2015年09月24日

USSの防雷対策

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昨日午後セントーサ島に出かけた。
シンガポールのセントーサ島には,ユニバーサルスタジオシンガポールがある。
といっても,決して物見遊山などではない。ユニバーサルスタジオの売り物の一つ,ローラコースターの被雷・防雷について,識者として助言があればして欲しいとの要請を受け,自身でいうのもなんだがおっとり刀で出かけた次第である。その際に詳細は,守秘義務もあり省略するが,この爺が興味を引いたのは,ユニバーサルスタジオ側の責任者が
「雷警報装置を敷設していて,8km以内で雷活動があるようなときには,ローラーコースターのサービスは,中断します。」
と説明されていた点。8kmの根拠は曖昧ながら,落雷事故による被害を防ぐには,全面的に止める以外100%が無く,雷放電の専門家としては,あまり口を挟む必要が無い。ただ,
「8km以上放電路が延びることがありますが,今まで事故はありませんか?」
の問いには,えらくはっきりと否定されていた。とはいえ
「8km以内に雷活動といっても,頭上に雷雲が無く青空が見える場合もあって,そんな時にはお客様の不平・苦情がすごいんです。」
と付け加えられていたのが印象的であった。一般客にしてみたら,過剰防衛に写り不平が口をついたに違いないとはいえ,避雷・防雷には100%完璧は無いだけに,現時点では最上の策なのだろう。ただ自身のThunderstorm Tracking LIVEの活用も何やらひらめいたが,これも守秘義務ゆえ説明はご勘弁願うことにしておこう。
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2015年07月31日

夕立三日

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一昨日までの二日間(28日29日),近畿界隈(大阪大学吹田キャンパスから半径50km以内)は,雷放電活動が活発であった。夕立三日というくらいだから,多分30日もと期待していた。そして案の定昨日午後、吹田から大阪市にかけては、激しい雷活動に襲われた。この雷活動は、結局奈良からさらに南東に移動し、三重県南部で終焉期を迎えた。いずれにしてもまさに、夕立三日である。
余談ながら似たような言い回しに、「梅雨明け三日」というのがある。これは
1. 梅雨明けして三日間は晴天が続く。
2. 梅雨明けして三日間ほどは、あまり天気が安定しない。
と全く異なる二つの意味を持っている。実は梅雨の明け方と、太平洋高気圧の有り様により、年によって1の様なこともあれば、2の様なこともあるといった、落ちまで付く。
さて夕立三日の言い伝えについてである。これは,科学的にも正しいというのが,専門家としての私の理解であり,以下の様に説明申し上げたい。
夕立をもたらす積乱雲(雷雲)は,夏の午後にしばしば発生する。午前中からの晴天による日射で,大地温度が高くなり,大地からの再輻射で大地付近の大気が温められる。これだけでは夕立を起こすような激しい対流活動とはなかなかならない。ただ夕立となるような日には,例えば地上5000m付近の大気は比較的低温である場合が多く,その結果夕立を起こす積乱雲が発生する。さらには上層の大気は数日間をかけて概ね西から東に移動する。それゆえ,
「午前中からの晴天,午後には大地付近の温度高,午後後半からの夕立」
というシナリオが二三日続きやすい。ただ三日もすれば大地から運ばれる熱エネルギーなどで上空の気温も上昇し,大気が上空まで安定した熱構造となるため,夕立が起こり難くなるのである。
つまり夕立三日の言い伝えは,多分先人達の観測感によったもので,いまさらながらに経験則として興味深い。英語ではEmpirical Law とでもいうのだろう。 
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2015年07月06日

