2023年01月13日

雷放電の観測 41

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雷放電に伴って放射される電磁波(電磁界)と一口には言えても、放電の諸過程に依存して違った現象となって現れてくる。つまり放電の開始に始まり、リーダーの進展中、帰還雷撃と呼ばれる大電流、帰還雷撃に続く雲内の放電進展(いろいろな名前で呼ばれているが)、後続雷撃を引き起こすリーダーの進展、引き続いて起こる後続雷撃等々、があり、それに付随する電磁界(電磁波)やその変化(記録できる波形)は、大きく異なる。いやもっと正直に言うなら、
「長年の研究で、異なるらしいことが分かってきた。」
という事になろうか。
現象そのものは多分太古の昔から変わってはいないだろうが、それに関する知見は、例えば50年前、30年前、10年前と文字通り長足の進歩、いやこの瞬間だって新しい知見が得られているかもしれない。例えば数年前に、対消滅が起こっているかも何ぞという、とんでもない発見があったほどである。(その後の追観測の結果は、知らんけど・・・。)
かつて師匠にあたる上司に
「河崎君達は、先達や私達が積み上げてきた研究を、また繰り返しやっているのだねぇ!」
なんぞと揶揄されたことも少なくない。
「雷放電とそれに伴う電磁界(電磁波)」
は、何を知りたいかによって測るべき装置が異なる。例えば一番気がかりな雷撃電流(落雷の電流)や落雷によって中和される電荷量を、隔測(リモート)で推定する場合、前者なら磁束密度を測るループアンテナやファーストアンテナと私達が呼んでいる電界センサーであり、後者ならスローアンテナと呼ばれる電界センサーが必要となる。一方リーダーのことを観測的に解き明かしたいなら、中波から短波あるいはVHFあたりのセンサーを用意し、時間同期を実現する必要がある。
一事が万事こんな調子なのである。
(この稿続く)
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2023年01月12日

雷放電の観測 40

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雷放電の観測の話に戻る。
雷放電は、大気の絶縁を破って大きな電流が正負両電荷群を流れる放電現象である。電流が流れるのだから、観測する一つの方法は、伴って放射される電磁界を捉えることである。一方大電流が一瞬のうちに「放電路」が過熱することで、電光を放射するので、光を観測することも、一つの手である。さらにもう一つ、大電流により加熱された放電路が作りだす雷鳴も、観測の対象である。つまり、電波、電光、そして雷鳴の三要素が「観測を通じての雷放電の研究」の対象という事になる。忘れてならないのは、放電は一秒にも満たない現象であるから、当然高速で稼働可能な観測器が必要となって来る。かかる意味で、電波の観測は近年の電子機器の長足の進歩により、いろいろなことが可能になってきている。一方電光の観測、電磁波同様瞬時の現象ながら、カメラという武器があり、比較的早いうちから、例えば機械的にフィルムを移動させる流しカメラが、興味ある結果を提供してくれている。さらに近年の電子工学の進歩による高速度カメラが、我々が気付いてなかった現象を写し出したりしている。さらに雷鳴、これは時間的には秒程度の時間分解で十分だったことから、1960年代にはアメリカで、1980年代になっては我が国内でも研究の対象となり、放電路の三次元画像化を提供している。
私、天邪鬼爺は最初光学観測に関わったけれど、すぐに王道(かな?)である電磁波観測に力を注ぎ、今日に至っているのである。
(この稿続く)
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2023年01月11日

雷放電の観測 39

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雷放電の観測の話は一日お休みを頂いて、今日はふとしたことが引き起こす記憶の連鎖を紹介したい。「記憶の連鎖」というと大仰、子供の頃のことを思い出させるきっかけのことを、私は勝手にこう呼んでいる・・・。
数日前から一時帰国していることは、すでに述べてある。
年中真夏のシンガポールからの一時帰国で、日本は厳寒期だけに寒い。いや寒いというより、痛いという方が的を得た言い方かもしれない。その寒い、いやその痛い冬に日本にいて、装束に困る。そもそもシンガポールの毎日、基本は薄手のシャツ。だから日本に戻ってきたら何枚かを重ね着する以外には策はない。そして「記憶の連鎖」は重ね着にあたって思い出した子供の頃のことである。
この天邪鬼爺の子供の頃と言えば、もはや60年以上も昔のこと。ようやく
「もはや戦後ではない。」
と、言われたはじめた時代である。衣食住もまだまだ十分ではなかった。
だから例えば衣、下着は長袖、その上にセーターを着て、さらに上着を着るといった具合。そして下着を身に着けたら、セータを切るにあたって、大人達からは
「袖を持つように。絶対離したらあかんで!」
と言い聞かされたものである。
でも私は必ず途中で離してしまい、叱られながら引っ張り出してもらったものである。そんな思い出が、蘇ってきたというたわいない話である。
(この稿続く)
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2023年01月10日

