2022年05月24日

爺版・折々のことば 19

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失恋したからと言って、生きる望みを無くした、死にたい、という学生さんにはかけることばはありませんなぁ。ご自由におやりください。
昨日新入生に対する導入教育の講義の際のことばを上げさせて頂いた。今日のことばも、その折のやり取りである。講義のたびに電子メールでのレポート退出を課していたのだが、その中に
「ガールフレンドに振られ、生きる望みがなくなった。」
といった記述があり、その内容に対しての返事だから、口から出たことばではない。
ただし後日談がある。
研究室に配属されてきた学生の一人が、卒業も近づいてきた頃
「一年生の時失恋して、レポートに死にたいと書いたら、『勝手にしろ!』と書かれたのは、実は僕なんです。」
というではないか。私自身そんなやり取りのあったことを覚えていたので、
「そんな薄情なこと書かれても、私の研究室に配属されて来たんはなんでや?」
と返した筈である。
ちなみにこの学生、修士課程に進学し、修了後は世界最大規模の自動車メーカーで働いている。もう20年近くはあっていないけれど、インドやアメリカ合衆国に長期滞在していたと、風の便りに聞いている。

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2022年05月23日

爺版・折々のことば 18

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この列の中程に座っている、そうその女性。まず氏名と所属学科をおっしゃってください。
大阪大学工学部電気系四学科に対しての導入教育の講義で、学生への質問を出すために、偶然指名した女学生へのことばである。何せ電気系四学科まとめての講義だから、出席者数は160名という大教室での講義、学生諸君の集中力を切らさないための工夫が必要で、私なりに知恵を絞ったのが、聴講している学生諸君との問答である。さらに当時かなり一般的になっていた電子メールでの学生諸君とのやり取りも加えて、結構評判が良かったと自負している。
さて女子学生とのやり取りである。
私の問いかけに、ともかく立ち上がったけれど何やらもじもじして、答えに窮している風。一方その生徒の回りの学生達が笑いだし、その笑いが教室中に万延してしまった。
「なんや君他学科の学生さんなん。受けるのは自由やけど、単位は貰おもえへんと思うよ!」
と私。するとその女子学生
「他学科と違って、立命館大学、他大学なんです。友達が『面白い講義があるから、受けに行こう。』と誘うのでやってきました。」
と述懐。教室中が大爆笑となった。止むを得ず私は
「この講義は電気系の教官の持ち回りで、私の担当はあと一回。だからあなたはもう一回受講しに来るよう。学生諸君に課している電子メールでのレポートも提出するように。」
という具合に収めた。
ちなみにその女子生徒とのやり取りは、彼女の就職が決まるまでおおよそ三年間続いた。記憶に間違いが無ければ、大阪にある一流ホテルに就職が決まったと、報告を受けた筈である。
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2022年05月22日

爺版・折々のことば 17

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お金をもうけたくないとは言いませんが、私がシンガポールに来たのは、私達が大阪大学で研究用に開発してきた雷放電路の可視化装置を実用化し、東南アジアで稼働してこの地域の人達のお役に立ちたいからです。アジア人の作った装置で、アジア人の安心安全を担保する。いつまでも欧米の食い物にはされたくありませんから。
これは、2013年9月、大凡9年ほど前ここシンガポールにやって来た時、迎えてくれた現地の社長が
「河崎がシンガポールに来て何をしたいのだ?お金持ちになりたいのか?高い車を買いたいのか?」
と、私に質問したとき答えたことばである。
いささか気負っていたことは事実ながら、本音であったことは間違いない。
以来苦節9年、徒労、失敗を重ねほとんど諦めていたのだが、先日爺版・折々のことば 3にも書いたようにhttp://zenk.sblo.jp/article/189521277.html 愛弟子のおかげで実現に漕ぎ着いた。 、
https://www.jst.go.jp/pr/info/info1564/index_e.html
https://www.jica.go.jp/english/news/press/2022/20220519_41.html
とはいえ、プロジェクトはようやく形を表し始めただけで、これから6年老骨に鞭うって進んでいきたいと決意している。九年間を無駄に過ごしたなんぞと、決して考えないで。
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2022年05月21日