Flash density

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数日前に、マレーシア南部の一年間の落雷の資料を手にした。南部といってもまぁかなり限られた領域だし、一年間だけだのことだから統計的にどうの、こうのといえるわけではないけれど、たまには専門の話でもと考え、紹介したい。
プロジェクトの関係で、半径5kmの領域内への昨年一年間の落雷を調べることになった。地元の電力会社の落雷位置標定装置によれば、昨年で67回の落雷、それも全て負極性落雷という報告である。先に統計的に議論できるほどの観測でないと書いたことと矛盾することになるが、それでも半径5kmをよりどころに、1平方キロ当たりの落雷数に換算(Flash density)すれば、0.85/平方キロ/年ということになる。一方以前関わっていたTRMM/LISの雷放電の観測結果によれば、10年以上の継続観測なので、こちらは気候値に近いものになるだろうが、8〜10/平方キロ/年という具合になっている。こう書くと何やら大きな開きに思えるけれどTRMM/LISは対地放電だけではなく雲放電も検出しているうえ、対地放電の検知効率は若干低いのではないかという説もある。対地放電と雲放電の比率は、1:9〜10というのが我々専門家の知るところであることを考慮すれば、LISの求めた単位平方キロ当たりの放電数のおおよそ1/10が落雷数ということになり、電力会社の観測結果による概算と微妙に一致する。偶然にしては出来すぎた結論である。

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2015年06月17日

TRMM衛星大気圏再突入

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ここ数日、雨空が続いている。
というより、毎日雨が降っている。
そしてシンガポールの友人たちは
「雨季だからねぇ!」
と、しらっとしている。彼等にとって、雨降りは取り立てて気にもならないのだろう。
ただ雨季とはいっても、一日中雨空の日本の梅雨とは異なり、雨が終われば日が射して、
「さすが熱帯。」
と再認識させられている。

熱帯といえば、この爺がかかわったTropical Rainfall Measuring Mission (TRMM) 衛星が、今週大気圏に再突入して、インド洋上で燃え尽きたというニュース。6月16日3;55UTC
打ち上げられたのが1997年11月28日午前5時頃で、当初3年の予定での地球観測だったのが、なんと17年間も働いたというから、「孝行息子」だったということになろうか。
正確にいうならこの爺、TRMM というよりアメリカ人友人のHughが開発したLightning Imaging Sensor (LIS) の存在を知り、それを搭載した衛星が日米共同(NASA-NASDA 現JAXA)の衛星として打ち上げられるとの情報を得て、強引にJAXAに掛け合ったのがきっかけであったろうか。LIS の存在を知ったのが1988年のウプサラで、TRMMの事を知ったのが1994年か1995年だったから、実際関わるまでには随分と年月を必要とした。
Hughさんの言い分は
「米日共同のプロジェクトなのに、雷放電研究者が日本側にいないのがおかしい!」
で、そのことをたてに、NASAを通じてNASDAの背中を押してくれた。
日本側のTRMM関係者は気象関連の研究者で、私の専門の雷放電研究・大気電気研究は、彼等からすれば分野外との印象が強かったのだろう。
そんな思い出はともかく、このプロジェクトをきっかけに、私は衛星観測とも深く関わるようになり研究の幅が広がったのは事実である。だからお世話になったTRMMに改めて、合掌
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2015年06月07日

落雷の電流

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私達,雷放電の研究者がお世話になっているというべきだろうか,雷放電の根源である電荷,
「一回の放電でおおよそ10クーロンから30クーロンが中和されている。」
というのが通説である。専門外の御常連様方にはクーロンという電荷の単位がなんとなくよそよそしく感じられるかもしれない。ただ
「ある点(ある面)を1秒間に1クーロンの電荷が走り抜ける場合,1アンペアの電流が流れた。」
と定義されている。
ところで雷放電の電流は,1000分の1秒程度しか流れないので,
「1000分の1秒の間に10クーロンから20クーロン,1秒に換算すれば1000倍の電荷量が走り抜けることになる。だから電流は10キロアンペアから30キロアンペアという勘定になる。」
ちなみに各家庭の漏電ブレーカーは,15アンペアだったり20アンペアだったりするので,雷撃電流の大きさを想像して頂けるであろう?
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2015年06月03日

