2025年09月18日

なぜ広帯域干渉計? 3

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少し時間を巻き戻して、帰還雷撃の光学観測について触れておきたい。
ジョーダンの論文には、帰還雷撃の上昇に伴い、急峻だった電流波形の立ち上がりが徐々に緩やかになる傾向が示されていた。ただしその手法は、各高度で得られた波形をアナログ的に比較したもので、結論としては「定性的に見れば、進行とともに立ち上がりが緩やかになる」という程度にとどまっていた。
一方で私たちは、二本のフォトダイオードの出力をデジタル化し、フーリエ解析を用いて「電流のなまり方」を定量的に議論する試みを始めていた。その成果をパリの国際会議で発表したのだが、私の拙い英語のせいもあってか、フランスONERAの研究者以外にはあまり響かなかったようである。ところが発表後、ONERAから参加していた五、六名の研究者が演壇に駆け寄り、口々に「非常に良い内容だった!」と称賛してくれた。その瞬間の感激はいまも忘れられないし、この出会いがきっかけとなって、彼らとの交流はその後も長く続くことになった。
思えば当時、彼らは狭帯域干渉計を用いて放電進展の観測を行っており、「位相」という概念に精通していた。だからこそ、私のフーリエ解析の議論をすぐに理解してくれたのだろう。。ちなみに40年経った今日でも、あの内容には自信があり、自慢論文の一つにもなっている。
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2025年09月17日

なぜ広帯域干渉計? 2

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私が広帯域干渉計(ディジタル干渉計)の研究に至る経緯を、ここで改めて振り返ってみたい。すでに40年も遡る話である。
環境電磁工学の研究から大気電気学へと舵を切り、雷放電の研究を志し始めた頃、私を強く惹きつけたのは、フロリダ大学ジョーダンによる「帰還雷撃放電路の光学観測」の論文だった。1980年代初頭に発表されたその論文では、ストリークカメラの出力を10の異なる高度での時間関数として示し、雷雲から地面に向かって降りるステップトリーダが大地に接触した瞬間、大地から雲へと駆け上る大電流――すなわち帰還雷撃の光強度が高度によって変化する様子を描き出していた。
一方、私は博士課程時代に分散性媒質内での電波伝搬をかじったこともあった。そこで「放電路も分散性をもつプラズマ状であり、そこを駆け上がる電流も同じ考え方で理解できるのではないか?」と考えるに至った。これがきっかけとなり、昨日触れたノブユキ君との光学観測のディジタル処理へとつながり、さらには広帯域干渉計(ディジタル干渉計)を目指す方向へと進むことになる。
また雷放電の研究を進める中で、当時のリーダーであった助教授の進め方がアナログ偏重であることにも気付いた。そこで技官のナガタニさんやナカダさんらと議論を重ね、電界観測のデジタル化に取り組み始めた。まだデジタル処理の黎明期であったが、パーソナルコンピュータ制御の観測装置を自ら設計・製作し、その成果が学術誌に論文として掲載されたのだから、今振り返っても驚きと感慨を覚える。
なお、文頭で紹介したフロリダ大学のジョーダンさんとは、2010年フロリダ大学に滞在中のサトル君を訪ねた際出会い、大いに感激した。それとてもう15年も昔のことである。
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2025年09月16日

なぜ広帯域干渉計?

