2019年08月21日

双方向性リーダ3

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いずれにいしても、状況証拠では科学にはならない。
なんとしても正のブレークダウンを可視化したい。ただ単極性のリーダ進展の観測から、放射されるVHF波の電波強度が、負の方が正より20dB強いことが明らかになった。早い話、負の方が正より10倍も強いのである。都合の悪いことに、これらがほとんど同時に放射されているので、負からの放射波が正からの放射波を完全にマスクしており
「これやったら見える筈ないやんか!」
と気付かされたのである。
「同時言うても、少しは差もあるやろうから、思い切って広帯域受信したらどうやろう!」
と考えた。広帯域受信なら、多分マイクロ秒程度の差程度なら見えるんちゃうか?」
と考えた。さらに1990年代も半ばとなってデジタル干渉計の実施がパソコンなどでも簡単にできる時代となっていたので、現実的だと考えた次第。それに広帯域受信だと、煩雑な受信機の設計は必要ない。設計が必要ないということは、メンテナンスも必要なしということで、装置としては随分と簡単になるのである。
ただ依然として、信号でトリガをかけて観測を実施するという、ディジタル信号処理の基本から抜け出せずにいたのが、とんだ考え違いだったと言ことになるのだが、それはまた明日にでも。
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2019年08月20日

双方向性リーダ2

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もう数日専門すぎる話を続けたい。
正リーダと負リーダに関してのわだいである。
まず光学的に観測したと申し上げた。それに双極性リーダ進展に関しても申し上げた。これは専門外の方にはいささかご理解頂き難い内容乍ら、
「空間の一点から放電が開始するとき、開始点の電荷を保存するという物理法則を認めるなら、正リーダと負リーダが同時に互いに逆方向に放電進展をかいしする。」
という仮説で、観測的に検証されない限り、仮説なのである。
ちなみに光学的に正負リーダを観測できていたのは、ロケット誘雷実験や福井県三国の地上高200mの煙突などから上向きに開始する放電を利用しての観測で、これらの場合金属(導体)から放電が開始するので、単極性のリーダ進展となるからである。ちなみに光学観測は、最初アナログ記録して、波形を再生しながらという古色蒼然なやり方であった。1980年代のことで、その頃からディジタル技術もかなり普及してきて、1980年代後半はディジタル記録に移行していった。
電波計測である。
まず取り組んだのは、VHF波帯の広帯域干渉計。これはフランスやニューメキシコグループの装置のデッドコピーに近かった。早い話丸写しだったのである。これはたん観測結果と併せての比較で、状況証拠乍ら
「この辺りに正のリーダ、正確には正のブレークダウンがある筈だ!」
という辺りまで研究を進めることができたものの、狭帯域の干渉計では正のブレークダウンを可視化することはできなかった。
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2019年08月19日

双方向性リーダ

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数日前の話題、雷放電の正負、正確には正リーダと負リーダの進展に関してである。
そしてれらはすでに1980年代に光学的に測定されていて、それぞれ10の5乗m/秒及び10の6乗m/秒と知られていた。さらにこれらの値は、室内実験による超ギャップ放電で確かめられている値と矛盾はしないのである。だから、何をいまさらという向きもあろうが、現実には大きな問題を含んでいて、光学観測では解決しえなかったのである。
室内実験と異なり、自然の雷放電は金属導体などないわけだから、どこで雷放電が開始するにせよ、その点の電荷が保存されねばならない。そのため自然の雷放電は、双極性リーダで開始する必然性があるのである。つまり、正のリーダと負のリーダが放電の開始点から、互いに逆方向に進展するということが起こっている筈であり、となると光学的観測では本当の意味で観測できないのである。すなわち放電の極性を考えるなら、電波観測以外にはあり得ないのである。
いやはや専門過ぎて、ご常連様にはご理解いただき難いかもしれない。(この稿続く)
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2019年08月17日

