2022年07月26日

SATREPS 15

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2014年暮れの、日本風にいうたら忘年会やったやろうか、現地法人社長の仲介で、Wさんというか日本の本社というかとは、手打ちとなった。手打ちちゅうても、私が納得したんと違うて、
「現地法人の会社として、積極的に販売努力をして、観測網の実現に協力する。親会社の方針転換を、部外者である河崎にあの時点で明らかにできなかったのは、止むを得なかったとはいえ、申し訳なく思っている。」
ちゅう、はなはだ「はかない」協力を含めた説明やったけど、私が鉾を収めへんでいたら、非生産的な交渉だけでは、なんも進めへんからな。
それに現地法人の社長から
「来年4月から、マレーシア南部の石油精製工場の建設が計画されており、そのプロジェクトに、河崎の雷放電監視装置も併せて提案するから、期待して欲しい!」
と、前向きな説得を受け、これには少なからぬ期待が持てそうだったからでもある。
こんな風に書くと、私がシンガポールで交渉だけしてたように思えるかもしれないが、この間現地法人の技術営業と、ブルネイ、フィリピン、インドネシア等々の顧客を訪問して、雷放電や地球温暖化の啓発的講演をして回っていたんや。この講演旅行は、私なりに東南アジアの雷害対策の現状を知る良い機会となったのは事実である。
ともかく2015年4月、担当の若者から
「河崎、マレーシアの会社と契約ができた。喜べ!」
と言われたので、大喜びしたところ、
「防雷システム設計用の、調査依頼の契約」
ということで、この時点では夢の実現はまだまだ先といったところであったろう。
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2022年07月25日

SATREPS 14

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「科学的、技術的な観点から、機能検証のできていない装置の販売に関しての警告を、電気関連学会の重鎮が出したようだ。」
というのが、ちょっとショッキングな情報の内容であった。そしてそのことと関連して、日本の本社の方針が大きく変わった様だというのだが、私にとってはまさに寝耳に水であった。
ただ会社の方針が変わろうが変わるまいが、私にしてみれば成し遂げたいことは
「雷放電の観測網を実現する。」
事にあるのだから、営業方針にあれこれ口をはさむ気も、アドバイスする気もないことは当然である。ただ同じ頃、日本では大手企業のデータ改竄が話題となっており、学者仲間としては、同様の問題として放っておけないと考えたのに違いない。
さて私の懸案事項である。
「何故私の赴任前に、会社としての方針転換を、伝えてくれなかったのか?」
という問いには、いつまでたっても
「申し訳ありません。」
という回答だけで、一向に拉致のあく気配はなかった。
まぁおかげさまでというべきだろうが、議事録だけはどんどんたまった。
それにしても大企業で「偉くなる人」ちゅうのんは、厚顔というべきかな。こうでもなければ、なかなかえらくなれへんのかも知れへん。大学定年してきた爺には正直に対応せんでもええと,鼻でくくってるようなもんや。まぁ爺も64年生きてきてるんで、会社の都合でという意味は理解できるけど、一方では不誠実に過ぎるやろうちゅう気持ちがぬぐえへんかったんや。翌年の夏頃までおんなじことの繰り返しが続いたけど、現実問題としてアメリカ人のポスドクを4月から雇わなならんので、爺の苦労が始まったんや。
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2022年07月23日

SATREPS 12

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私自身を学者馬鹿としか呼べないとでもいうべきだろうが、それでも会社を起こしませんかと声をかけたのは、決して私からではない。それに大阪大学副学長の前で、
「弊社からなら、五億円でも、六億円でも!」
とまで大言壮語したのは、二人の担当者だった筈。
だからこそ、還暦を過ぎた身で決断して、二度目の人生をシンガポールでとやって来たのである。それを
「わが社の体制が、八月に代わりましたから。」
とは何たる不誠実。
私がやって来たのは9月だから、それなら体制が変わった時点で、そのことを正直に私に告げて、
「応援は難しくなる。」
と報告してもらっていたら、私にも考え直す余裕があったと、忸怩たる思いであった。
現地法人の社長は
「何か契約書か、合意文書でもあるのか?」
と尋ねてくれたけれど、そんなところまでは知恵が回っておらず、甘い言葉に誘われてイケイケでやって来たというのが本当の所なのであった。それに翌年度からは、アメリカ人のM 君をポスドクで雇うことが決まっていたこともあり、大いに前途多難を実感させた。
現地法人社長が
「河崎の夢は? シンガポールで金もう受けをして、いい車を買いたいのっか?」
と尋ねたとき
「私達の作った、雷観測装置を東南アジアのこの地域で稼働して、みんなの役に立つこと。」
と答えた。その夢の実現が、このままではできそうにないと、思案を巡らせたのであった。
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2022年07月22日