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丁度40年前の1985年、私はパリで開かれた国際会議に参加し、フランスのONERAグループによる「VHF波帯干渉計で放電路を再現する」研究発表を目にした。そのとき、私は強い衝撃を受け、自分でも設計してみたいと考えるようになった。干渉計そのものは、当時勤務していた空電研究所の「太陽電波写真儀」で既に知ってはいた。しかし、それを雷放電観測に応用できると知ったときの感激は格別だった。ただし、私自身が実際に干渉計研究に踏み出すまでには、さらに数年を要することになる。
これまでにこのブログで何度か触れたが、「放電の進展」と一口に言っても、正極性と負極性とでは様相がまったく異なる。これはロケット誘雷実験でストリークカメラ観測を担っていた中部大学の角さんの成果により、光学的に明らかにされていた。そしてそれに伴う電磁放射にも極性依存があることを、私は三方郡美浜町での観測を通じてうすうす気づき、その後、雷撃電流とVHF波を同時観測して強度に20 dBもの差があることを突き止めた。さらに、VHF干渉計といえども狭帯域では不十分であり、広帯域干渉計の必要性を結論するまでに実に10年近い年月を要したのである。
もう一点、触れておきたいのは光学観測である。先輩のミノルさんはフランスのイベール論文を参考に、光学カメラのフィルム位置にフォトダイオードを2本設置し、その出力を2チャンネルのデータレコーダに記録するところから研究を始めた。そのデータをAD変換し、数値処理によって解析可能にしたのが、博士課程のノブユキ君と私である。やがて「それなら最初から高速AD変換器を組み合わせてディジタル記録すればいい」となり、さらに8個のフォトダイオードを円筒形レンズと組み合わせて広視野化を図った装置をミノル先輩の設計のもと、技官のナガタニさんとナカダさんが製作した。私はこの装置を中国やカナダに持参し、観測に供することとなった。
こうして振り返ると、私の研究者としての初期の歩みが、さまざまな人との協働と試行錯誤の積み重ねであったことを改めて思い知らされる。
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2025年09月15日

秋は未だ未だ

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わいの記憶が間違うてへんのやったら、今日は泉州・岸和田のだんじり祭りや。
「岸和田祭りは下駄祭り」ちゅう呼び名があったんも懐かしい。
ちゅうのも、九月の半ばは秋雨前線が停滞して、雨降りがようあったからや。
ほんで「岸和田祭りが終わったら泉州に秋が来る」――昔はそない言われとったもんや。
世間では「暑さ寒さも彼岸まで」言うけど、わいの故郷・泉州では「岸和田祭りまで」やったんやな。
ところがどうや、今年はまだ真夏日が続いとるし、下手したら猛暑日になるかもしれん。
そんな中でだんじり引き回すんやから、まるで夏祭りや。
ネット新聞か何かで読んだけど、日本ももう「四季の国」やのうて、「二季の国」になるんちゃうか、ちゅう記事が出とったわ。
ついでに言うと、大相撲秋場所も始まった。
けど真夏日の「秋場所」ちゅうのは、洒落にもならへんなぁ。
インターネット新聞の川柳コーナーにも、そんな句が載っとったで。
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2025年09月14日

しつもん!ドラえもん

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久しぶりに、朝日新聞の「しつもん!ドラえもん」や。
ここ数日は国宝シリーズで、色々と教えられることが多いんや。
例えば「国宝の数が一番多い都道府県はどこ?」いう問いや。
京都か奈良やろと思たら、実は二位三位で、一番は東京。まぁ首都やさかい、よう考えたら当たり前やな。
昨日のんは「水墨画で一番多く国宝になってるのは?」っちゅう問題。
雪舟やろなぁと思たら、どんぴしゃ。子どもの頃、僧になるために寺に預けられた雪舟が、絵ばっかり描いとるさかい、罰として柱に縛られて、足の指でネズミ描いた、っちゅう逸話を童話で読んだ記憶がよみがえってきたわ。答えでは、彼の作品6点が国宝に指定されとるそうや。
ほかにも「国宝に初めて指定されたのは?」なんて問題もあって、爺のわしでも興味津々や。
このブログでも書いたことあるけど、答えは毎日ちゃう紙面に載っとる。新聞離れが心配される今の時代、子どもが答え探して新聞をめくるいうだけでも、なかなかええ取り組みやと思うわ。
頑張れドラえもん!
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2025年09月13日