正のリーダと負のリーダ

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久しぶりに雷放電の話題である。
電荷には正と負のあることはよく知られている。
いや正確に言うと、正の電荷存在しないので、負電荷が何らかの理由で持ち去られ、電気的に正となっていることを、慣例上正の電荷と呼んでいる。雷放電物理の場合、微視的な観点ではなく、巨視的な立場に立って議論するのが普通で、以後便宜上正の電荷、負の電荷という記述で話を進める。
雷雲は、これまた大雑把に言って、正と負に分極した状態にあり、−10度の高度付近に負電荷領域が、それより高度の高い気温の低い位置に正電荷領域のあることが知られている。そして負電荷も正電荷も落雷を引き起こすことも、今日ではよく知られている。確かに高度の低い負電荷の落雷の方が圧倒的に多く、季節や地域に依存するけれど5倍から10倍負電荷の落雷の方が多いのである。
実はこの爺は雷放電に関わるようになった初期のころから、落雷に至る負のリーダや正のリーダの違いを明らかにするための、観測的研究に携わってきた。光学的な測定が最初、その後電波計測へと手段は変わってきたけれど、正の放電と負の放電の違いを解明したいいまだに取り組んでいるのだから、進歩がないと自嘲義気である。まぁ定性的にはあれこれ知見も増やしているので、そう卑下するほどのこともないという慰めの言葉も、腹の中に在ることは在る。
実は1988年夏、私は解放前の中国で三か月弱過ごした。その時の講演の内容が光学的に測った、正負リーダーの相違であったと記憶している。その折中国科学院蘭州高原大気研究所のW先生が、
「巨視的立場からだと差がない筈。理論的にどう解釈できるのだ?」
と、熱心に議論してくれた。
そんなことをふっと思い出していたのは、先日シンガポールにやってきた弟子のY君が、最近の論文を送ってくれて、早速読ませてもらったからかもしれない。
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2019年07月14日

避雷の相談

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金曜日、本当に久し振りに旧友のY君からSNSが入った。
「知り合いのSさんの太陽光に落雷した。避雷を考えている。というのも修理は保険で賄えるけれど、修理完了まで売電ができなくなり、その間のマイナスが・・・。」
という内容。
そしてほどなくSさんから、落雷による被害状況の写真や、太陽光パネルの設置図面などがメールされてきた。図面によれば発電容量はおおよそ4500kW で、敷地は少なく見積もっても200m×200mはある。
「こりゃぁ、思っていたより広いなぁ!」
というのが実感。4500kW の発電容量といえば、日照時間8時間として36000kW時の電力量が期待でき、電力の売り上げ量も結構なものであろう。だから修理までに一月かかるとすれば、
「こりゃぁ避雷対策したくなるわなぁ!」
と考えた。
完全な避雷をというなら、50m毎の避雷針建設ということになるのだろうが、それはいかにも現実離れした答えで、現実的な数の避雷針設置がよかろうと判断とりあえずの目安をメールしておいた。
ただ偶然とでもいおうか、当地の同僚がたまたまこの週末日本に帰っており、
「一度相談にのってやって!」
と急ぎの連絡をしておいた。
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2019年06月27日

雷放電とガンマ線

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インターネット版朝日新聞を読んでいたら
「雷の卵発見、ガンマー線放射を観測」
という見出しを見つけた。
「何を今頃いうてんね。こんなん2000年初頭の研究題材やんか!」
と、いささか不愉快になった。
それにしてもマスコミ報道もレベルが低くなったものだ。四半世紀も昔に話題となった研究を、まるで目新しい研究でのあるかのごとくに記事にし、読者の関心を煽るとは。いやそれとも記者さん日頃の不勉強で、本当に新発見と信じているのだろうか?それだとしたらますます深刻な話である。
そもそもながらこの研究は、恥ずかしながら「雷放電の開始」に関してのきちんとした理解のないことに起因している。古典的には、雷雲内の電界強度の強い箇所、例えばどがった霰の先端であるとか、の理解があり、
「いやそれでは、室内実験で確かめられている絶縁破壊強度にはとても足りない!」
との反論もあって、1990年代の中ごろから二次宇宙線説や、地中からの放射線等々のいわゆる「高エネルギー」起源説が唱えられ、観測的に検証をとの機運が盛り上がった。その結果が先に述べたガンマー線放射の観測で、あの頃の活況はすごかったのである。
ただ我々の知りたいのは、放電開始の機構で、「高エネルギ」起源なのか、高電界起源なのか、あるいは「ハイブリッド」起源なのかで、放電に伴ってガンマー線やX線の出ることは、私が雷研究に携わるよりはるか昔から知られていたのである。言い換えれば、いまだに雷放電の開始機構がきちんとして理解されておらず、まぁそれはそれで我々専門家の力不足なのだが、いつの間にやら何を確かめたかったのかが吹っ飛んでしまったための、新聞報道騒ぎというのが私の理解である。
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2019年06月15日

土曜出勤

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久々の土曜出勤。シンガポールにきておおよそ6年。この間土曜出勤は、多分十指に余る。阪大に在職中話を、土曜日は殆ど研究室に出向いていた。それどころか、午前七時出勤、午後十一時退室といった具合で,裁量労働制だったからいいようなものの、残業時間月200時間なんて普通であった。というのは、あの頃は常時博士課程学生を数名は抱えており、一度議論が始まると、半日程度費やすことも多々あり事務作業を処理するのに就業時刻前の二時間が貴重だったのである。
話がわき道にそれてしまった。土曜出勤の話である。
懸案だったプロジェクトがようやく実現できそうな雰囲気になってきており、その打ち合わせのため、関連する数名が集まっての会合が、今日なのである。ただ今まで何度もぬか喜びの憂き目にあっており、
「下駄をはくまでは!」
と、ふんどしを締め直し会議に臨んでいる。
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2019年06月05日