雷放電の観測 38

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フロリダの観測では、フランスのラロッシュさん、MITの博士課程学生デニスさん、ニューメキシコ大学の博士課程学生ショーさんと知り合うことになった。余談ながら、ショーさんは、中国の郭さんのお弟子さんで、阪大に留学してきているWDさん(現在岐阜大学教授)と同期と聞かされた。
この後、ラロッシュさんとは、長い付き合いとなっていく。実際国際大気電気学委員会(ICAE)では、ラロッシュさんが私の前の委員長で、それを私が引き継ぐことになった(2008年)のであった。そして2023年の今日でも、お互いに定年を迎えた身でありながら、それなりの関りがある。
またショーさんとは、数年後に広帯域干渉計でしのぎを削ることになるのだが、彼はアメリカ国籍を得てロスアラモス研究所に籍を移してしまったので、我田引水ながら、広帯域干渉計は結局阪大の独壇場となった。ただしこの時ショーさんは、狭帯域の干渉計を稼働させていた。あの時点では、阪大も狭帯域干渉計に関わっていたので、ニューメキシコのアンテナ配列やその他のノーハウには、学ぶべき点が多かった。だからその冬の観測や、三年後のダーウィンでの観測には。同じアンテナ配列を用いることになった。デニスさんとは、その後AGUなどでも頻繁に会ったし、TRMM/LISのアラバマでの集会では、すっかりお世話になった。あれから二十年、ショーさんは今なおICAEに関わってはいるけれど、デニスさんとは、すっかり無沙汰である。
(この稿続く)
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2023年01月09日

雷放電の観測 37

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次の年の観測に先だって、マズールさんから
「フロリダのオーランド空港でやろう。僕はハイスピードカメラ、ニューメキシコやフランスのグループは干渉計を稼働するから。河崎とブルックは、電界観測の担当だ!MIT のアールも参加するから・・。」
と、知らせが入った。この2年目の日本からの参加は、またまた岐阜大のTNさん、阪大技官のYKさんそして私の三名であったが、昨年とは違い、自動観測ながら誰か一人は必ず現地に滞在するよう、日程を調整した。そして私は後半のほぼ一か月をフロリダに滞在し、終了後は機器を撤去し日本に送り出してから、オクラホマ経由で帰国した。残念ながらこの年ブルック教授の参加はなかった。
「2500例も記録した、去年の結果を整理しないと!」
というのが、不参加の表向きの理由であった。
この観測期間中マズールさんの高速度カメラは、雲底を蜘蛛の子を散らしたように走る放電路を捉え、アールさんと二人して「スパイダーライトニング」と名付け興奮していた。それに時間対応が不完全ながら、ニューメキシコの干渉計が光学観測によるスパーダーライトリングと似たマッピングを示しており、
「雷活動末期のアンビルに存在する層状の正電荷を中和する現象なんだろう!」
と、予感できた。
ただこの想像を、干渉計の結果と合わせてマズールさんが論文にしてしまったので、共同観測したみんなからは顰蹙物であった。そしてブルック教授の不参加の理由も、似たようなところにあったのだろうと、私は考えた。
(この稿続く)
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2023年01月08日