広帯域干渉計 17

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VHF広帯域干渉計は、最低三器の無指向性広帯域アンテナで雷放電の進展に伴う放射波を受信し、デジタル干渉法によって放射源の方位と仰角を推定する装置である。現在の時間分解能は百万分の一秒に達し、雷放電の諸現象を詳細に議論・説明・解釈することが可能となっている。それゆえ開発に関わった責任者として、この成果を誇りに思っている。
さらに、かつての愛弟子であるインドネシアのレディーさんが東南アジア各国に利用を広めてくれたこともあって、76歳になったこの私が、いま再び「一箇所三次元観測法」という難題に挑む気持ちを奮い立たせるきっかけとなった。
そもそも「一箇所三次元」とは、我々の干渉計が雷放電研究には優れている一方で、専門外の方には解釈が難しく、一般の方にとっては意味がわかりにくく、実用性に欠けるという弱点を克服する試みであった。四半世紀前に一度取り組んだものの、当時は解決には至らなかったのが正直なところだ。
しかし、この四半世紀で関連技術は飛躍的に進歩し、観測結果をほぼ実時間で表示できるところまで来ている。だからこそ今こそ再挑戦し、一般の方にも理解できるかたちで準実時間の情報提供ができる装置へと仕上げたい。これが、76歳の老人のささやかな狙いである。早い話、一般の方々には「どこに雷が落ちた!」「これは雷鳴だけ」といった情報が必要なのだから・・・。
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2025年09月12日

広帯域干渉計 16

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VHF波帯の広帯域干渉計の話を、久しぶりに再開してみたい。
この装置は、もともと大阪大学の我々のグループが考案したもので、マナブ君やマイケル君らの努力のおかげで「研究用としては、類似のどの装置にも勝る」と自負している。
ただし一方で、実用性という観点から見れば、残念ながらLMAなどに劣る部分があり、忸怩たる思いを抱いてきた。実際、かつてシンガポールの入札に応札した際には、
「研究用の装置としての成果は認めるが、社会実装の実績が無い」
との理由で採用されなかった経緯もある。
それならばと、タケシ君がマレーシアで装置を稼働させ、社会実装を目指す研究資金をJICAやJSTから獲得し、懸命に取り組んでくれている。
私はといえば、もう76歳。プロジェクトが始まった頃には応援団として顔を出す程度だったが、最近になって年甲斐もなく「研究心」に再び火がついた。思い返せば20年近く前、一度挑戦した「VHF広帯域干渉計による一か所三次元観測」。その古い試みを再び掘り起こし、マナブ君やロトフィー君の論文を読み返し、さらにはPythonをいじれるようになって、この二か月余り。AIの助けも借りつつ、ようやく社会実装の真似事くらいはできそうな段階にまでこぎつけた。
肝となったのは、観測データに適応した数値処理である。ちなみに20年前の方法とは、すっかり異なっていて、我ながら「これはなかなかの出来ではないか」と自画自賛したくなる結果を得て、いまはひとり密かに悦に入っている。
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2025年09月11日

弟子との語らい

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昨夜な、昔の愛弟子のひとり、サトル君とズームでしゃべったんや。昔と言うたけど、今でも弟子やと思うとるけどな・・。わての年甲斐もない研究で、ちょっと相談したいことあったから。研究者は、話し相手が無かったら、猫とでも話せちゅう先輩の教えやないけど、相談したかったんは事実や。
ところでや、彼がうちの研究室に入ってきたんは、もう25年も前のことや。他大学からの受験生やったけど、よう頑張って合格してきた。修士を出て、わての「博士に進めや!」という勧めには逆らうて企業に就職したんやけど、わてが言うた通り二年で戻ってきよった。「あんさん、絶対戻って来るやろなぁ!」ちゅう予言通りやったわけや。
博士論文もきっちり書き上げて、ポスドクでフロリダ大学に長期出張。その間にな、阪大工学部でテニュアトラックの公募があって、応募したら運よく通ったんや。彼にとっては大ラッキーやけど、わてにとっては「青天の霹靂」やった。
「河崎さん、学科長の権限で弟子に椅子を回したやろ!」
ちゅうて同僚に恨まれてしもうたんや。応募を勧めたのは事実やけどな、当時わてはアレキサンドリアに長期赴任中。そもそも採用の権限なんかあるはずもない。せやけど、10年くらいたった頃やろか、
「勝手な人事をしたあんたを絶対許さん!」
ちゅうメールまで飛んできたんには、ほんま閉口したわ。わてが定年退職して7〜8年も経ってるちゅうのにな。執念深い元同僚やな。わてはこっそり爬虫類ちゅうあだ名付けとったお方や。大学いう世界も、人情と利害の入り混じる生臭いとこやいうことを、つくづく思い知らされた出来事やったな。
ほんでサトル君との相談事、それは内緒やで。なんちゅうても76歳になって思いついて始めた研究で、これが結構エキサイティングなんやけどな・・・。
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2025年09月10日

