2022年12月18日

雷放電の観測 16

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VHF波帯干渉計の国際デビューは、ダーウィンの沖北80qのアラフラ海に浮かぶメルビル島だった。日米の共同観測という企画で、アメリカ側はNSFに、日本側は文部科学省にそれぞれ申請してのプロジェクトであった。かつて話したこともあると記憶しているが、アメリカMITのウィリアムさんと、NOA NSSLのマズールさんから、
「熱帯収束帯の降水メカニズム解明のため、気象学者が大がかりな観測を行う。私達は、雷放電の観点から寄与すべく、申請する。河崎さんも日本の雷放電物理の研究者の立場で申請したらどうだ。」
と、誘われ申請し採択された。しかしウィリアムさんやマズールさんは採択されず、現地では初対面の気象関連研究者のお世話になることになった。当時まだハワイ大学で教鞭をとっていらっしゃったはずの高橋教授がアメリカ側の一員だったので、少しは心強く感じたけれど、結果的には観測期間中に議論できたのは三四回だけだった。
メルビル島の観測には、岐阜大学の助手になっていた、WDさん、博士課程を中退して研究室の助手になっていたFTさん、博士学生のWMとOJさんが参加して、メルビル島にVHF波帯干渉計を設置した。メルビル島にはダーウィン空港からヘリコプターにぶら下げて、500s程度の観測装置を空輸した。雷雨で予定より一時間程遅れたけれど、ガーデンポイントのヘリポートで待っていたら、羽の回転する音が遠くから聞こえ、無事観測器を受け取った時には、ある種の感動を禁じえなかった。
アメリカの気象研究者たちが、観測場所をメルビル島に選んだのは、ヘクターと呼称される巨大積乱雲が発達し、それが対流圏界面を突き破るほどに成長することから、地球温暖化にも関係する熱エネルギーの、赤道帯から中緯度帯への輸送が科学的に興味深いという点であったと聞いていた。ただ一か月近くの観測期間では、この年ヘクターはそんなにも発生せず、干渉計の成果としては芳しいものではなかった。
そんなわけで翌年からは、観測場所をダーウィン郊外へと移し、アメリカのグループは来なくなってしまったけれど、私達はダーウィンでの観測を毎年のように根気よく続けることになるのであった。
(この稿続く)
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2022年10月27日

涼しいシンガポール

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シンガポールに戻って二日経過した。
今年のシンガポール、この時期にしては涼しい。
例年だと11月の中頃から雨も多く、日本でいう梅雨寒といった陽気になるものだが、
「気象は常に異常である。」
の名言通り、今年はそういった季節の到来が、ひと月近く早いようだ。
何度かこのブログにも書いたように、今年のラニーニャ現象が原因で、お天気の神様のちょっとしたいたずら心のなせる業なのである。
ご存じのように、地球は自転しており、その地球が完全な剛体ならお、天気の神様のいたずら心はありえない。しかし海洋は液体、地上は気体と、構成が複雑なうえに,地表面の複雑形状が規則性を乱す大きな要因となっているのだろう。
ともあれ今日はその涼しさ、心地よさを有難く考えている。
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2022年10月25日

シンガポールへ

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昨日、今回の日本滞在中の最後の眼科検診に出かけた。
手術後右眼で一週間と一日、左眼にいたってはわずか五日、これで今日午後日本を離れようとするのだから、いささか強引に過ぎるだろうかとも思う。だからこそ主治医にもう一度診てもらってというのが本音なのである。
確かに、白内障の手術は近年簡単になっており、私の場合左右とも30分未満で処置が終わっており、術後二日目には眼帯も取れるほど。そしてこれは、以前に処置を受けた多くの方々からの情報とも一致している。だからと言って安易に考えて軽はずみな対応は許されるべきではなかろう。だからこそ主治医のN医師は、診察を終え処置室をでる私に
「具合が少しでもおかしいと感じたら、必ずシンガポールの医院を訪ねてくださいよ!」
と。えらく真顔でおっしゃられたのである。
論点が矛盾するようながら、今回の白内障手術、私自身は決して深刻に考えているわけではない。何十年か昔ならいざ知らず、今日では余程のことがない限り、大過なく治療可能な疾病の一つとなっている。話が左右するようながら、主治医を信じ粛々と通常の日常生活を営みながら、日にち薬で全快を待つというのが私の出した答えなのである。
今少し詳しく経過を述べるなら、最初に手術を受けた右眼、翌日眼帯をはずした時には焦点が定まらず、
「老眼が無くなりますよ!」
と言われていた状態には、程遠かった。一方その二日後に手術を受けた左眼は、翌日眼帯をはずした時から、小さな文字もはっきりと見え、スマホでのメール交信も可能であった程。その状態の良さは今も続いており、
「手術を受けた甲斐があった!」
と、間違いなく実感している。そしてここにきて、右眼も小さな文字が見えるようになってきているのである。
さらには昨日診察前に測ってもらった近視の矯正視力も、0.6程度は見えるようで、眼鏡の作成までには視力の安定するもう一二か月という事になろうが、現時点では術後の経過は問題なしという状態なのである。
順風満帆、だから今日午後日本を離れる。

