2023年05月03日

雷放電の研究 3

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とまぁ、ここまでは概論と夢の話しですが、申請にあたっての現実的な話題を次に提供します。ただその前に、なぜシンガポールの研究者が共同研究の候補者にならないかと言いますと、シンガポールの電力供給はほぼ完全に地下ケーブルですので、大気電気学の権威者はいません。NUSでやっているのは高電圧工学ですが中心ですから、近隣のインドネシアやマレーシアに的を絞った次第です。
インドネシア及びマレーシアは、世界三大雷活動地域(三つの煙突)の一つに属し、一年当たりの雷雨日数はおおよそ200日弱です。ただ雷雨日数と一括りにして扱う事が多いですが、熱帯地域のモンスーンに伴う雷活動と、モンスーンとモンスーンの間の雷活動があるうえ、前者には北半球の夏季にあたるモンスーンと冬季にあたるモンスーンがあって、雷性状が果たして同じなのかどうかは明らかにされていません。さらにこの地域は気象学の分野では海洋性大陸(Maritime continent)に分類されており、大陸型の雷放電活動(あるいは積乱雲の成り立ち)との類似点及び相違点はCAPE(Convective Available Potential Energy)の観点からも観測を通して理解する必要があります。かかる意味でレーザー誘雷をより確度を高くするため、VHF波帯広帯域干渉計(VHF Broadband Lightning Channel Imager)を主たる観測手段、LF帯放電路可視化装置(Lightning Channel Imager: LCI)補助手段として、雷放電活動に寄与する雷雲内の電荷分布を明らかにすることを目指します。さらには、得られた知見をこれまでに知られている大陸型の積乱雲や、我が国の積乱雲(夏季及び冬季)と比較し、レーザー誘雷実現のための指標を示したいと考えております。まだまだあるかもしれませんが、とり急ぎ現時点での可能性です。
最後に先を見越しての内容です。
積乱雲内の電荷分離過程を高い時空間分解能で観測し、雷放電の開始を事前予測しようとするものです。着氷電荷分離の様相の解明のためには、高度方向の温度分布、水分量測定、粒子形状、粒子速度(落下もしくは上昇)の測定が肝要で、これはレーザーという武器で測れるのではないかと考えております。このあたりは、二三か月かけて調査し、秋の科学研究費申請に臨めればと考えております。
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2023年05月02日

雷放電の研究 2

⇒⇒⇒⇒ 投票を願います!雷放電に関する研究は、耐雷・防雷という側面と、大気科学という側面に大別できるのではないかというのが私の持論です。そして科学研究補助金への申請には、大気科学の立場に立っての方が有利かと考えています。加えて大気科学の観点も、「積乱雲の発生及び電荷分離」に始まって「放電の開始、進展」を経て「積乱雲の衰退、雷放電活動の終焉」に至るまでの様々なフェーズがあり、我々の干渉計では、放電の開始(場所、時刻)や放電進展の様相を三次元的にとらえることが出来ますし、電界計の観測と併せることにより放電に寄与した電荷の位置や量も定量的に推定できるようになっています。加えて雷放電の機構を深く理解するため、干渉計の時間精度分解能は、サブマイクロ秒まで高めてあります。しかし残念ながら先に紹介した「積乱雲の発生及び電荷分離」という側面に関しては、干渉計の観測は陽には寄与しないだけではなく、現象自体は分の単位の観測で十分と考えられ、このあたりが雷放電研究の難しいところとなっています。さらに「積乱雲の発生から終焉までは」時間尺度では一時間超ですから、現象論的には、積乱雲活動の理解には時間の分解能が必要であるのに対し、ひとたび雷放電が起こればサブマイクロ秒の分解能が必要ですから、8桁から9桁の開きがあるのです。言い換えれば気象学的な観点からの雷放電活動の議論は、なかなか嚙み合わないというのが実情ですし、そのあたりが雷放電活動の研究および予測の難しさに違いありません。実際テレビ放送の気象予報では、依然として雷放電活動が「あった」、「なかった」の一ビットの情報しか報告されていないことからも、判ると思いますし、雷活動の活発な東南アジアでも、同様と言っても言い過ぎではないと考えてます。たとえ雷雨日数や、雷放電の1平方qあたりの年平均値が求められていることを考慮したとしても、結局情報量としては1ビットなのです。
一方シンガポールに来てほぼ10年、雷活動の多発時期には、毎日のように雷鳴を聴き
「日本に比べて、いかにも活発だなぁ!」
の実感はあります。しかもその雷鳴も日によってまるで異なった印象であることが多いような気がしており、観測手段のさらなる工夫により、学問的に議論を進めることが可能ではないかという、夢のような希望です。例えば「電荷分離機構の様相」を、リモートセンシングできれば、それもサブミリ秒単位で定量計測できれば、雷放電の開始を秒単位で予測できるようになるのではないかと考えています。

