として進展せねばならない。ただ負のブレークダウンに比べて正のブレークダウンに伴って放射される電磁波の強度は100分の一程度で、同時に起こっているなら、正のブレークダウンはいうなればマスクされて受信し難く、このあたりが鍵を握ることになる。
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2023年05月09日

Ultimate Interferometer 5

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今日では、中国のグループやマレーシアのグループが、「VHF波帯広帯域干渉計」と称する装置を製作し雷放電の観測に供している。
マレーシアのグループが広帯域干渉計を取り組み始めたのには、インドネシアのバンドンから大阪大学にやってきて、工学博士を修めたレディー・マルディアナさんの影響と聞かされた。東南アジアの国際会議で、レディーさんが「広帯域干渉計」についての発表をしたらしいのである。ただレディーさんの知っている干渉計は2003年か4年当時のもので、大阪大学ではさらに改良を加えている。それからレディさんは、相互相関係数の最大値を与える時間差を、受信されたパルス間の時間差として採用、「理想化された時間差法」に拘っていたので、私の定義から言うと干渉計にはなっていない。マレーシアのグループのデータ処理法について、詳しく調べたわけではないけれど、多分レディーさんの手法を踏襲しているのだろう。
一方中国のグループについては、1997年か8年岐阜大学のプロジェクトで中国の奥地で雷放電の観測をした際、多チャンネルディジタルオシロスコープを記録系として利用していた、開発途上の装置を持って行ったら、次の年には同じ仕様の装置を製作していた。それ以来、彼らも「広帯域干渉計」を観測に用いている。
ただ、私が気にしているのは、
「受信機の帯域、その帯域での利得は概ね一定になっているのか?」
という、素朴なしかし根源に関わる疑問なのである。
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2023年05月08日

Ultimate Interferometer 4

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VHF広帯域ディジタル干渉計の観測には、一か所の観測点に三基の受信機がいる。
このことは昨日すでに述べた。
その受信機を広帯域とするために20MHz〜80MHz の帯域で利得が可能な限り一定となるよう腐心したことも述べた。FFTで周波数分解して数値処理するにあたって、周波数に依存して利得が異なるようだと、形式的には「周波数分散」の影響が出て、FFT周波数成分毎の位相差から、到来方向を推定することが非常に困難となる。理想的にはFFT周波数成分毎の位相遅れが、線形である必要があるのだが、このことをわかりやすく言うなら、各アンテナにより受信される電磁パルス波が、すべて同じ形状(少なくとも相似形)でなくてはならないという事になる。ただ現実的には、地形の影響や構造物の影響による多重反射の影響もあって、微妙に異なることが多く、FFT周波数成分を独立変数とする位相差の線形関係は、いつも担保されるわけではない。ここでは詳細には言及しないが、平均値、最頻値、中央値、標準偏差を活用しての最適化を謀っている。
我々大阪大学のグループが、この装置を国際会議で紹介し、同業者に批判を問うたところ、
「それは干渉計ではないだろう!時間差法に過ぎない。」
という酷評や、
「理想化された時間差法と呼ぶべき。」
という親派があった。
そして次の年の国際会議では、
「波形の相互相関係数の最大値を与える時間差を用いれば、数値処理も早い!」
といった装置を製作する海外のグループがいて、「広帯域干渉計」が、雷放電の研究分野で、広く知られるところとなったのである。
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2023年05月07日