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2022年10月03日

東南アジアに雷観測装置を 6

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Wさんが帰国されて、一週間ほどたった頃、アンドリューさんから呼び出され、
「投資の話は、だめとの事。来月Wさんがシンガポールに来て詳しく説明するらしい。」
と伝えられた。私にしてみれば、それこそ青天の霹靂で、
「もう一度交渉してみますよ。アンドリューさんも、応援してください。装置を販売するという目論見が、根底から崩れますし・・・。」
と、懇願する以外に策は思いつかなかった。ただその月10月の下旬に、退官祝賀のパーティーが予定されており、再度一時帰国することになっていた。だからその際本社に行って交渉でもするかなんぞと、まだ気楽に考えている私自身もいた。ところが一時帰国の直前になって、Wさんから電話があり、
「来月工場長と二人でシンガポールに伺います。それから先生の退官記念祝賀会には、UとTの二名を出席させていただきます。」
と、告げられた。実際大阪のロイヤルホテルで開催した祝賀会には、UさんTさんの二人が参加して下さり
「私達二人は職場が移動し、雷関係から離れます。これは極秘情報ですが、事業部長も移動するらしいです。」
と、大いに驚かされる内容を告げられた。
事業部長は一年前に、私をリクルートした張本人だから、この人がどこかに移るようだと、話は根底から崩れるのではないかと、不安が募るばかりであった。
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2022年10月01日

東南アジアに雷観測装置を 4

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神無月朔日
2013年9月3日、4日と極端気象のシンポジュームが、阪大中之島センターで開催され、そこでも私はUltimate Lightning Monitoringの講演をした。ただどのように配慮して発表内容を準備しても、多くの参加者には古典的な「雷放電位置標定装置」との差別化はできないようで、歯痒い思いをしながらの講演であった。
そして翌日夕方、私はシンガポールに向けて、関西空港を出発した。
9月6日、私は社長のアンドリューさんに連れられて、会社に出向いた。アンドリューさんは、私達の研究室で開発した、VHF干渉計とLF放電路可視化装置を独占的に販売したいとおっしゃった。私は
「両方とも、研究用のシステムですから、販売するにはもっとロバストにしなくてはいけません。そのためには親会社の投資がなくてはかないません。実務担当者のUさんのおっしゃる数億円は必要ないですが、少なくとも数千万円必要です。研究科長も聞いていらっしゃって、マッチングファンド形式もありということです。」
と、正直に申し上げた。アンドリューさんからは
「投資の件は、親会社に伝えます。」
との回答で、私はカプリというホテルに泊まりながら、当面住む住宅を探すことにした。
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2022年09月30日

東南アジアに雷観測装置を 3

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「こんなに簡単に、将来を決めてええんやろか?」
と、自分自身で訝しく思えたほどであったが、ともかく走り出した。そしてその晩は久しぶりに友人のY君とも会い、ご無沙汰を詫び旧交を温め、翌朝大阪に戻った。それから三月の末日の定年退職までは、あわただしく過ぎたのであった。余談ながら、親友のY君とはこの日以降10年以上も会う機会がなく、今日に至っている。
再就職の先が決まっているとはいえ、退職の日の空虚感は、どう表現してよいかわからなかったというのが、正直なところであった。属していた研究室には、准教授のU君が在職していたとはいえ、意図的に顔を出さないよう、訪ねていかないよう心掛けた。とはいえ大会社の事業部長の命を受けた実務担当者が、月に一二度打ち合わせに来阪されるので、その際は工学研究科長室を利用させてもらった。
「いつから赴任?」
という、一番肝心な議論は
「今しばらく待ってほしい!」
と、二,三か月先延ばしとなり、それでも六月の声を聴くころには、
「九月から赴任してください。」
と指示が出た。さらに実務担当の部長さんから
「雷観測装置を販売する会社を立ち上げましょう。本社も億単位の出資ができますので。」
と夢のような話まで出てきて、シンガポール行きの夢が膨らむばかりであった。私がシンガポール行きを決意したのは、研究室で若者達と作り上げたVHF干渉計と、若者達だけで作り上げたLF帯の観測装置を、東南アジア一帯に敷設、稼働したいというところにあったからである。
私はこれらを
「Ultimate Lightning channel imager!」
と呼んだのだが、仲のいい筈のHughさんはこの命名にえらく不機嫌で退官記念祝賀会に参加してくれた折
「Sophisticated かもしれないがUltimateではない!」
と、コメントを忘れなかった。
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2022年09月27日