爺版・折々のことば 16

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厄年の三年間は、体に悪いと言われている煙草吸うことにするわ。僕もう20年近く禁煙してるけど、厄年ちゅうもんに負けとう無いんでな。せやから後厄の終わった日には、また禁煙開始やでぇ。
私はこう見えても意外と験担ぎで、精神的に脆い。
だからそんな自分を鼓舞したくて、考えたのは厄年の間の喫煙である。
それにもう一つ理由もある。
ひょんなことから出会うことになったかつて付き合っていた女性が、煙草を吸っているのを知った。それで彼女にも禁煙を進めたいと考えたが、いきなり進めても聞く筈もなく、このことばの後に、
「せやから三年後に煙草の箱捨てて、禁煙開始するからあんたもそうしたら・・・。」
と付け加えた。
そして私は後厄を終わった日にくだんの女性と出会い、公約通り持っていた煙草の箱を捨て、彼女も箱を捨てた。私は以来30年間煙草を吸ってはいないし、多分その彼女も以後禁煙を続けているものだろう。最近20年以上お互いにご無沙汰ながら・・・。

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2022年05月20日

爺版・折々のことば 15

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禁煙しよう何ぞと大層なことを考えるんじゃなくて、今持ってる煙草を、箱ごとそのごみ箱にポイと捨てて、どれくらい煙草を吸わんとおれるかなぁ。どれくらい我慢できるかなぁ、ちゅう風に気楽に考えるこっちゃで。

先日、高校生以来の友人のG君から
「善さんに禁煙の極意教えてもろうて、僕も煙草をやめたんやで。」
と、告げられた。大学院博士課程を終えた頃の話、私がG君に言ったのが、このことばである。私自身この考え方でタバコを止めるんだと、ラジオのトーク番組で聞いて実践し、禁煙に成功したと信じている。
かいつまんで言うなら、極意は、強い決心などではなく、どれくらい煙草を吸わずに続けれるか自分自身を試してみよう、といった軽い気持ちで取り組むことだったのである。
それにしても40年も経って、そのお礼を告げられ、
「G 君にも言う教えてたんや。」
と、しみじみした気分になっている、爺の今宵である。
今日喫煙の習慣のある人にも、贈りたいことばである。
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2022年05月19日

爺版・折々のことば 14

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そんなら、雷活動の高いシンガポールで働かせてくださいよ。

2012年10月末頃だっと思う、国に有数の電気機器メーカーの事業部長さんから
「河崎先生、来年3月に大阪大学を定年退職なさったら、その後どうされるのですか?どこかに再就職される予定でもおありですか?よろしければ、弊社に参加されてあれこれアドバイス頂けると、有り難いのですが。」
との誘いを頂き、ほとんど間をおかず応えたのが、このことばである。
とはいえまさかそれが実現するとは、考えもせず返したのっだった。
その後あれこれやり取りがあり、
「いくつか声をかけていただいている、大学や企業もありますので、本当に皆さんに断りを入れてよろしいですか?」
と念を押したら、二つ返事で
「大丈夫です。私が保証しますから。」
とのこと、そしてほぼ10年私は今シンガポールに滞在している。
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2022年05月18日

爺版・折々のことば 13

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「仰げば尊し」歌わせて下さい。

半世紀以上も昔のことである。
岸和田高校の卒業式、その予行演習の際、私が手を挙げていきなり主張したことばである。
岸和田高校は、その校風はある意味若干左翼かかっていたのかもしれない。伝統的に、卒業式では仰げば尊しを歌わないことになっていたようだ。ただ同級生、とりわけ女子生徒の多くは、卒業式では定番のこの歌を歌いたものだと話しているのを私は知っていた。ただだからと言って、生徒の誰もそのことを主張するわけではなく、予行演習は淡々と過ぎて行った。
若者の特権は、年長者の有り方に異を唱えるところにあるのかもしれない。私自身そこまで深く考えたわけではないが、不意にその主張をしてみたくなり、手を挙げて主張したのであった。そして私の発言に同級生達の多数は、拍手で応え、その年つまり私達の卒業式には、仰げば尊しを歌うことになったのである。今考えても、若気の至りだったなんぞと、月並みな自己批判なんぞしたくはない。私の若き日の武勇伝であることは、間違いのないところである。
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爺版・折々のことば 12

