わて昔、競争的資金の審査っちゅうもんをやったことあるんや。
まぁ国立大学の教授で、まともに研究と教育をやっとったら、定年前の十年くらいには、だいたいそういう仕事が回ってくるもんや。いわゆるピアレビューっちゅうやつやな。
そのときわてに仰せつかったんは、二次審査委員会の副委員長いう役目で、一次審査、つまり書類審査の結果を受けて、「採る・採らん」を最終的に決める面接審査をやる、ちゅうのが使命やった。
正確な数はもう覚えてへんけど、応募が二百件を超えてて、一次で四十件ほどを通して、最終的に二十件前後まで絞り込む、っちゅう段取りやった。
一次審査では五人の委員が、それぞれ独立に評価して四段階でランクつけする。ほんでその結果を合計して、順位づけした一覧が二次審査委員会に回ってくる。せやから機械的に上位四十件を対象に面接すりゃええ話なんやけどな。
そしたら委員長が言いはったんや。
「じゃあ、上位四十名に限って面接すればいいですね?」
そしたら、ある委員がすかさず動議を出してきよった。
「五十位に○○大学の◇◇先生の申請があります。この先生はこの分野の大御所ですし、今回は少し多めに面接してもよろしいのでは。ぜひ直接お話を伺ってみたいです。」
要するに、大御所の先生を一次審査落ちのままにはせんとこう、ちゅう話や。
誰も反論せぇへん。むしろ当然みたいな顔で、「ほな今年はちょっと多めに面接しましょか」っちゅうことになった。
──これこそまさに忖度やろ。
ほんで、もうひとつ続きがあるんや。
ひと月ほどたった面接審査当日。
委員長がいきなり言いはった。
「面接審査は、通常は一次審査の点に面接点を加算して順位を決めますが、今回は今日の発表内容だけで順位付けを行います。」
──おいおい、それ言うたら大御所持ってきた意味そのままやないか。
面接点なんぞ忖度の極みや。こうなったら採択間違いなしっちゅう筋書きや。
案の定、その大御所の申請は無事採択されたわ。言うまでもない話やけどな。
クリックして読後の投票を!