落雷の範囲

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マレーシア南部のジョホール州Ramuniaに来ている。
当地のプロジェクトの現地調査,現地打合せが目的である。
この地に5km×7kmという矩形の土地に,石油化学系の工場群を建設するプロジェクトがある。赤道近くの土地だけに雷活動も活発で,一度雷雨となれば広大な地だけに逃げ場がない。そして昨年11月頃にとうとう犠牲者が出たということで,この地の雷活動予知及び避雷・防雷のプロジェクトが立ち上がり,我々が担当する事になったというわけである。
ということで,今日の話題はもう一度落雷についてとしたい。
昨日も述べた様に,落雷は一挙に進んでくるのではなく(と言っても我々の日常感覚からいうと一瞬だが)間欠的に前進と休止を繰り返しての進展となっている。さらにその進展はジグザグでかつ,いくつもに枝分かれ(Branching)をすることは,昨日も述べた。そしてその枝分かれは,両端で10km前後,時にはそれ以上にも及ぶことがある。擬人的に申し上げるなら
「何処に落ちようか?」
何ぞと,着地点を探しているとでも言えるかもしれない。そして広がりが10kmあるいはそれ以上にも及ぶということは,
「落雷する可能性のある地点が,えらく広がっている!」
ということになる。
私は周囲に建物の何もない様な平地で雷鳴を聞いたら,
「可及的速やかに建物や車の中に移動して待機するように!」
とご助言を差し上げるようにしているのも,この辺りにある。
即ち雷鳴の可聴範囲は,15km程度だから,先ほどの可能性と併せて考えれば,次の落雷は頭上に来るかもしれないぞという可能性を含んでいると考えるからである。
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2015年06月02日

ステップトリーダ

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雷放電の話題を続けている。
実は,明後日6月3日にシンガポールで,専門外の方々に雷放電の話題を提供する。そんなこともあって自身の頭の中を整理する意味も込めての,ブログでの話題提供なのである。
さて雷放電と言えば,電光と雷鳴,とりわけ電光は,かつてはカメラによる光学観測が盛んにおこなわれていた。そして昨今は一秒間100万コマといった超高速ビデオカメラが比較的容易に手に入るようになり,その利用易さもあってだろう世界中の大気電気研究者により用いられている。取り分け雲の中で始まって大地に向かって下りてくる「落雷(対地放電)」に至る現象,時間にして1秒の10分の1から5分の1,の研究が活発である。我々の専門用語でステップトリーダと呼ばれる現象で,昨日話したように空気は電気を通さない絶縁体だけに一気に進んでしまうということは不可能で,数十m進んでは小休止という型を繰り返しながら,地面に向かってくる。そして通常ジグザグに進んだり,枝分かれをしたりして進んだりするのである。そしてその形からForked lightning 何ぞといったニックネームまで付いている様だが,この命名は専門家の間で必ずしも認知されているわけではない。いずれにしても,そういう風にして進んできた放電の進展が,見事大地に到着した時,目も眩む電光と大地を揺るがす雷鳴を伴って,帰還雷撃電流が大地から雷雲に光速の3分の1程度の猛烈な速さで駆け上るのである。
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2015年06月01日

雷放電について

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雷雲内に十分電荷が貯えられ,その電荷による地上付近での<電界強度が10kV/m程度になると,通常の場合雷雲内ではその100倍以上の電界強度になっていることが多い。ちなみに電界強度というのは,電気的に物を引き付ける力の強さで,単位はV/m 10kV/mというのは1mの電位差が10,000Vであり大人の人の頭と足の間に電圧が10,000Vかかっていることを意味する。通常我々の家庭で使用しているのは100Vであるから,その100倍という事になり,大きいことが判って頂けようか。
それならその電気的に物を引き付ける強さ,電界強度は雷放電の開始するような雲の中ではどの程度かというと,さらにその100倍近くになっているという,観測結果がある。この結果は,ゾンデ(気球)に電界強度を測る装置を積み込んで,雷雲内で実測された平均的な意味での結果であり,場所によってはもっと強くなっている場所があるかもしれない。というのも,室内実験で放電の開始する電界強度が確かめられており,3,000,000V/mが通説となっているからである。つまり空気は極めて電気を通しにくい媒質であり,雷放電はその電気を通さない空気を,一時的に電気を流し得る状態に変えてしまう現象なのである。
この手の話は,専門外の方にはいささかご理解いただきにくいだろう。ただ,高校生の頃に,分子とか原子とかいったことと物理や化学で習ったことを覚えていらっしゃったら,その分子や原子は,プラスの電気(正確には電荷)とマイナスの電気からできていて,通常はプラスとマイナスが同じ数だけあるので中性。中性のままでは電流が流れないので,一時的にせよプラスとマイナスがバラバラの状態になって初めて電流が流れる。そして先に述べた非常に大きな電界強度は,プラスとマイナスがバラバラになる様作用するのである。ちなみに一時的とは,一秒の1000分の1程度だから,日常生活という観点,我々人間の感覚からは瞬きの時間にもみたない程の短時間なのである。
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2015年05月31日