雷放電の観測 36

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観測器がトリガされた時刻のデータを、ともかくも全部印刷したという、ブルック教授からの大作(労作)には、大いに驚いた。我々の電界アンテナは、ブルック教授の設計を、デッドコピーしたものだし、記録系は共に1MHz8ビットのAD変換器で、記録長は1Mbyteとまったく同機能となっていた。
だから私も記録された波形を全部出力をすればよいのだろうが、A4用紙2500枚というのは、無駄も多かろうと考えると、全部印刷するという勇気は、なかなか湧いてこなかった。それでブルック教授の出力を、先ず点検することにした。当初予想したように、まったく意味のない出力もあったけれど、7〜8割以上は、落雷に伴うものや雲放電に伴うもので、教科書でKチェンジ、Jチェンジとして読んだ覚えのある現象らしい波形も多かった。そして興味を持てそうな観測結果と同時刻の波形を出力してみたら、同じ場所に設置してある装置の観測結果の多くは、ほぼ同じであった。そんな100例ほどを印刷してともかくブルック教授に送った。一月ほどしてブルックさんからは
「お前のデータは多分大丈夫だ。装置に自信を持っていいが、電界アンテナは俺のものだから!」
と、冗談も付け加えられた返事が届いた。
一方離れた場所に置いた電界観測との比較は、時
刻の対応が容易ではなく、多地点での観測の難しさを知らされたというのが、現実であった。とはいえ電界観測の正しさには自信が持て、マズールさんも気に入ってくれ翌年のフロリダ観測となるのであった。
(この稿続く)
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2023年01月07日

雷放電の観測 35

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というわけで、雷放電の観測の話を続ける。
時間を30年近く戻して、アメリカ合衆国で実施した観測について披露する。
大阪大学に移った次の年(1990年)、科学研究費補助金(海外学術調査)をアメリカ合衆国での雷放電観測という内容で申請した。
申請にあたって、友人の研究者数人に共同研究者になって下さるようお願いしたら、口を揃えたように
「アメリカでの雷放電観測なんて採択される筈がないよ、河崎さん!」
と、にべもなかった。それでもともかく岐阜大のTNさんには因果を含め、共同研究者となるよう説得した。ところが、なんとこの申請がめでたく採択されてしまうのだから、人生何が起こるかわからない。
ともかく初年度はオクラホマ・ノーマンに出張した。
ノーマンには、NOAA傘下のNational Severe Storms Laboratory (NSSL)があって、その研究所のマズールさんとは親交があったし、あの辺りは竜巻の多発地帯として有名で、竜巻があれば雷活動を伴う事を知っていたから、あの地を観測地として決めたのである。
観測期間はオクラホマ界隈の雷活動機である5月6月、そして出張のメンバーは、この申請の代表者になって頂いたMK教授、技官のYKさん、そして私、YKさん滞在の一週間を引き継ぐ形で岐阜大学のTNさんであったと記憶している。MK教授はNSSLを表敬訪問を終えられて急ぎ帰国された。アメリカ側の参加者は、ニューメキシコ大学のブルック教授とNSSLのマズールさんの二名であった。ただマズールさんはオクラホマ大学のビーズリーさんと交渉して、オクラホマ大学の屋上に電界アンテナを設置できるようになった。大阪大学からは、デジタル化した電界センサーを二台搬出した。ブルックさんもほぼ同じ機能の電界センサーを、オクラホマ大学に一台設置された。ブルックさんは
「河崎の装置が、私のと同じ特性かチェックできるから・・・。」
とおっしゃり、わざと同じ場所での観測となった。そして阪大のもう一台は、NSSLの構内に設置した。とはいえ私も二か月間フルに滞在することは原理的には不可能で、装置が順調に稼働することを確認した後三週間程度で帰国した。このあたりがディジタル化なった観測機器の有難さであったろう。
そして数か月、ニューメキシコのブルック教授から、A4用紙に印刷された雷放電に伴う電界波形が、なんと2,500枚近くも送られてきた。そして
「私は二か月間オクラホマに滞在して、雷活動を何度も経験した。」
とあり、加えて
「まもなく河崎の装置も日本に戻るだろうから、急ぎ出力して私の出力波形と比べてくれ!」
と書き添えてあった。その手紙を見て、観測を放置して帰国したことを恥ずかしく思った。
(この稿続く)
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2023年01月06日