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卒業祝賀会を、我々卒業生主催で開催させて頂きます。そして通信工学科の先生全員を招待させて頂きます。

50年も前の、私達の卒業式の数日前だったろうか、主任教授から
「善やん、卒業生主催で謝恩会を計画してくれへんかな?」
との依頼を受けた。
さすがに私の一存というわけにもいかず、一応クラスに持ち帰ってとその日は辞去し、主だった同級生を集めて相談した。私達の学年は、最後の学園闘争世代で、過激派よりも過激派シンパとノンポリ学生が、ほぼ同数いたろうか。それでも謝恩会という文言には敏感に反応し
「善さん、謝恩会なんかしたないでぇ!」
という意見が多く、
「善さん、いつから教授の走り使いするようになったんや?」
と、厳しく追及する者もいた。
ただ卒業する四年生はそれぞれ研究室に配属されていたので、三年生の時までと違って、所属する研究室の教授との距離は、随分と縮まっていた。
「謝恩する違うて、卒業を祝賀するということにしたら。」
と、ある種の折衷案を出し、通信工学科の卒業生にともかく納得してもらった。そして主任教授を訪ね、答えたのがこのことばである。
結局この時は、修士、博士の修了生も参加し、学科をあげての卒業・修了祝賀会となったのである。
そして十数年、名古屋大学から大阪大学に転任してきて、この祝賀会が電気系全体の謝恩会として開催されるようになっていたことを知った次第である。
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2022年05月17日

爺版・折々のことば 11

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君、車の運転得意なんか。それやったらうちの研究室やでぇ。オーストラリアの観測に連れて行くし。結構走り回れるで。
今私立大学で教鞭をとっている愛弟子のM君が、四年生の時に私がこういって、彼の講座配属を勧誘したことばである。
M 君は何年か後に私に
「僕の人生が決まった日です!」
としみじみ、述懐している。結果的にはM君の人生を決めてしまった、私のことばなのである。
実際その後博士前期課程、博士後期課程と進学し、オーストラリア・ダーウィンの雷観測では最も貢献してくれた一人だと、私は認識している。ただ4年生当時の彼は、自動車狂に近く、車検後もあれこれ自分の車を改良したりして、俗にいう「しゃこたん」した車を駆っていた。だから席の数だけ人を乗せると、工学部の外周道路のハンプで底をガリっとやることになると、こぼしていたのが、懐かしい思い出になっている。
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2022年05月16日

爺版・折々のことば10

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4月から社会人やねぇ。ともかくおめでとうやけど、君は2年以内に博士課程に進学したいっちゅうて、阪大に帰ってくるでぇ。
現在、気象関係の研究所に職を得ている愛弟子のY君への、はなむけのことば。
博士前期課程を修了してM重工に就職の決まっている彼に、卒業記念祝賀会の席で言ったことばである。
私の言葉に対してY君は、
「絶対帰ってきませんよ。先生に会いに来ることがあったとしても・・・。」
と、結構強気で返したけれど、きっちり二年経った3月だったろうかふっと訪ねてきて、
「来年から博士課程に進学したいと思います。」
と、ある意味前言を翻したのだった。
そしてその八月の博士後期課程の入学試験を受験、2006年四月社会人から学生に逆もどりしたのである。
入学後は比較的順調で、三年次には学術振興会の奨学生にも採択され、フロリダ大学にも留学する機会を得たのだった。まぁ今日までのところ順調に研究者としての道を歩んでいる。
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