Ultimate Interferometer 3

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広帯域干渉計について説明する。
同じ特性を持つ三基の受信機に入力する信号を、三基のアンテナを適当な間隔で配置して受信する。簡単なのは直角二等辺三角形の三頂点にアンテナを設置することだが、必ずしも直角三角形である必要はない。アンテナが三基以上あれば、二基ずつを組み合すことにより、幾何学的には互いに独立な二ベクトルが一組(二つ)定義でき、原理的にはアンテナの設置された地点に入射する放射源の、方位・仰角が推定できる。アンテナの間隔はある程度長い方が精度は上がるものの(波長÷間隔で決まる)、長すぎると波形の相関が悪くなるのでむやみに長くとることはできない。
通常の干渉法は、アンテナからのアナログ信号を受信回路で重ね合わせ位相差を求める(FM受信の原理)のだが、我々の干渉計はこれを以下のようにディジタル的に実現している。
1.受信パルスをFFTで周波数成分に分解
2.FFT周波数成分毎の位相差を計算
3.アンテナ系に対する入射角を決定
4.二組のアンテナ系の入射角から、アンテナ位置への、方位仰角を推定

とはいえ求められる入射角は、必ずしもすべての周波数で一定というわけではないので、平均や分散を求めたりして最適な解を導出するよう配慮している。我々はこれをディジタル干渉法と定義し、受信系や解析プログラムを改良し、今日に至っている。
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2023年05月06日

Ultimate Interferometer 2

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帰還雷撃電流の速度を電光を記録して推定するのに、パルス状の信号波形が最大値をとる時間差によるのが普通だった。ただこの方法だと、電流パルスの形が進行とともに変わらなければ良いけれど、実際に記録されている波形は高さとともに変形しており、最大値が遅れ気味になっていることから、それでよいのかと疑問を抱いた。一方光パルス先端が到達する時間差を基にして推定するという考え方もあるだろうが、その方法だと受光装置の感度に依存するという問題もあり、私個人としてはあの時「速度の定義」に対し問題提起したつもりであった。
以後の帰還雷撃速度に関しての細かな説明は省略するが、その後10年余り経過して、VHF波帯広帯域干渉計の設計・製作に着手した時、
「伝搬とともにパルス信号は変形する」
という、かつての光学観測を思い出した。
確かに雷放電の進展に伴って放射されるパルス状の電磁波は、大気中を伝搬して受信するアンテナに届くのだから、空気による媒質的な分散をほとんど受けないとはいえ、受信信号の増幅に周波数依存があっては同様の問題が起こりうると思案して、広帯域の受信機を実現(VHF波帯で20MHz-80MHz)することに腐心した。これが我々の干渉計を広帯域と修飾語をつけて命名した理由である。その後の改良や最新に近い観測結果も含め、以下順に紹介させて頂くことにする。

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2023年05月05日

Ultimate Interferometer

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端午の節句 子供の日

しばらく専門の話題を提供したい。
我々大阪大学の雷放電研究グループ(Lightning Research Group of Osaka University: LRGOU)が、おおよそ30年の年月をかけて開発してきた、雷放電路可視化装置(VHF Broadband Lightning Channel Imager: VHF LCI)に関してである。ただその源流は、大阪大学工学部の通信工学科で、電磁界理論の研究で工学博士の学位を取得した1970年代にまで遡ることになるので、かれこれ半世紀に及ぶという事になろうか。
1979年春、私は名古屋大学空電研究所(愛知県豊川市)に助手の席を得て赴任した。本来人工電磁雑音の研究をするという事で、採用されてのだが、研究所ほとんどの部門が、自然由来の電波観測を目的としていたこともあって、私は少しずつ研究対象を移しながら、際やがて雷放電の研究に軸足を置くことになった。そして最初に関わったのが、雷撃電流速度の測定で、これは複数の受光素子を並列に配置し、複数の高度からの雷撃電流に伴う発光を受信し、その時間差から速度を推定しようとするものであった。やり始めた頃、フロリダグループのJordan氏がストリークカメラで撮影されたフィルム上のアナログ信号をディジタル化し、記憶に間違いなければ、異なる10高度の発光信号としてJGRに発表していた。ただその内容を見て、電流パルスに比例するであろう光信号が、進行に伴って変形しており、電磁界理論で学んだ「分散性媒質内の電磁パルス伝搬」を強く意識した。

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