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2023年05月01日

雷放電の研究

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LISはTRMM衛星に搭載され10年余り観測を行い、数多くの気候学的成果を上げ、その使命を全うしたと理解しております。その成果の一つが、
「静止衛星軌道に搭載して常時観測を実施し、気象学的に利用することの有用性の実証」
と私は理解しております。その結果NASA やNOAAは静止衛星に電光観測の装置の搭載を実現、Severe Storm の予報、予測(Nowcast)に利用しています。しかし我が国の気象コミュニテーではそこまで機運の盛り上がることはなく、地上観測(レーダー観測)に軸足を置く道を選択したというのが、私の理解です。
各コミュニティがそれぞれの結論に至った一つには、アメリカの場合、気象システム(気団)が陸上を東進、地形の影響を受けながらも、急激に大きく変わることがないのに対し、我が国の場合、気団の東進(移流)は日本海の影響を直接受けるため、電光の衛星観測を頼りにNowcastすることの難しさにあるからだと考えております。
一方私達(阪大・電気系・環境電子工学講座)は、受動的な雷活動観測(干渉計等)と能動的な積乱雲観測(レーダー)に関わってまいりましたので、こういった気象研連の方針をむしろ好機と考え、まずは日本国内での観測を充実させ、続いて東南アジアでの展開を実現しようと考えて、今日に至っております。ただレーダー観測は技術的な難しさはもちろん、費用もかさみますので、狙いとする東南アジア諸国には、受動的な雷活動観測がより有効と考えているというのが実際のところです。
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2022年09月19日

上向き正リーダで開始する高構造物への負極性落雷

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KL(クアラルンプール)に来ている。
マレーシア出張は、先月中旬に続いてで、SATREPSに関係しての出張である。シンガポール・クアラルンプールは、わずか一時間のフライトだから、老人の私にもあまり苦にはならない。とはいえ昨日は朝からの雷雨もあってだろう、クアラルンプール到着が一時間近くも遅れた。日本からやって来る、M君よりは小一時間早くホテルに到着している筈だったのに、逆に30分程私の方が遅くなってしまった。早い・遅いに勝ち負けなんぞあるわけはないが、チャンギ空港で一時間もよけいに待ったからであろうか、何やら疲れが出た気がしている。
そもそも今朝の雷雨、あたり一面白くなるような雨が降っていたところに、いきなりの爆発音、それこそ鉄砲の「バン!」という音に近い。いきなりのと付け加えたのにはそれなりの意味があって、私自身
「これって、近くの高層ビルから上向き放電で開始する落雷じゃぁないのか?」
と、なんとなく感じている。きちんとした観測に基づいての結論ではなく、単に印象というか直観というかなのだが。気取って言うなら、学者の感というべきだろうが、いきなりの「バン!」は、明らかに聴き慣れている雷鳴と違いすぎる。さらに重ねていうなら、
「上向き性リーダーではじまる、高構造物への負極性落雷」
で、なんとしても観測的に確かめてみたいと、強い希望を持っている。
はてさて夢がかないますように。
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2022年08月19日

野外観測の実施

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今は、シンガポールの自宅にいる。
マラッカ界隈を、観測場所や実験できそうな場所を探し回って、雷観測を始めた若かったころをついつい思い出した。名古屋大学の空電研究所にいた頃は、先輩の仲野さんについて行って、あれこれ学んだものだが、大阪大学に席を得てからは、自分の責任で決断する義務が付いて回ったものだ。インドネシアのロケット誘雷、バンドン近くのチアタ村やボゴール近くのプンチャ峠、名古屋大学名誉教授の堀井先生がリーダーだったけれど、まぁ御高齢で諸事決定は、我々に委ねられたものであった。その後のアメリカでの観測、さらには長年に及んだオーストラリア・ダーウィン郊外での観測は、責任は私自身の肩に完全に乗っていた。若い学生さん達と相談はするものの、最終判断は全て自身でする必要があった。
今更ながら、学生さん達にけがもさせることなく遂行できたのは、何にもまして幸運だったというべきだろうか。そしてその観測の成果で、両手に余る工学博士も輩出できた。その半分は新しい道を見つけて進んでいるし、残りの半分は未だに雷放電の研究に携わっている。だから今回のM君のこのプロジェクトは、ある意味私にとって集大成で、手放しで喜んでばかりはいられない。老骨に鞭うって、若い仲間と、さすがに山野は駆け巡れないけれど、可能な限り貢献したいと、改めて自身を鼓舞している。
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2022年08月11日

SATREPS 30

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おおよそ一か月にわたって、SATREPSに至る経緯を紹介したつもり。
過去はともあれ、経緯はともあれ、シンガポールにやって来たのは、大阪大学の研究室で弟子というか仲間というかはさておき、彼らと一緒に作り上げてきた雷放電の観測システムを、東南アジアのこの地域に敷設・稼働し、一般の方々のお役に立ちたいという比較的純粋な動機なのである。紆余曲折は世の常だから、九年間の徒労は徒労とは考えるまい。そして少なくとも五年半は、この地シンガポールを拠点に、まずはマレーシアクアラルンプール、マラッカ界隈での成功例を示し、可能ならインドネシアスマトラ島やミャンマーへの足掛かりとしたい。ミャンマーそう旧ビルマは、シッタン川か河畔で伯父が戦死したところ。インパール作戦という美名のもと、囮となったいくさであったと聞いている。そのビルマに私達の装置が敷設できれば、ちょっと浪花節ながら、格好いい話にもおもえる。
そんな夢はともかく、少なくともSATREPSの五年間は健康に留意し、弟子達の足を引っ張らないようにしなくては
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2022年08月10日

SATREPS 29

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アリスの四匹の仔犬達の満一歳の誕生日。
みんな元気にやってるかなぁ!?