クアラルンプール 2

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9月18日からのあしかけ十日間にわたるマレーシア出張も、いよいよ今日で終わる。日本からやって来て同行のM 君、Kさん他4名は深夜便で成田に向かい、天邪鬼爺の私は少し早い便でシンガポールに向かう。今回の調査、日本からの調査団は、押しなべて満足気な雰囲気で、このプロジェクトの現時点での先行きに肯定的なんだろう。
まぁ良かったと一安堵しておこう。
ちなみにこの更新は日が代わった直後故、ある意味安心のできない部分もあるが、土壇場になっての先方のちゃぶ台返しのない限り、午前中には調印の儀式も終わるのだろう。UNITENの代表のAzuanさんからは、
「明日の再開を楽しみにしている。」
とWhatsAppでメッセージが来ていた。
そして午後にはUNITENからクアラルンプールに戻り、JICA事務所への報告に加え、在マレーシアの日本大使館への表敬訪問の後空港に向かう予定と聞いている。クアラルンプールと空港は、大凡一時間程度のドライブだから、余裕で間に合うのだろうなぁ。

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2022年09月25日

マラッカ 5

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マラッカも、今回の出張では最終日を迎えている。
正午には滞在中のホテルShoreをチェックアウトして、クアラルンプールに移動する。
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滞在したほてるShore
それにしても、母国語ではない英語での会議、意思の疎通の難しさを感じる。マレーシアの参加者も英語は堪能だし、もちろん日本側の出席者もそれなりの会話力である。ただ悲しいかなお互いの語彙力、会話力の積集合は必ずしも豊かではない。言い換えれば、和集合としては十分広いのだが・・・。こういった会合では、和集合の広さは問題ではなく、積集合の豊かさが一番要求されていると、この爺は信じて疑わない。だから自戒も含めて、ある種の苛立ちを禁じ得ないというのが本音であろう。
さて昨日、忙中閑ありとマラッカの旧市街を散策。
散策は世界文化遺産に登録されている、旧市街である。ウイキペディアによれば、もともとマレー人の王国があったらしいのだが、1511年ポルトガルの植民地となったという。その際の古い教会の門が当時のものという。
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これが世界文化遺産に登録されている1511年当時の教会の門
その後オランダが統治し、さらには英国が統治し、第二次大戦を経てその後マレー連邦として独立、今日に至っている。
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とはいえ英国は、貿易港をシンガポールに移したとかで、その後は貿易拠点としては寂れてしまったらしい。そしてシンガポールはマレー連邦を離れ独立国となっているのである。

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2022年09月24日

マラッカ 4

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昨日の事。
あまり詳細なことは書けないけれど、朝一番の会議にマレーシアの二つの大学から弁護士か司法書士かが来て、合意文書の詳細を法律上の観点から議論。ただ最後の最後になってのちゃぶ台返しとまでは行かなかったけれど、知財権に関してかなり執拗に注文を付けてきた。大いに驚いたのは、ほぼ定型の文書を、自分達の提案の形で整えて欲しい旨の事を言い出した点で
「この方、このプロジェクトがODAの一環である事を理解されているのか?」
と、訝しく思った。まぁそれでも適当にガス抜きができたのか、最後は一応納得され、来週の調印式には、無事代表者が調印の運びとなりそうな具合である。とりあえずはめでたしといったところであろう。
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救命具をつけてボートで
そして午後、VHF波帯の広帯域干渉計の一機を設置する予定のPulau Besarを訪ねた。マラッカ海峡に浮かぶ島で、モーターボートで10分足らず。マラッカ州政府が、リゾート地にして観光客を呼び込もうとし始めた途端の、新型コロナ禍。島内にあるホテルも実質開店休業らしい。
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島内を歩く
さすがにマラッカ海峡は波もなく穏やかで、観測機を設置しる一つとしては、最適に近いというのが私の直観で、何やらハイになっている。
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この建屋の屋根に設置するらしい
そして今日土曜日は、休養日となっている。

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2022年09月23日

マラッカ 3

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マラッカ滞在も5日目を迎えている。
月並みな様ながら、「月日の経つのは早い。」
さて昨日、終日UTeMで会議。
SATREPSプロジェクトの実施手順に始まり、UTeM、UNITEM及び近大との合意文書の文言修正に至るまで、長丁場であった。昼ご飯は地元のレストランからのケイタリングで、時間の節約まで図る始末。夕方ふと見たら、JICAのT女史や、コンサルタントのK氏の二人は、疲労かなりありの顔つきで、思わず気の毒にと考えてしまった。
とはいえこの爺も、手分けの一環でDisaster Management (防災局とでもいうのかな)office との遠隔会議を任され、聞き取り調査をコンサルタントのS女史と担当した。即ち、プロジェクトの概要を説明し、プロジェクトの中頃から、観測データも出始めるので、是非ともユーザーになって頂きたいとお願い。防災局のお二人は、
「気象局からの情報では、洪水の発生情報を出しているが、避難する時間が無い。」
とこぼされ、この爺からは
「防災局のデーターに、このプロジェクトの成果である観測データを統合して、より精度の高い情報をより早く出せるようにすることが、このプロジェクトの目的の一つ。」
と答え、最後に
「可能なら11月に一度訪問し、対面で話したい。」
とお願いすれば、大いに歓迎との反応であった。
とまぁ、この爺も少しお役に立つことができた次第であった。
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