SATREPS 11

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新しい週を迎えても返事がないので、Eさんにどうなっているのかと尋ねたら、
「社長には返事しておいたけどね・・・。」
と返してきて、
「ただ日本の本社で、先生のお弟子さんが作ると言ってるので、こちらではその結果を見てからというのが現時点での結論です。」
と付け加えた。
「ということはSさんには、作らせないということですか?」
と私が強く尋ねると
「両方で作っても無駄でしょう。」
と、取りつく島が無かった。
Sさんにそのことを告げると、
「私から社長に直接言ってみる。是非作りたいし、雷の観測も実現したいから。」
と前向きな答えで、私は事態の好転を心待ちしたが、前向きな答えは結局やってはこなかった。
そうこうするうち、月に一度はやって来るというWさんがシンガポールにやってきた。
私にしてみれば満を持してといった按配で、Wさんに時間を作ってくれるようお願いし、二三日後に、話し合う機会を持った。
私は事業部長の私に手伝えという申し出や、部長が大阪大学にやって来て副学長の前で提案されたことを時間をかけて話したうえで
「ベンチャービジネスを立ち上げようと仰ったのだから、数億円とは言わぬまでも、干渉計をより安定したシステムと作り上げるための、5千万円程度の出資をお願いできませんか。マッチングファンドとして阪大からも同額程度出資してもらえるでしょうから。」
と、申し上げた。
「この件は、日本に持って帰って相談してきますが、事業部長以下他の部署に代わる等して、方針転換されてますから。」
という、極めて否定的な答えであった。
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2022年07月21日

SATREPS 10

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S女史は30代前半の技術屋、大学を卒業して直ぐに、マレーシアにあるアメリカ系の半導体メーカーに勤めていたと聞かされた。その後、大学で同級生だったというL女史にヘッドハンティングされて、私の居るシンガポールの現地法人に移って来たということであった。昔風にいうならL女子は強電系の技術者、Sさんは弱電系の技術者であった。それにもう一人YさんというIT 含め電気一般に長けた男性社員が居たが、Sさんだけは
「将来は、研究者になりたい!」
という意思を持っている風で、自身の職務(マイクロコンピュータ制御のアレスター設計)の暇な時を割いて、LFの雷位置標定装置のセンサー部{受信系}の製作に関わった。受信系は簡単なだけに一か月もしないうちに完成、オシロスコープを記録計替わりにつないでみたら、面白いようにトリガーできて、雷放電に伴う電界変化波形が記録できた。
それならということで、社長に
「受信系が出来そうだから、取り敢えず記録計を一台買いたい。」
とお願いしたら、
「河崎の必要費用は、Eさんの決済になっているから彼に言ってくれ。」
との返事で、
「あんさん社長やろう。それくらい二つ返事で許可してくれよ!」
と言いたいというのが本音であった。それで隣の席のEさんに
「S女史に受信機をお教えして、LFシステムできそうですよ。試しに一機完成させたいので、AD変換器買ってください。これがその仕様書兼カタログです。」
とお願いしたら、
「二三日内に現地法人社長とも話して、返事します。」
との要領を得ない返事であった。
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2022年07月20日