苦節5年、6年と過ぎ、その頃から日本の弟子達とのリモート会議も始めるようになった。
その頃には苦労の甲斐もあってというべきだろうか、マレーシア工科大学とLF装置を一緒にやろうという話がまとまった。ただその途端、新型コロナのパンデミックで、俗にいうロックダウンとなり、せっかくの合意も空中分解となった。
弱り目に祟り目とはこのことだろう。
不撓不屈、それでも諦めることなく、日本の弟子達に加えレディーさんの蒔いた種の実となった、マレーシアのアマールさんやリデユアンさんを加えた勉強会を二週間に一度の割合で開催するようになり、やがて弟子のM君を中心に、SATREPSに応募する手筈が出来上がったのである。
応募締め切りは、確か昨年の11月だったろうか、そして今年の春には申請採択の朗報が届いた。プロジェクトそのものは、来年の4月からスタートする手筈ながら、今はその準備期間で、それなりに忙しくしている。ただ夢の実現までにはもう数年かかる。
コロナのパンデミックのような事態が、また怒らないとも限らない。だからまだまだ気を緩めることなく、日々研鑽そして弟子達に感謝である。

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2022年08月09日

SATREPS 28

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今日は、長崎原爆忌。ちなみにここシンガポールは、ナショナルデー、建国記念日。57歳の若い国である。

SATREPSの話を書き始めて、弟子の恩に助けられたことを大いに感じた。
このインドネシア、マレーシアの国際会議に関しても、大阪大学にやって来て学位を取得して帰国したレディーさんの、いわば種蒔きが、おおよそ10年の時を経て実り始めているに違いなかった。そういう意味で、本当に有り難いとしか言いようがなかった。
そしてこの学会を機に、私は自身だけの努力だけではなく、こういった人脈というか、人と人とのつながりを活用してと思案したのである。
それでクアラルンプールの大学にアマールさんという、私を会議に呼んでくれた研究者を訪ね
「VHF観測装置を用いて研究する予算申請をしよう。申請のノウハウを伝授するし、研究内容についても議論するからと説得、アマールさんは当然大乗り気で、研究者を何人か募ってマレーシアの高等教育省や電力会社に申請をするようになった。とはいえそんな予算申請はすんなりと採択されるわけはなく、それでも毎週の様にリモートで会議をし続けたのである。
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2022年08月08日

SATREPS 27

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明日は長崎原爆忌
インドネシアパレンバンの国際会議から二か月ほど後、私はマレーシアのクアラルンプールに出向いた。今度はクアラルンプールの南に位置する大学からお呼びがかかったのである。親切な同僚ジェレミーさんが、
「私もその会議に出て勉強したいので、車で一緒に行こう!」
と、申し出てくれた。貧乏をしている私にとっては、実に有り難い申し出て、一も二もなく好意に甘んじることになったのは当然である。
そして五時間近くに及ぶ車の旅、会議の前日夕方、無事会場のホテルにチェックインした。そこには主催者のアマールさんのメッセージが届いていて、
「夕食を一緒に取りたいので、待機していて欲しい!」
とのこと、ジェレミーさんとは別行動となった。ジェレミーさんは
「主催者の招待だから、私はついてはいけないよ。」
と、快く夕方の別行動を納得してくれた。
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2022年08月07日

SATREPS 26

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SATREPS に話を戻す。
結局目論見はすべてはずれ、マイケル君への支払いも滞るしまつ。
最後の一か月分は未払いで、彼は怒って帰国してしまった。
この件に関しては、まことに申し訳なく思っているが、ともかくどうしようもなかったのであった。当然のごとく、私のクレジットカードもみな失効してしまった。
さらには、故郷の自宅の電気、ガス、水道も全て止まってしまったのだから、赤貧という他はない状況である。
ただ捨てる神あれば拾う神もあるの諺通りというべきだろう、インドネシアの研究者から
「パレンバンで国際学会を計画しているのだが、講演する気はないか?」
との知らせが入った。大阪大学の私の研究室で博士の学位を取得したレディーさんが、かつてこの国際会議でVHF装置の研究発表をしており、何名かがより詳しく知りたいというのであった。その頃はもうそのレディーさんは中東に移動していて、聞きたくても話せる研究者が居らず、たまたま私のシンガポール滞在を知った、その会議のリーダーが白羽の矢を立ててくれたというのが、本当の所であった。
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