昨日午前,春日原生林を歩いた。
奈良市在住の友人達が,週末にジョギングを兼ねて若草山に続く原生林の林道を走っているという話を聞き,
「まさか還暦過ぎのおじさんが一緒に走るわけにも行かないので,後から付いて歩いてみたい!」
と申し上げたら,
「林道の入り口付近までは自転車で付いて来て,後は判り易い路だから一人でゆっくり上ってくれば。」
と,参加を認めて下さった。私の決意は,足手まといにならない様にすること。ただ一口で林道の入り口付近までは自転車でと簡単に仰ったけれど,奈良の街は東にある若草山に向かって緩やかな上り坂となっており,彼等の走りについて行くのは,なかなか容易ではなかった。さすが日頃走り慣れていらっしゃるだけあって,ジョギングウエアの衣擦れの音が規則正しく耳に響いてくるものの,私は自転車でおっかけるので精一杯であった。さらに高畑界隈を通り過ぎれば,上り坂がますます急となり,とても自転車にまたがっては進めなくなる。止むを得ず自転車を押しながら坂道を登れば,やがて林道の入り口に到着。その地で待って下さっていた友人が,
「ここからは一本道です。自動車も緊急用以外は通行止めです。この道をどんどん進めば,最終的には若草山側からのドライブウエーの終点辺りにまで行けますから,一人でゆっくり無理をせずに上って来て下さい。」
とだけ言葉を残して,走りだした。そして背中はみるみる小さくなり,九十九折りの角を曲がって,私の視界から消えた。私は,一本道ですの言葉を頼りに,林道をひたすら歩く。林道の脇には樹齢何百年もの杉の木が林立しているかと思えば,はたまた斜面に朽ち果てて横たわっているのもあり,さすが春日原生林の印象が強烈。それに時折さわやかな風が吹き,花吹雪の洗礼を受けながらの山歩きは,陳腐な言い回しながらドラマチックなの形容がぴったり。色々な木が混じって,原生林の名にふさわしい。さらに風情を盛り上げるのは,思い出したように啼く鶯の声,山の中の鶯だからであろうか,ホーホケキョが実に見事で,春先の鳴き声とは隔世の感すらある。

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