SATREPS 9

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10月の初旬、弟子のU君やM君、それに兄弟弟子にあたるF君が中心になって、退職記念パーティーを開催してくれた。思いのほかの盛況で、名古屋から堀井先生も参加してくださった。なんといっても目玉は、アラバマからのヒューさんであったろうか。大阪大学に移って准教授だった頃の卒業生も、ほとんど参加してくれていたのには大いに感激した。記憶に間違いが無ければ、今も懇意にしている「かっちゃん」も参加してくれていた。ただ少し残念だったのは、まいど衛星で一緒に苦労した青木さんがいらっしゃらず、御子息が代理で来てくださっていた点であったろうか.
それにシンガポールで
「参加させてもらいます。」
と仰ってくださった、本社の部長さんとUさんが約束通り出席してくださっていた。そのほか名古屋大学当時の仲間達も沢山参加してくれていて、パーティーは大いに盛り上がった。そのパーティーのお開きが近づいたころ、本社からの二名が近寄って来られ、
「我々二人は、これから茨城県まで帰らなくてはなりませんので、少し早いのですが失礼します。話は変わりますが、我々側の体制が8月にすっかり変わり、私達二人はあまりお手伝いできなくなります。シンガポールで紹介したWさんがシンガポール担当ですので、よろしく。」
と念を押されて帰って行かれた。
パーティがお開きとなり、皆三々五々帰っていた。その後20人ほどが未だ残っており、ホテルのレストランで今度は私が主催になって、二次会と相成った。その二次会も11時を過ぎる頃にはお開きとなったのでは、無かったろうか。
ともかく翌週早く、私はシンガポールに戻った。
そしてとりあえず、LFシステムの製作をと考え、マレーシア人のS女史に受信機の回路や、AD変換器の仕様を教え始めた。
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2022年07月19日

SATREPS 8

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9月20日には私の長期滞在ビザも取れたので、日本に一時帰国し本格的な赴任の準備をしようと考えた。それに私の退職記念パーティーが、10月の初旬に大阪市内のホテルで開催して頂く計画になっていたので、どうしても一時帰国をしないわけにはいけなかった。ただ気懸りは本社からやって来たWさんとは、なかなか話をする機会が持てなかったことであった。会社に出勤してきても、社長と話し込んでいるので、その後にと考えていたら、知らないうちに出かけてしまっていることが多かった。
「まさか意識して話し合いを避けているちゃうやろし。忙しいんやろうからしゃぁないか!」
と気楽に考えていたら、例の大阪大学に来られた部長さんから
「河崎先生。私達は明日の夜便で帰国します。Wさんとはまだ話してないですよね。今回は我々側の引継ぎが主目的できますいたもので、ただWさんはこれからも月一回程度の割でシンガポールに来ますし、次の機会にゆっくり話せるように、伝えておきます。あそうそう先生の退職記念パーティーには、私とUさんは出させて頂きます。」
と告げられた。
そして私は彼らの後を追う形で、日本に戻った。
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2022年07月18日

SATREPS 7

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雷放電の野外観測は、シンガポール島の西端に近いChao Chu Kang 墓地の一角で行われていた。都合の良いことに、墓地の中には東西、南北それぞれ100m程度のほぼ正方形の空白地があり、そこに70m〜80mほどの間隔をおいて高さ50mの二つの鉄塔が建てられていた。その鉄塔に避雷針を装着、あれこれ性能を確認しているということだった。
私があきれたのは、鉄塔間に感覚5m程度で電界計を「稠密」に設置していたことで
「こんなに沢山配置しても、無駄やんか?」
という私の指摘に
「デジタルでデータロガーに記録してますから。」
という的を得ない答えが、自信満々で返って来た。
そもそも雷雲内電荷の作る地上での電界強度を測るべく設計された装置なのだから、数メートル離して測定して何が判ると考えての観測なのだろう。数メートルの間隔なんぞ、雷雲大きさからみればほとんど同じ点で、確かに草木などからのコロナ放電による電荷軍の影響も受けるだろうが。
後日談ながら、これら30台近い電界系は、10ヘルツサンプリングで24時間記録しており、数か月毎に観測結果を再生していた。長い時には一年間分を月毎に出力していたようで、デジタル記録の恩恵なんぞ全くないというのが私の実感であった。ただ彼らはデジタルデータをプリントアウトしてそれぞれを比較し
「この時刻に雷雨があったようですね。出力の傾向は皆同じですね。」
と妙な納得をしていた。私は社長に
「なんか無駄な事やってるなぁ。誰があの観測計画したのですか?」
と尋ねても
「日本の本社。私はあずかり知らないのだ。」
との返事しか返ってこなかった。
そして翌年の日本の夏を迎える頃、岐阜大学の王さん一行もやって来て、光学観測、早い話ビデオカメラでの記録に参加することになったのだが、結局のところ大した成果もなかったように記憶している。
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2022年07月17日