地球温暖化と雷活動 3

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エルニーニョの発生は、地球の温暖化の影響は何らかの形で受けるのだろうが、温暖化そのものでないことは当然である。だから一昨日の内容を、短絡的に温暖化と結びつけているわけではない。ただ一方で、温暖化を考える上の一助になるかもしれないと考えたのも事実である。加えてレーダ観測と雷放電の観測が、同一の地域を秒の単位で同時に観測ができるというのは実に有り難く思われた。というのも雷放電そのものは一雷撃一秒か二秒程度、一方地上設置のレーダでなら一度スキャンするのに、フェーズドアレーレーダであったとしても30秒はかかるため、秒単位まで時間を一致させて観測することは、よほど運が良くない限り起こらない。それがこのTRMM,LISではいとも簡単にできているのである。
話がついわき道にそれてしまったようだ。話を本題に戻すなら、雷放電の起こった瞬間の、さらには放電している場所の、積乱雲の立体構造がほとんど全ての雷放電に関して得られているのである。解析を担当してくれたエフリナさんは、そんな雷雲の立体構造と雷放電を一つずつ比較し、
「この間の雷放電数は通常年より多いけれど、それらは雷雲の高く発達しているときに集中している。雲頂の低いときには、雷放電は起こっていない。」
という報告をしてくれたのである。このことはある意味ちょっとした発見なのだが、温暖化が進んで積乱雲がより高く成長するようになると、雷活動もより活発になるという傍証にはなるに違いないなんぞとも考えたりしたのである。
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2019年06月03日

地球温暖化と雷活動 2

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昨日の話を続けよう。
エフリナさんは、バンドン工科大学からの留学生で、最終的には工学博士を取得されて、母校の講師に戻られた才媛で、今でもコンタクトを取り合っている。
そのエフリナさん、データ処理が得意だというので、当時NASA-JAXAの共同プロジェクトとして打ち上げられたTRMM (Tropical Rainfall Measuring Mission)のセンサーの一つLIS (Lightning Imaging Sensor)の解析をお願いしたのであった。
都合のいいことにというべきだろう、1998年から続いたエルニーニョが終わって、通常通りの状態に戻っていたので、
「エルニーニョ時と通常時に比較ができるよ!」
と、解析を進めた次第。
エルニーニョ期は太平洋西部のインドネシア付近は、降水量の減ることが知られており、
「雨がなければ、雷活動にはならない。」
ことから、エルニーニョ期すなわち雷活動低調と予想していたのが、エフリナさん曰く
「エルニーニョの時のほうが、雷活動がかえって活発なんです。何度も見直してみましたが、プログラムには誤りはありません。」
と、頭を抱えながらの報告であった。この爺も一緒になった検討してみたが、解析の手順は正しいようで、
「それならRADARも調べてみよう。」
ということになった。降水の頻度事態、これは予期されたように、平常時に比べエルニーニョ時は、随分と少なくこれまでの知見と矛盾しない。しかしやはりLISの結果と矛盾してしまう。そこでLISとTRMMを併せて詳細に検討してみると、雷放電の活動は積乱雲が非常に高く成長しているときに集中しており、
「エルニーニョ時降水活動は、一般的には低くなるけれど、ごくまれに非常に高高度まで積乱雲の成長することがあり、その際の雷活動は尋常なものではない。」
との結論を導き出せた。早速米国の関連学会誌に投稿させたのは当然である。

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2019年06月02日

地球温暖化と雷活動

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先日、一緒に仕事をしている仲間が急に
「地球温暖化で雷活動がより活発になっているのかなぁ。この辺りは石油会社がおおいし、製油所も落雷の被害には敏感だから。」
切り出してきた。
ちなみに一緒に仕事とは、私がBOLT(Broadband Observation network for Lightning and thunderstorms)と呼んでいる雷活動の監視装置の一部を製作してくれている仲間で、最終的にはBOLTを何としても稼働したいと協力し合っている仲間である。ただこの仲間、技術的なことには興味を示す反面、雷放電物理そのものには、今まであまり興味を示す風ではなかったし、関連する論文を渡しても反応が乏しかったので、技術的な興味で協力してくれているのかと、考えていた。だから冒頭の質問には、本音で驚かされる思いであった。
まぁそんなことならと、まずは新世紀になったころ、エフリナさんの解析したエルニーニョ時と平常時の雷放電活動、降水活動の比較結果を話してみた。それが意外な食いつきで、これなら物になるかな何ぞと、またぞろ元大学人の興味がわいてきた次第である。ちなみに御当人はやはり
「博士の学位を取りたい。」
と仰っていた。
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