石破総理辞任

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とうとう総理大臣の石破さんが、辞職を宣言しはった。
これで自民党のごたごたも一段落するんやろうけど、わてとしては「ここは思い切って解散や!」と打って出た方がよかったんちゃうかと考えとる。
「三回の選挙に負けたんは総理の責任や」と足を引っ張る連中もおるけど、それは筋ちゃうやろ。
そもそも論で言うたらやな、史上最長といわれた元総理の金持ちよりの政策、不景気と格差の拡大、さらに「安定多数」を盾にした国会審議の形骸化――そういう積み重ねが、「裏金自民党」みたいな政権与党をつくってしもたんや。
原因はそこにあるのに、なんで現総理だけが責任を取らなあかんのや。
石破さん、もっとゴリゴリ言うて、正面から議論したらよかったんちゃうか。
そのへんが元総理・小泉さんとの違いかもしれんな。
小泉さんは「自民党をぶっ壊します!」と叫んで郵政選挙に打って出て、反対派の長老議員には「刺客」まで立てて権力構造を一気に崩しにかかったもんな。
まあ石破総理の取り巻きのセンセイ方も、
「自民党を割ったらあかんで!」
と必死に説得したに違いない。
けどな、わては確信しとる。
どんなことが起ころうとも、自民党は割れへんのや。小泉さんのときですら、結局は政権政党の自民党はびくともせえへんかったやろ。
最後にひとこと蛇足や。御常連さん方、自分が「良識」あると信じるんやったら、選挙の時は野党第一党に一票入れたらええ。
そうすることが、この国の政治をようしていくことにつながると、わては確信しとる。
それとマスコミさん、どんな時でも政権に対する批判を忘れんといてや。
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2025年09月09日

衛星放送の弱点

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重陽の節句
この時期、シンガポールでは「月餅」が、店先に並べられ結構な繁盛ぶりである。
ついでにもう一件。昨夜皆既月食。シンガポールでも皆既月食が見られたそうだ。

昨日、西東京市に住む友人のユウさんが、SNSでこんなふうに知らせてきた。
「台風が行ってしまって暑さが戻ってきた。ほんで今は雷雨や。BSもCSも映らへん!」
やはり衛星放送の弱点はここにあるのだろう。近年よく耳にする「経験したことのない大雨」や、線状降水帯の発生時にも、同じような通信障害が起こるに違いない。
私のシンガポールの自宅でも、日本のテレビ放送を(おそらく台湾経由で)楽しんでいるが、やはり時折、番組が途切れることがある。
思い返せば、名古屋大学に赴任した当時、「EMCを研究対象に」と言われ、EMP爆弾の研究にも少し関わったことがある。EMP爆弾は電離圏で核爆発を起こして、通信障害を意図的に起こそうとするとんでもない爆弾で、あの頃結構研究テーマとしてホットだった。しかし私は最終的には大気電気学にのめり込み、EMP爆弾とは四十年前に縁が切れてしまった。
もしそのままEMPを続けていたなら、昨日の西東京の通信障害対策も研究テーマのひとつとなり、今ごろ慌てていたかもしれない――そんなことを、特に脈絡もなく思い出している。
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