雷雲内の電荷発生は?

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雷が、雲の中の電気現象であることが明らかとなったのは1750年代、ベンジャミンフランクリンの「凧揚げ」による実験であることはよく知られている。ただそれなら、どのようにして雲の中に電気が貯まるのかといった基本的な事については、結局のところ明らかとなったのが、なんと1980年代なのである。「なんと」といった修飾語を付けたのは、
「雷雲内の電気の貯まり方が解明されたのは、まだ30年ほど前のこと。」
という事実は、専門外の方にとってはきっと驚きに値するだろうと、考えたからなのである。
ではそれまで雷放電の研究者達は、どのように考えていたのだろう。
1. 摩擦電気
2. 地上の電荷が持ち上げられる
3. 水滴が外部電界で分極して


といった仮説があり、このうち2番目の「地上の電荷が持ち上げられて!」といった仮説が大いに幅を利かせた時代もあったようである。
私が雷放電の研究に関わるようになった頃には、
「雷雲内で、霰と雪が接触しさらに過冷却水滴がそれに作用して」
という着氷電荷分離機構が実験的に確かめられ、ほぼ決着していた頃であったというのに、依然として地上の電荷が持ち上げられるという「対流説」の信奉者がいた。それも結構著名な研究者の一人で
「河崎君、私の仮説を皆が否定するんだよ。」
と愚痴りながら、山と山の間に電線を張って電荷を発生させて雷雲を作るという稀有壮大な実験を、紹介してくださったのを覚えている。結局「対流説」が否定され、「着氷電荷分離説」が今日のところ、雷雲内の電荷発生を理解しうる仮説となっている。
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2015年05月25日

雷の話

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シンガポール,いやこの辺り一体マレーシア南部,インドネシアなどを含めての東南アジア,世界有数の雷活動日多数地帯である。ちなみに,中央アフリカ,南米を加えて三大雷多発地帯で,世界の煙突との異名がある程である。「煙突」と呼ばれる所以は,熱帯地方だけに上昇気流が半端ではなく,ともすれば成層圏に突き抜ける程の積乱雲が発達し,地上付近の熱エネルギーが成層圏にまで運ばれるからである。さらにいうと,成層圏に運ばれた熱エネルギーが中緯度地帯に運ばれるので,地球規模での熱源となっているのである。そしてシンガポールの雷雨日数は,160日〜180日とされていて,二日に一日は雷雨日という勘定になる。だから,当地の人々は比較的雷活動には無頓着な気がする。被雷すると死に至ることは当然知っている筈なのだが,一方ピカピカゴロゴロやっていても,あまり大騒ぎしない。先日もある工場予定地を訪問した際,ボーリングのためのクレーンが何台もあって,たまたま休息していた作業員の方に
「雷活動が起こったらどうするの?」
と尋ねたら,最初は質問の真意が分からなかった無しく怪訝そうな顔をした。
そしてしばらく考え込んで
「監督から作業中止の命令が来るまで作業する。」
との答え。何せだだっ広いところに30m〜40mのクレーンがにょっきりと立っているのだから,落雷があると避雷針代わりになりかねない筈で,だというのに恐怖心も無い様なのには,驚かされる思いがした。
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