雷放電の観測 34

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日本にいる。
新年6日目の日本である。
実は昨日午後4時ころ、関西空港に到着した。
久しぶりの大気電気学会参加と、10月に受けた白内障手術の術後検査が、一時帰国の目的である。そして今日はその内の大気電気学会参加である。
学会とはいえ大気電気学会は、会員総数200名弱のミニ学会である。
そのミニ学会、年二回の研究発表会も100回を重ねており、天邪鬼爺に記念講演の一つを受け持つようにとのご指名。請われるうちが花と、参加を快諾しての今日である。
しかし寒い。
シンガポールに移り住んでほぼ10年、新型コロナの影響もあって、最近5年は真冬の寒さを経験していなかったからだろう、寒いというより痛い。
駅での階段の上り下り、手摺を握ってもあまりに痛く、老骨の身には文字通り骨が折れる。とはいえ手を離しては、階段を転げ落ちることにもなり、我慢して握り続ける。
だから階段の上り下りには、時間がかかる。朝の通勤時、後ろに付かれた方には大いに迷惑だったろうから、この場を使ってお詫び申し上げる。
それはさておき、学会の会場である電気通信大学に無事到着。
記念講演の爺の主題は、雷放電の観測の歴史。
というわけで明日もこの主題を続けたい。
しかし寒い。
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2023年01月05日

雷放電の観測 33

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雷放電は、月並みな修辞法ながら、自然の作り出す最も激しい現象の一つである。だから観測を通じて、その物理的メカニズムを明らかにしようと試みるとき、感度という観点からは比較的容易であるというのが本当のところかもしれない。つまり受信すべき信号の振幅は大きく、周囲の雑音との比較において信号の方がはるかに強大なのである。その一方、時間的な変化は驚くほど速く、そういった意味では観測したり、記録したりする難しさはある。実際我々が長く関わってきたVHF波帯干渉計、マイクロ秒の100分の1以下で移り変わる現象をどうやって画像化するかという点での苦労が、半端なかったし、今でもそれで工夫を重ねているのが正直なところである。くどいようながら、Passive(受動的と日本語表記は何となく白々しいので)なSensor(観測機器)は、感度より時間分解が勝負なのである。
ところで愛弟子の一人UT君は、近年レーダの開発、それもフェーズドアレイレーダの開発に関わっている。そしてフェーズドアレーと言えば、軍事的な意味もあって、メーカーにせよ研究者にせよすべてあからさまにできるわけではない。素人考えながら、こういったレーダーは高速で飛来する敵の航空機をもトラッキングできる筈。だから平和利用の一環として雷放電の観測ってのはどうなんだろう。昨日の続き、初夢の続きなのである。
(この稿続く)
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2023年01月04日

雷放電の観測 32

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日本でなら「三が日」が終わって、街がまたまたあわただしくなっているのだろう。
ここシンガポールでは、昨日が仕事はじめ。こう書くと、
「二日も休みなんだ!」
と、まぜっかえされそうながら、実は一月二日の休みは単にハッピーマンデーによる代休だっただけのこと。大晦日のカウントダウンや花火打ち上げはあるけれど、それはお正月行事の流れの中でのものではない。
実際大晦日の日に近所のスーパーマーケットで、カップ麺を買い込んでいる若者に出会い
「お正月の買い物ですか?」
と尋ねたら、
「お正月は、一月末だからこれは違います。」
とあっさり否定されてしまった。いやはや十年近くも住んでいるのに、まだまだ頓珍漢な私である。

さて雷放電の観測。
ロシア系アメリカ人の友人マズールさん、1980年ころアメリカに移り住んだと聞いている。そしてその頃、レーダーで雷放電を観測したというのである。
聞けば、一方向に向けて電波を出し続けていたら、幸運にも視野の範囲で落雷があったそうだ。となると放電路はプラズマ状だから、金属によるマイクロ波の散乱が起こるのと同様、見事に放電路が写ったというから、幸運の三乗以上の幸運。雷放電の観測の、ビギナーズラックその物だろう。その後はそんな機会がないらしく、もはやそんな観測はやっていない。とはいえマイクロ波によるプラズマ診断と原理的には同じだから、今はやりのフェーズドアレイレーダーなら、可能かもしれないなんぞと、初夢を見ている次第である。
(この稿続く)
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