SATREPS 6

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当初は生活の準備に二三週間のつもりでシンガポールにやって来たのだが、あれこれビューイングして職場の近くのマンションが気に入ったので、五日目には契約することにした。とはいえ、思いのほかの展開で、給与の中から家賃を払うことになると知って、大いに困った。まず契約金が馬鹿にはならない。社長にそのことを告げると極気楽に
「じゃぁ、貸しておくよ。」
と小切手を切ってくれた。私にしてみれば、何やらだまし討ちにあったような気がしたので、経理の女性には
「これは私の借金ではなくhostage(人質)みたいなものだ。」
と伝えたけれど、真意がよく伝わっていなかったようであった。
ホテルも結局自腹らしいので、早速契約したマンションに居を移し、シンガポールでの生活を始めた。有難いことにというべきだろうか、マンション自体は俗にいうfurnished(家具付き)で、独り暮らしの不便ささえ我慢すれば、一応快適であった。
マンションに移って数日したころ、日本の本社から数名の社員がシンガポールにやって来た。その中に大阪大学にやって来て、ベンチャーを立ち上げましょうと提案した部長さんもいたので、性急かなとも考えつつ、
「シンガポールでの研究について、話し合いたい。」
とつげると、
「私はその任から離れた。同行しているWさんが今後対応する。」
ということであった。そして
「先生のお弟子さんの岐阜大の王先生が、雷の観測のためにシンガポールにいらっしゃいます。」
と付け加えた。そして翌日、私達は日本の本社が進めているという、野外実験の場に出向くことになった。これまた私にとっては、
「なんや観測をもうやってるんかい!」
と驚きであったが、続きは明日に。
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2022年07月16日

SATREPS 5

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翌日から私は、数年間は住むであろう住居を探し始めることにした。
日本有数の電気機器メーカーの子会社とはいえ、シンガポールの現地法人は総勢20名余りの小さな会社で、住宅探しは経理担当の女性が
「エイジェントに連絡しましたから、明日にでもビューイングに行きましょう。」
との事。そして
「一か月どの程度の予算ですか?」
と尋ねられたのには、
「おいおい、手伝えという要請で来てるのに、家賃は会社持ちではないんか?」
とも考えたけれど、
「まぁお願いしてある給料でなんとかやれるやろう!」
と、相も変らぬ能天気・気楽蜻蛉が私の背中を押していた。
実は前年の9月までの二年間、これはJICAの要請でアレキサンドリアに赴任した経験から、住宅や携帯電話は支給されるものと、思いこんでいたというのが本当の所であった。
早い話携帯電話は、アレキサンドリアに到着した当日に支給され
「急ぎの連絡はこれで。担当者の電話番号は登録してありますから。」
といった具合であったからでもある。だから住宅ビューインの予定を聞かされた後、私はごく自然な気持ちで、携帯電話はどうすればいいのかと尋ねたが、経理担当の女性は当惑気味に
「私にはわかりません。」
と答えたのである。
その日の夕方、人事担当の男性社員が契約書を持ってきて
「河崎と弊社の契約は二年契約で、その後二年ごとに見直します。内容を読んで、サインしてください。」
という。私にとってはこれまた初めての経験で、
「会社勤め、とりわけ海外の会社の場合こうなんだ。」
と考えながら、契約書に目を通した。給与は口約束では米ドルということだったのに、額面は同じ数値ながらシンガポールドルになっていた。
「シンガポールドルだと約束の3分の2になるので、話が違う!サインはできない。」
と答えると、
「本社からの指示です。私には書き換える権利はありません。」
と返って来た。ともかく契約書を読んでみたけれど、当然のように住宅や、電話に関しての記述のあるわけがなく
「携帯電話は支給されないのか?」
の問いには、個人負担との回答、にべもなかった。そして
「形だけでもサインして欲しい!でないと私が困る。」
との人事係の言葉に、私はついほだされて、
「それじゃぁ、サインはするけど、あれこれ細かい点で齟齬があるので、その点は覚えておいて欲しい。」
とサインしたのであった。
今になってみれば、というよりそれから僅か二年後に、私は地団駄踏むことになったのであった。

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